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魔法学校2

 人間に似た姿をした何かが召喚の魔法陣から出てきた少しあと。

 騒ぎに気付いた生徒たちが集まってくる。


 「ねぇねぇ、何か面白いことあったの?みんな集まってるけど。」


 「青薔薇さんが人間型のなにかを召喚したみたいだよ。

 人間型の召喚対象って、何があったっけ?

 精霊とかは見ればわかるんだよね、私は見たことないけど。」

 

 「なるほど、人間型召喚はわたしも見たことないし、集まるのもわかるなぁ。

 だいたい獣系とかエレメント系とかだもんね。

 あっ、あの子のことかな。召喚円の中にいるし。

 でも、種族はどんなのなんだろうね?

 小妖精とか鬼は大きさが違うはずだから関係なさそうだし、あとは魔族とか?

 魔族はそれぞれが全然見た目ちがうっていう話だから人間そっくりなのもいるかもしれないし。」


 「初級で魔族召喚とか、無理じゃないの?

 人間型でなんか弱いモンスターなんじゃないかな。」


 「吸血鬼とか人狼みたいな、人間に擬態するモンスターもいるらしいな。

 でもそういうのはだいたいは人間より強いはずだけど、召喚契約なんかできるのか?」


 「人間より強いものを呼び出せないんだったら召喚術なんか意味なくなっちゃうから、呼び出せるんじゃない?

 呼び出したあと従えることができるかどうかは知らないけど。」

 

 「今回の試験だと魔力結晶小さいのしか使ってないはずだから、強いのを呼び出すのには力が足りないんじゃないかな。

 普通は獣系とかゾンビ系とか植物系とかの弱めなのが出てくるはずだよね、あとハズレのゼライム。

 やっぱり人間型だけど弱いなにかってことなのかな?」


 「普通に人間の女の子呼び出しちゃったとか?

 迷子の子供みたいな雰囲気だよあれ。」


 「いいなぁ・・・。」


 「そうだな、ゼライム以外の召喚できたら第二試験は免除だからなぁ。」

 

 「いや、試験とか関係なくうらやましい。かわいい。」


 「ああ、まあたしかにかわいい、かな。

 でも俺だったら鎧トカゲみたいなのを召喚したい。強そうなやつ。

 ところで、なんか二人ともしゃべらないな。

 条件交渉とか始まるもんだと思ってたけど、人間型とかの話が通じそうな相手の場合。」


 「召喚された女の子のほうはまだ周りを眺めてるだけみたいだから、いきなり召喚されて戸惑ってる段階じゃない?

 ブラオローゼさんはたぶん話しかける内容を考えてるところ?」

 

 「お、青薔薇さんが話しかけるみたいだな。

 邪魔しないように離れてようぜ。教官はとっくに離れてるみたいだし。」


 「そうね。離れて見てましょうか。」


 ・・・


 「続いて、中位古代語、名約呪文詠唱開始します」

 ≪冬の風吹くこの時に 我一人居て彼を呼ぶ

  彼方の果てのその果ての 此方へ来たるその姿

  我、呼ぶ≫ 「ロッサ・ブラオローゼ!」

  

 「み?」


 「弱反応あり、詠唱繰り返します」

 ≪冬の風吹くこの時に 我一人居て彼を呼ぶ

  彼方の果てのその果ての 此方へ来たるその姿

  我、呼ぶ≫ 「ロッサ・ブラオローゼ!」


 「むー。」

 ≪旧き言の葉 受け取りて

  旧き事がら 幽かに想う

  然れど此岸 此身は不知

  然るに語る 彼は誰れそ≫


 「すごいな、古代語で文章も言えるのか。

 なんて言ってるのか全然わからん、俺には。」


 「すごいんだけど、たぶん失敗してるわよねあれ。

 あの女の子、なんのこと?って言いたそうな顔してるし。周りのこと気になってるほう優先してるようにも見えるけど。」


 「いや、ある程度でも会話になってるんだとしたら成功って言えるんじゃないか?

 古代語話す相手に、完全に話ができることはないだろうし。不完全でなんとなく程度で上等だと思うが。

 そういや、古代語話せるってことは、古代から生きてるような存在とか、あとは古代語を話すような存在の眷属ってことか?

 耳がとがってるのは長耳症の特徴だよな。昔の病気だと思ってたけど今もいるんだな。」

 

 「長耳症患者はわたしたちみたいな人間には迫害されていたっていう話だけど、獣人族などの種族からは認められてたはずよ。

 きっと獣人族の集落で保護されてたんじゃないかな。」


 「反応あり、詠唱を続けます」

 ≪我が呼びかけに応えたる

  貴様の仮名をこの手に持てば

  我が名とわが身 誇りにかけて

  この風雪より君を守ろう≫

  

 「むー。」

 ≪渡季の硲の ひとときに

  備うる策の ひとかけら

  聞きし詞の よすが追い

  門を創りて われ来たる≫

 ≪仮名用いて 吾身縛れど

  既に捧げた 主があらば

  細糸一つの 意味も無し

  真名一片に 千切れ飛ぶ≫

 ≪囁くものの たはむれに

  人は惑いて 多は群れに

  囁くものか まどい子か

  汝の素形は 如何なりや≫


 「どう考えても、これは交渉成功はしていませんわよね。

 召喚術の途中で魔法陣から離れるのは論外としても、相談はできるのかしら?」


 「らー。」

 ≪長き眠りの まどろみの

  覚めし一時 うたかたの

  峡の出会の 果敢なさを

  惜しむ心も 無くはなし≫

 ≪一つ其身が 完全なれば

  二つ重ねて 其を超えよ

  即ち魔技の 精神なれば

  止める詞の あるものか≫


 「止めるつもりはなさそうなので、相談することは問題ないようです・・。

  教官はどこかに行ってしまったようですし、相談して対策を考えてみましょう・・。

  心配することはありません・・。

  大失敗したところで、ゾンビになるかゴーストになるかが変わるくらいですから・・。」


 「それ心配するところですわよね?協力してくれるのはありがたいですけど。

  あなたがいつも通りで、すこし救われますわ。ありがとう。」


 「礼には及びません・・。

  同類を助けるのは、ネクロマンサーの務めですから・・。」


 「でも、ネクロマンサーになるつもりはない、ともう一度言わせていただきますわ。」

  

 「いつか心が折れた時、アンデッドの揺るがぬところが救いになることもあるかもしれません・・。」


 「揺るがない、と言っていいのかしら、あれは?」

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