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しょーかんしてみる。

 帝国中央都市、地下10階、大食堂。

 様々な大きさのテーブルと椅子がある大部屋。

 一人のドワーフが見守る中、エルフが中央に開けた場所に魔法陣を描き、魔力を注ぐ。

 4つ描かれた魔法陣は、それぞれ一人の『召喚対象』を呼び出し、魔法陣は役目を果たし消えていった・・・。


 「突然呼び出して、来てくれるもんなんだな。

 できるか聞いたのは俺だが、正直言って驚いた。」


 「しょーかん成功~。やっぱり対象の選定を甘くすると、魔力負担が少し減るね。

 このくらいの魔力消費だったら、ふつーのにんげんのひとでも構成はできる、かな?

 二人は会ったことあるひとだね、ひとりは魔力の流れに覚えがあるからたぶん同じ町くらいには入ったことあるかな。もう一人は全然知らないかも。」


 「・・・予想通り、ってところやろか。

 やっぱり例の魔法陣は踏むのが正解だったわけやね?スミシーちゃんがいるところに出れたってことは。」


 「そうみたいね。

 うっかり踏んでしまったから、逆に踏んでたのが出口だったらぶつかって大変なことになってたかも。助かったわ。」


 「なんだかわからなかったけど面白そうだったから踏んでみたわ。

 あなたが噂のスミシーさんなのね。」

 

 「僕もなんだかわからなかったけど踏んでみた!」


 「ためしに召喚まほーじん使ってみた、よーこそ帝国中央都市ー。

 わたしはスミシー、またはふぉるす、ほかにもいろいろな名前で呼ばれてる。よろしくー。」


 「あ、失礼。初めまして。

 私は寝狐、見ての通り獣人族。よろしくね。」


 「僕はエックス、剣はないけど魔法剣士、はじめまして、よろしく!」


 「私はマリア、スキルは拳闘を少し取ってるわ。よろしくね。」


 「そこの強そうなおっちゃんと黒い革鎧のにーちゃんは初対面やな。黒鎧がエックス君でええんやね。

 どーもはじめまして、もしくはおひさしぶり、タヌキですー。例によって偽名やけどごめんしてねー。

 見ての通りドワーフ女で、一応商人やってます、小遣い稼ぎくらいやけどね。」


 「おう、はじめまして。急な召喚に答えてくれて感謝する。

 俺は『名前を持たない土地の赤き山、東の穴倉の3686番目のドワーフ』だ。面倒だから所長と呼ばれてる。

 ここの真上あたりにある帝国中央図書館の所長ってことになってる。

 フォルスちゃんの知り合いなんて言うからどんなのが出てくるかと思ったが、見た目は普通だな。」


 「そのりろんでいうと、しょちょーの見た目も変じゃないとおかしい、ってことになるよ?」


 「俺の見た目は変だろ。ドワーフなのに炎と土の神の加護がついてないんだから。」


 「たぶん、ふつーのにんげんのひとには加護の違いはわかりにくいと思うよ?」


 「そうなのか、不便だな。」


 「あの、3686番目のドワーフ、って、それが名前なの?

 もし名前で呼ぶとしたら、全文読まなくちゃいけないとかはある?」


 「ああ。俺が住んでいたところのドワーフはいちいち名前を考える習慣がなかったというだけのことだ。

 名前がほしいやつは自分でつけることもあるらしいが、面倒な時は番号つけていけば他のやつと同じ名前になることはない、合理的だ。

 呼び方は気にしないから適当でいい。だいたいのやつは『所長』か『おっさん』と呼ぶな。」


 「合理的と言われれば、合理的・・・かしら?」


 「あっちの昔の人間だって次郎三郎とか三郎次郎とかいう名前のがいたんやし、ドワーフの『一族みな兄弟!』っていう考え方から考えればそうなってもおかしくはないやろ?

 うちだって本当は『なんとかの場所に生まれたなんとかの娘のなんとか』みたいな形の名前になっとるし。覚えとらんからそっちは名乗らんけど。」

 

 「集落で生まれたドワーフだと、いちいち誰の息子かとか気にすることも少ないしな。自分の息子の顔はかろうじて覚えていることもある程度だ。」


 「自分の息子をかろうじて・・・?」


 「ああ。名前を呼ぶこともほとんどないし、みんなひとまとめで扱われるからな。

 だからドワーフは名前を気にするやつは少ない。どっちかというとどの山がなわばりなのかのほうが重要だな。」


 「えっと、それじゃ、『所長』と呼ばせてもらうわね。」


 「おう、それでいい。

 ところで話は変わるが、お前さんたちの目的はこの迷宮の最下層を目指すってことでよかったんだよな?聞いた通りなら。

 そのついでにモンスターの駆除もする予定だと聞いたが。」


 「横からすんません。基本的にそーいうことになっとりますね。

 モンスターを倒せば減るのかどうか、実験しときたいんですわ。毎回モンスターと戦いながら迷宮を攻めるってのも難しそうですし。

 ラクに進める方法がないのか、いろいろ実験しながらのんびり進めていくつもりです。っていってもうちが代表者ってわけやないから実際はバラバラに動くかもしれませんけどね。

 あとは、できれば図書館に入らしてもらったり町の中で買い物とかさせてもらえるんやったらもっと喜ぶ、ってくらいですわ。」

 

 「ああ、図書館や町への出入りについてはこっちのフォルスちゃんに聞いたほうが早いかもしれんな。」


 「み?

