やみうちと、きんぞくのよろい。
「あんな鎧着てるやつがやられるって、どんなモンスターなんだよ!?
ザコしか出てこないって話で俺たちをだましてたのか?」
「モンスターじゃなくてほかのプレイヤーの誰かにやられたんじゃないのか?
倒れてたやつ、武器持ってなかったらしいじゃねえか。安全だって言って、武器を盗んだんだろ。」
「原因はどうでもいいだろう。
地下に潜ってるプレイヤーに地下は危ないから戻ってこいって伝えるのが先決だ。
掲示板なら地下でも通じるんだから、分担して書き込もうぜ。」
「おい、どうでもいいってのはなんだよ。
どいつが犯人かわからないと、街の中でもあぶないだろうが。」
「そういう意味じゃねえよ。
モンスターかプレイヤーかNPCかそれ以外か知らねえけど、あいつを倒せて、攻撃してくる奴がいることまでは間違いないわけだろ?
それなら、『なにかが襲ってくるかもしれないから気をつけろ』ってだけでも言うべきだって言ってんだよ。
今潜ってるやつらは、害虫退治くらいの感覚で行ってるかもしれないんだ。敵はザコばっかりだって言われてたんだから。
そんなやつらが襲われたらどうなるよ。あの鎧でも腕折られてるんだぞ。
犯人がなにかを考えるのもいいけど、先にできることがあるだろう、ってことだ。」
「そういうこと言って犯人を隠すつもりじゃないだろうな?」
「はいはいわかったよ、怪しい認定するんでもなんでもいいから、今は黙ってろ。
死人出てからじゃ遅いんだ。それに、犯人見つかるまで危ない、ってのは正しいけどな、犯人が一人だって決まってねえんだから犯人が見つかったら安心ってこともねえよ。」
・・・・・・
「み?
まじめなはなししてるみたいだね。あんまり見たことないひとたちだ。最近きたひとかな?」
「そうだねー。
図書館ではお静かにーとか言ってる場合じゃなさそう。
けっこう殺伐とした感じ?」
「襲われてけがをした人がいる、という話をしていたわね。
犯人がわからないから、仲間だったはずの人のことも信用しきれなくなっているようね。」
「むー。
この世界、あやしいひとばっかりになっちゃいそうだから、むずかしいだろうね。
武器を持ってるからあやしい、とかいうこともできなそう、みんなぶきもってるし。
ケガはどのくらいだったんだろうね?」
「普通の人だったら強い装備を付けた人を倒すには強い武器が必要になるけど、すごい強い人だったら武器とか関係なしに強いから、武器を持ってない人だから危なくない、ってことはないね。
たとえばこの図書館の中だって、第3書庫より上の職員相手ならあたしが白ちゃんの本気で作った装備で全身固めても勝てないと思うし。
ケガは腕が変な方向に曲がってるくらいで、ポーションを使って全治3日くらいの傷らしいよ。すごい痛そうだったって。」
「むー。めだつ装備でもいいならもうすこし性能上げられる。」
「うん、まあ戦わなくちゃいけないってわかったあとに着替える時間があれば強い装備である程度身が守れる、ってことかな。
それはそれとして、鎧を着た人を倒すようなモンスターって、今あの人たちが降りてた階層くらいのところにいるのかな?プレートアーマー着てたって話なんだけど。
プレートアーマーってめちゃくちゃ重そうだし、当然強いんだよね。戦ったことないし戦うつもりもないから知らないけど。」
「むー。鎧の種類にもよると思うけど、たぶん、今進んでる階層までのところにはいないと思う。
変な条件で強くなるモンスターとかもいるかもしれないし、鎧のひとがみためどおりの強さともかぎらないからまちがいないとはいえないけどね。
みためだけつよそうだけどものすごく弱い鎧、とか、呪われてる装備でへんな副作用がある、とかいうものもあるかもしれないし。」
「ふむふむ、つまり、やっぱり人間にやられたってのが一番可能性高い、でも絶対そうだとは言い切れない、って感じ?」
「らー。だいたいそんなかんじ、かな。
不意打ちにしか使えないスキルとかは、そのぶん覚えやすかったり強かったりするかも。
だから、ふつうのひとがすごい技をつかえてもおかしくない。だから、だれかはたぶんわからない?」
「鎧の上から攻撃、だけなら素手でもできるという話だったわね。
でも、鎧ごと倒す、だったら武器系のスキルになるのかしら。」
「むー。素手でも強い技ならたぶん鎧ごと曲げるくらいはできるかも。
でも、簡単なのは、たぶん大工さんの使う金鎚みたいな打撃系で小さい武器かな。鎧の上からでも叩かれれば痛いし、鎧も曲がると思うし、隠しやすそう。
プレート系は切断と刺突みたいなのにはすごく強いけど、打撃とかガスとかブレスとかみたいな技にはちょっと強いくらいになっちゃうかも。
そーいうのを防ぐために盾とか盾剣みたいなのがあるんだけど、ふいうちならふせげないと思う。」
「使ってる人が闇討ちするためにうろうろしてるとしたら、地下の探索ってどうなると思う?
地下潜るのが目的らしいけど、たぶん、進まなくなるよね。」
「むー。うしろとか横とか気にしながら動くっていうのは、けっこう時間かかると思うし、たぶん体力も使う。
だから、たぶんほとんど進まないだろうね。いちかばちかで急いで進むとかなら早そうだけど。」
「相手がいつ襲ってくるかわからない、なら仮眠をとるのも難しいでしょうしね…。」
「らー。そうだね。
誰が怪しいかわからないなら、情報交換もしにくい。手助けとかもしにくくなるね。
だから、足止め目的ならすごい効果的、って言えると思う。」
「ああ、そっか、人だとしたら、たぶん目的があるんだろうしね。
うーん、あたしはテキトーに生きてるから、わざわざ闇討ちなんかする目的なんか思いつかないな。
一番下に行くと故郷への道が見つかる、だっけ?ってことは、帰りたくない、っていう目的?」
「むー。どうなんだろうね。わからない。」