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魔法学校5

「さ、最低限知ってるかもしれない、って言ってましたわよね…?」


「この程度なら、普通に本を調べればわかる範囲の知識。

 たまたま読んだことあったから、知ってた。それだけ。」


「偶然読んだことがあった…ですか・・。

 向こうにも、こちらに関する本が存在するんですね・・。」


「み?

 同じ街だから、街のことの情報書いた本もたくさんあったよ?」


「えっ?同じ街…なんですか?」


「らー。この建物の敷地が結界で区切ってあるから少しわかりにくかったけど、同じ街だね。

 結界を通した状態だと直接見てるわけじゃないから、魔力の波長が似てるだけっていう可能性もなくはないけど、偶然ここまで似るというのも不自然だし、わざわざ偽装する必要も感じない、だから確実と言ってもいいね。」


「えーっと。

 召喚術って、他の世界からなにかを呼ぶ方法なんですよね?」


「種類による、かな?

 今回の場合だと、喚起の術式になるから、偶然迷い込んだ存在とか、わたしみたいに面白がってくる存在とか。そーいうのをおびき寄せる感じの技になる、かな?だから、異世界に限った話じゃないね。

 転移をできるのが魔族とか魔人とかそーいうのが多いから異世界から呼ぶ感じに見える、っていうだけだと思うよ。」


「そういえば、『還る時を待つ』って言っていましたね・・。

 もともと召喚された状態で、さらに召喚に応えた、ということになるのでしょうか・・?」


「むー。それに近いけど厳密には違う、かな?だいたい同じと考えてもいいよ。」


「同じ世界からの召喚、この場合は喚起が成立した場合というのは、ふつうの移動方法で帰って終わり、という方法で良いのでしょうか・・?

 召喚に対する送還という行動をとらないことによる影響というのが存在するかどうか、その情報はわたしたちは持っていないと思います・・。同じ街なら普通に帰ってもよさそうですけど、しばらくたってから何か不都合な現象が起こっても困りますし・・。」


「むー。今回は魔法陣を目印に転移してきただけだから、送還の魔法は効き目がないんじゃないかな?残留魔力があまり残らないようにしてるし。逆に言えば送還という手法を取る必要はないともいえるよ。

 普通の移動でもそれ自体は問題はなさそうだけど、ふつうの方法だとたぶん途中で眠くなる、っていうくらいかな、問題は。」


 正確に言うと、普通の人間の歩行速度なら歩いて移動でも問題は全くない程度の距離なのだが、移動速度の遅さと眠気に襲われる速さが常人の数倍なため、間に合わないのである。


「眠くなるだけだったら特に問題はなさそうですわね。」


「変わったことではないけど、問題がないというわけではない、かな。

 ねむいのはつらいし、ねたままあるくのはあぶないからね。そういう魔法もあるからできないわけじゃないけど。」


「えっと、馬車などの『安全に移動できる乗り物』を手配する、という方法はいかがですか?」


「むー。それが安全な乗り物かどうかを知る方法を知らない、かな。乗り物乗ったことないはずだし。

 どの程度の状態を安全と定義しているのか、と言い換えてもいいかも。現状は移動中に眠るほど安全だと信じれているわけではないかな。

 それに、帰るだけだったら転移のまほーですぐ帰れるから、帰る方法は気にしなくても大丈夫。」


「あの、来訪者さまにとっては、転移の魔法というのは簡単なものだったりしますか?」


「むー。転移っていってもいろいろある。

 わたし一人を運ぶだけだったら簡単かな。行き先にもよるけど。

 馬車に乗るよりは安全だと思ってるよ。今の状態、わたしにはいろいろと問題があるしね。」


「そうなると、安全な帰り道を確保するという義務は果たせなそうですわね。

 普通の召喚とは状況が違うのですから、こうマニュアル通りに考えても仕方がないのはわかっているのですけど……

 とりあえずの目標がないと、迷ってしまいますわ。」


「ブラオローゼさんはあまり迷わない性格だと思っていましたが、迷わないようにしていたんですね・・。」


「はい。とりあえず目標に向かって進んでいる間は、不安になることもあまりありませんから。」


「み?

