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めがみのささやき。

 「み?

 ねこさん、おはよー。きょうはひとりなんだね。

 図書館に来てるっていうことは、本読みに来た?」


 「あら、スミシーさんおはよう。

 3人とも用事があるって言ってたから今日は一人で来てみたわ。

 スミシーさんは休憩中?本を持たずに椅子に座ってるってことは。」


 「らー。きゅーけい。

 ここの本はほとんど読んだけど、奥のほうはきゅーけいしにくいし、そとまで出るのは遠いから、休憩するときはここにすることもある。

 児童書こーなーはほとんど使われてないからめーわくにもならないし、ふまれるしんぱいもない。

 でも、きゅーけいするあいだ、ひま。」


 「この本を全部読んだの?相当な日数かかったでしょ。」


 「らー。そうだね。あのときはまいにちのように読んでたけど、それでもけっこうかかった。

 今日は一人で来たっていうことは、たんけんはきゅーけいかな?」


 「そうよ。迷宮部分に潜るのは4人そろってからにするって相談して決めたから、今日は図書館をのんびり見ていこうかなって。

 でも、なんだか職員さんたちに警戒されているというか、不審者あつかいされているような気がするのよね。さっきまで後ろに付かれてたし。

 4人で行った時も私だけ怪しまれていた感じだったし、なにか無意識のうちにしちゃったのかなって思ったんだけど心当たりないのよねぇ。」


 「むー。

 しゅぞくによって、ある程度の先入観をもたれるのはしかたがないことかも。」

 

 「種族が原因なの?

 でも今まであんな態度とられることはなかったんだけど、この町だけ考え方が違うとか?」

 

 「けものみみのひとは、ときどきあばれるくらいにおもわれてる場合もあるらしい。

 だから、壊されたりしたら大変なことになるようなものを扱う職業のひと、けものみみのひとにはきびしくなる場合がある。

 本は、修復するのに高いスキルが必要、だから、もし壊された時の被害が大きいとはんだんされる、かも。」

 

 「獣耳の人は危険人物だと思われてる、ということなのね。

 獣耳の人っていうのは獣人族のことでいいのよね?」


 「むー。

 けものの耳が見える人、のことだね。

 たとえばウサミミバンドをしたらどわーふのひととかでもけものみみになる。

 ぎゃくに、ねこみみがはえてるひととかだと、髪に隠れるばあいもある。かくしていればけものみみのひとじゃないあつかいになる。」


 「動物の耳が見えていれば獣耳の人、見えてなければ普通の人間ってこと?隠すだけでいいの?」


 「らー。

 隠すことを嫌う人もいるらしいし、隠してもにおいとかで気づいちゃう人とかもいるみたいだけどね。

 『女神のささやき』の話を聞いたことある人だったら、耳をかくしてれば危なくないって思う場合があるかも。

 『女神が耳元でささやくと、けものみみのひとはおかしくなる』っていう言い伝え。

 神格の存在に耳元まで近づかれたら、ふつうのにんげんのひともおかしくなると思うけど、言い伝えを信じてる人もいるらしい。」


 「まあ普通ではいられないでしょうね。神様が出てきたら。」


 「らー。たぶんそうだとおもうんだけど、なぜか信じてるひともいるらしい。

 そんなわけで、ねこさんのねこみみも、警戒される原因にはなるかも。」

 

 「うーん、警戒はされるかもしれないけど、この耳を隠すと感覚が鈍るから困るのよね。

 せっかくのアドバイスだけど、今回は耳を出したままにすることにするわ、ごめんね。」


 「み?

 そう判断したならそれもいいんじゃないかな。

 えるふ耳よりは警戒されないし、たぶんだいじょぶ、かも?」


 「あら、そうなの?

 でもスミシーさんは耳を隠してはいないわよね?」

 

 「むー。

 認識を阻害するまほー、使ってる。

 でも、たぶんねこさんには効いてないよね。」


 「うん、とがってるからエルフの耳だなー、ってわかるわね。」


 「やっぱりそうだね。

 このまほーは、けものみみのひとにはあんまり効果がない。

 あと、私のこと知ってる人にはほとんど効果がない。

 ねこさんは両方だから、たぶん全然きかない。

 まほーの効果対象から外れてるから、しかたない。」


 「獣の耳がついてなくてスミシーさんを知らない人にはエルフだと気づかれない魔法、っていうことなのね。」


 「エルフだと気づいてもそれが珍しいことであることに気づけなくなるまほー、だね。

 わざわざ言うことじゃない、っていうくらいになる。」


 「結果的にエルフだということを他言しなくなる、っていうわけね。」


 「らー。そんなかんじ。」


 「あ、そういえば、タヌキさんからスミシーさんに伝言あったわ。

 『ゼライムパウダー仕入れできたから、今度会えたら渡したい』だって。」


 「にゃー。

 ゼライムパウダーは料理に使うといろいろ使えて便利。うれしい。

 こんど、もらいに行くね。」


 「うん、伝えておくわね。

 待ち合わせとかしたほうがいいのかしら?」

 

 「み?

 まちあわせはたぶん必要ないかな?

 ゼライムパウダーは長持ちするはずだし、たぬきさんの気配は追いやすいし。」

 

 「そうなの、それならよかったわ。

 あ、ごめんなさいね休憩中に長々話しちゃって。」


 「だいじょぶー。

 歩きすぎで体が疲れてるだけだから、しゃべることはできる。

 でも、そろそろねむくなりそうだから、いったんかえっておひるねするね。」


 「おやすみなさい。

 私はもう少し見ていくことにするわね。」


 「にゃー。おやすみー。」

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