 第1書庫の許可書は人数分準備しておいたよ。

 買い物は普通にして大丈夫なんじゃないかな?」


 「そうか、それなら、俺からは周辺の建物から迷宮への出入りができるように紹介状を人数分、4枚書いておく。

 紹介状を見せれば、帝国中央都市の中のある程度大きな店や公共施設からなら迷宮に出入りできるようになるだろう。つながってない建物はさすがにどうにもならんがな。

 あとは、地下7階から9階あたりはこの指輪がないと迷うこともあるらしいから、念のため持っていくといい。

 指輪は5つしか余分がないから、足りないと思ったら自分たちでなんとかしてくれ。」


 「5つ、ですか。

 所長さんは指輪がなくても大丈夫ってことでいいんですか?

 私たちで5つ全部借りてもいいということ?」


 「ああ。5つ持って行っていい。

 もともとドワーフにはそういう迷わせる魔法はほとんどかからんし、ほかの職員も一人前になるためにはそういう魔法への対処も覚える必要があるしな。」


 「わたしとわたしの同居人もその程度のまほーはかからないから大丈夫ー。

 だから、4人が使うなら1個余るね。」

 

 「んじゃ、ありがたくお借りして、早速ちょっと行って来ますわ。いろいろありがとうございますー。

 地下17階からがモンスターが出るから、まずは地下17階を目指す。

 そんで、そこからはなるべくモンスターを倒しながら歩く、なんかやばそうなもんあったらさっさと逃げる、やね。

 そーいえば所長さん、ここって迷宮の中ってことでええんですか?だとしたら階層はどんなもんでしょ?地上まで遠いですか?」


 「ここは地下10階だ。

 地上までなら迷わなければ半刻もかからないくらいだ。」


 「それならいったん地上目指したほうがよさそうかもしれんね。

 下手に進んで帰れなくなるのも困るし。」


 「そうね。まず、地上からのここまでの道を覚えるのは無駄にはならないと思うわ。

 見たところ、ここは安全そうだし。」


 「せっかくだから、図書館も少し調べておきたいわね。」


 「僕は武器屋とか見に行ってみたい!魔法剣がほしいんだ!」


 「とりあえず地上目指すってところは4人で意見そろったみたいやね。

 あ、スミシーちゃん、ちょっと頼んでええかな?」


 「み?

 頼むのはいいけど引き受けるかは知らない。」


 「まあそりゃそうやな。何頼むかも言ってないわけやし。

 指輪5個貸してもらえて、4人で1個ずつ借りて行くとして、1個余るわけやん。指輪。

 それをスミシーちゃんに持っててもらって、この迷宮潜ろうとしてる人に会ってそいつに渡してもいいかなって思ったら、貸してやってほしいんや。

 又貸しして良ければやけど。」


 「むー。それはしょちょーに聞かないとわからない。」


 「かまわんよ。

 又貸ししても良いし、あとで返せとも言わんから使いつぶしても良い。

 最低限の数は残してあるしな。」


 「それなら、引き受ける。

 次に誰が来るのはわたしにもわからないけどね。」


 「ありがとなー。助かるわ。それじゃこれな。よろしく。

 まあ無事に帰るつもりやけど、万が一1個も無くなったら下手すりゃ詰みそうな道具やし、念には念を入れてってやつやな。

 そんなわけで、4人で地上目指して歩いてくことにするわ。

 お二人さんはどーしますのん?やっぱり地上戻るんですか?」


 「むー。とりあえず、きゅーけい?

 ふたりが訓練終わるのまだまだかかりそうだし、きゅーけいしてからのんびりかえるー。」


 「俺も休憩してから帰ることにする。気をつけてな。」


 「そんじゃお先します~。いろいろありがとうございましたホンマ。」


 「失礼します。スミシーちゃん、またね。

 所長さん、いろいろ手助けしていただいてありがとうございました。」


 「ありがとう、迷宮攻略がんばるよ!」


 「二人ともありがとうございました。

 それでは失礼しますね。」


 ・・・・・


 「みんな上に登って行ったね。

 だいたいあんな感じの人たち、らしい。

 しょちょーがどう思うかは知らないけど。」


 「理由はよくわからんが、迷宮を進みたいという言葉に嘘はなさそうだな。

 金銭目当てでもなさそうだし、おそらく思想には問題はなさそうだ。

 単純な武力で言ったらあの程度なら俺一人で無力化できそうだしな。

 まあ多少は協力してもいいかという程度だな。現時点では。」


 「わたしもそんな感じかな。ある程度なら手伝うかも、っていうくらい。」


 「フォルスちゃん、今回は無理言って悪かったな。

 特定の団体から人間を呼び出す魔法、っていうのがどの程度の魔法なのかはわからんが、簡単ではないだろう。

 それに、こういう形で手を出すのは好みではない、と二人から聞いてる。」


 「み?

 まほーは、かんたんではないけどむずかしくもない、くらい?

 厳密には『遠くへ行きたいって思ってる人を後押しする』っていう形式の術式だから、呼び出してるって言うのとは少し違うかな?

 移動したい人に、移動する力を一時的に与えるって感じ。だから、それを望まない人には全然効果ない。

 だから、私の考え方でも問題ない。だからだいじょーぶ。

 『けーじばんのひとたちが安全か調べたい』って言ったしょちょーと、『帝国中央都市に行ってみたい』って思った4人。

 みんな、困らない方法で、解決できたと思う。」

 

 「そうだな。全然知らん団体にうろつかれるよりは、代表者だけでもわかってたほうがこちらも対応しやすい。

 フォルスちゃんのおかげで助かったよ。」


 「にゃー。それならよかった。」

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