魔法学校6
「えっ!?
卒業も無理、というのは、わたくしには召喚魔法の才能が皆無、ということですの??」
「み?それは知らない。
召喚魔法の成功率は、召喚相手の趣味とかにもよるし。
どんなに変な召喚術式でも、その方法が大好きな強大な存在とか、いるかもしれないし。
だから、才能、とかはわからないかな。
今日使っていたみたいな複製魔法陣でも召喚できるから、陣を書くのがうまいとかいうのも必ずしも長所にならない場合もあるし」
「えっと、少し考えさせていただきますわ。
まず、銀腕の名を継げるくらい、というのは、本当に継ぐのは不可能というのは理解しています。
強いから、ではなく、彼であることが銀腕であるための必須条件ということですわね」
「らー。たぶんそんな感じだね。正確に言うと必要条件であり十分条件でもある感じ。
銀腕の伝説を思い出すくらいすごい、とか言われる人は出るかもしれないけど、銀腕の名前は永久にヌアザだけのもの、と考えるべきだと思う」
「はい、それは先ほどの話で理解できました。
なので、問題は、卒業についてですね。
才能は関係ない、ということは、もし『わたくしに極端に才能が有って召喚術をなんでも成功させられる』、と仮定しても、それでも卒業は不可能ということになる。
つまり、召喚学科の『卒業』は、誰にも達成できない無理難題である。故に、卒業を目指すという目標設定は無理がある…?」
「らー。だいたいあってると思うよ。
すくなくとも、召喚術をがんばる、勉強する、それをやってる間は卒業できないと思う」
「がんばっている間は卒業できない…
そして卒業を目指すのが無理難題…。
つまり、『一定の成果をあげれば卒業というしくみ自体存在しない』ということになりますわね」
「らー。そういうことになるね。
お互い利用価値がある間は、学生の身分を失うことはないはずだよ。経費を払えなくなるとかの理由で卒業という名の退校、とか言うことはあるかもしれないけど。
普通の技術と違って、召喚の場合はなにができるから一人前、とか判断するのは難しいしあまり意味がない。
たとえば、『ものすごく強い存在を1回だけ呼べる魔法』、とかいう技を持ってる人がいたとしたら強いだろうけど、試しに使って見せろ、っていうわけにもいかないよね。
だから、どの程度の情報に接触できるか、どの程度の機材、触媒を使えるか、などを決めるための階級はあるかもしれないけど、卒業とか一人前を決める、とか、そーいう制度はたぶん、存在しないかも。
だから、必要な情報を拾える程度の階級まで上げておいてそこで止まってる人はたくさんいるはず。
必要な情報を集め終えた状態のことを卒業と言い換えることはできるかもしれないけど、そのラインは人によって状況によって違ってくるね。あきらめた時がある意味では卒業、と言い換えることもできる」
「……わたくしは、本当に全くの見当違いの目標に向かっていたんですのね…。」
「むー。
結局のところなにを目指しているのか、を考え直すことを必要とする状態、だね。
だれかを認めさせる、とか、驚かせる、とかいう目的があるのか。
それとも何か無理難題を超えるために強大な力を望むのか。
ほしいもの、目指すことをしんぷるにかんがえ、それに必要な行動をとるべき。
不可能な問題に挑む間に予想外の成果を見つけた、っていう人は歴史上にはたくさんいるけど、普通は目標がわかってて目標に向かって進んだほうが着くのは早いからね。
それと、最終目標もだいじだけど、まず一歩目をどこにむかって進むべきなのか、それを判断するための目先の目標もたいせつかも。」
「シンプルに……目先の目標…
一人前の、っていうのも変なんですわね。
とりあえず、『この学校で、今より一段上の情報閲覧許可を得る』、そのあと『帰宅許可、長期休学許可をもらって街に帰って報告』を目標にしますわ。
ヌアザについての情報は『調べればわかる』ことだったはずなのに知らなかったということは、街での勉強が必要だと考えます。」
「にゃー。それじゃ、行ってみようか?」
「えっ?どこへですの?」