 少しだけ、考え方が似ているのかもしれないね。

 私の場合は、あらかじめ考えられるだけ考えておいて対応の仕方をパターン分類して決めておく感じだけど、結果的に少し似てるかも。」


「疲れた場合は休憩、眠くなった時は安全な寝場所を探す、というのもパターン化された行動の一つなわけですね・・。」

 

「らー。そうだね。

 わたしはちょっとした理由があって、行動に多少の制約をかけてる。

 その制約のせいで、できない行動がいくつかある。その制限の隙間を通す感じで、『事前予測と事前設定』という方法がある。

 制約自体自己満足のためにやってるだけだから、あんまり意味はないんだけどね。

 でも、危険な状態になるであろうことが予測されているときに、危険な状態になる前に、ある程度安全な方法を探すというのはわたしが自分にかけた制約に反しない。

 今回の場合、今日の季節の変わり目に、比較的安全に過ごせそうなところを探そうかな、って思って来てみた。夏は暑いだろうから。

 でも、よく考えてみたら、他の方法のほうが安全そうだし簡単そうだったから、今回の目的は食事を確保することになった感じ?

 ごはんもおやつももらって食べたから、食事と休憩をするという目的を達成して、今は比較的安全な場所と定義した巣に帰って寝るのが目的になるね。」


「召喚術に必要な行動としての食事なわけではなくて、単におなかがすいていただけ、なんですのね。」


「らー。おなかすいてただけ。食事は大切。

 ある程度立場が違っても、食事と休息が必要ってことはだいたいの動物に共通。

 人がその制約から抜け出そうとすると、ヒトではない何かに変わってしまう、って言ってもいいかも。

 召喚術も食事や安全な休息と引き換えに契約を結ぶものが多いよね。」


「そうですわね。そのほかに多いものだと生贄や部位欠損などの代償や、金銭などでしょうか。」


「そういうことになるね。

 お互いの価値観がある程度以上違っているときは、最低限でも共通していると考えられるところを足掛かりに交渉するのがいいかも。

 ヒトとヒトが交渉する時だったら選択肢はいろいろあるけど、特殊な例を除いては、食事は有力な選択肢の一つとして存在する、と思う。普通は金銭とかのほうが効果的らしいけどね。

 そろそろ眠くなりそうだから、なにか用事があるんだったら、はやめに言ってみてね。

 喚起に成功したんだから、眠くない時でひまなときだったら多少の手伝いはできるかも。代償としてそれなりの報酬は要求するけど、今回の場合はもらったおやつの分の仕事はしてないから簡単なことだったら今でもできる、かな。」


「えっと、今回の場合だと異世界から来た存在なわけではないのですから、あまり特殊なことをお願いするのは不可能ですわね。」


「むー。なにを普通、なにを特殊と定義してるのかわからない、かな。

 この町に来てから本で読んだことのある内容はだいたい覚えてる。だから、本で調べるようなことなら本を読まなくてもわかるものも多いかも。

 読んだことない本でも、本があるなら読むのはけっこう早い。読むかどうか決めてない本を事前に分類するとか、特定の内容が含まれる本をたくさんの本から選び出す、とかは得意かも。

 あと、魔法は純粋魔法なら少し難しいものもできる、そのほかの魔法はものによる、っていう感じかな。魔法の術式に関するアドバイスとかはある程度できると思うよ。

 とりあえずの目標とか、やりたいこと、ほしいもの?そーいうのを適当に言ってもらえれば、アドバイスとかできるかも。話題にもよるけど。」


「あ、はい。目標ですわね。

 わたくしの最終目標は、銀腕の名を継げるくらいの実力者になることです。

 とりあえずの目標は、一人前の召喚術師として認められるようになり、召喚学科を卒業することになりますわ。」


「むー。それは、たぶん無理だね。

 目標の設定に、無理がある。手伝うとかアドバイスとかそーいう以前の問題。不可能。

 銀腕を継ぐのも無理だし、卒業も不可能だと思うよ。」


「えっ!?

 卒業も無理、というのは、わたくしには召喚魔法の才能が皆無、ということですの??」

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