けっかいとあくまのすうじ。
「このサンドイッチおいしいねぇ。
パンと燻製肉の組み合わせでも充分おいしいと思ってたけど、チーズを入れると変わるもんだね。」
「本当においしいわね。
それだけじゃなくて、また力が湧いてきそうな感じがするんだけど、チーズを入れると品質が上がるのかしら?」
「むー。品質が上がるのとは少し違うかな。
米とかパンとかパスタとかは、ほかのものとの組み合わせで、性質が大きく変わる。
鳥肉とパンの組み合わせだと、敏捷とHPが強くなる感じ。
これが肉を獣肉に変えれば筋力とHP。
今回のだと鳥肉とパンとチーズだから、敏捷とHPと精神がすこしだけ上がる料理になる。
敏捷とHPはもう上がってるだろうから、今回は精神が少し増える?」
「それって、パンを最初に作ったときのみたいにずっと続く効果なんだよね?」
「らー。
おなじ能力にかかる効果は、一番強いのだけしか効果ないけどね。
いろんなの食べれば全部加算される、とかいうことはない。」
「いや、それでも、いろんな料理を作って食べれば、たとえば力が上がる料理と魔力が上がる料理を食べれば力と魔力が上がった状態にできるってことでしょ?
それってさ、やっぱり便利すぎない?
パンがものすごく品質良いからってこと?」
「らー。それもある。
パン、コメ、ぱすたなどは、ほかの素材と組み合わせることで真価を発揮。
メインの材料がたくさん手に入るんだったら、いろんな料理を作れば、いいとこどりでいろいろ強くできる。
次はミノバターをつけてトーストにすればHPをたくさん上げる料理になる、かな。
ゼライムパウダーを買ってからパンを作り直せばもっと上がるかも。」
「HPはなるべく上げておきたいね。
圧倒的に強い相手だとどーしようもないだろうけど、ふつうになにかと戦うときくらいなら、HPが高ければけが少なくなりそうだし。」
「らー。普通の戦いならそうかも。
でも、いまはHPだけじゃなくて即死無効とかクリティカル無効とか毒無効、連撃無効、一騎当千とかのスキルが必要になるかな。
ある程度はいまのスキルでも再現可能だけど、全部の能力を持たせるには最低でも『天衣』くらいは作れるようにならないとダメか。
裁縫なのに、縫ってはいけない。この矛盾をどうやって超えるか。
むー。難しい。」
「白ちゃんが難しそうなものを作るのは毎度のことだけど、今度はどんなことを想定してるのかしら?」
「みーたんとはーたんのそーび、つくる。
コカトリスくらいのモンスターなら群れになって襲ってきても蹴散らせるくらいのそーびがほしいかな。」
「コカトリスって、どんなモンスターだったっけ。石化の能力持ってるのはなんとなくわかるけど。」
「石化のクチバシ、石化の爪、石化の吐息、石化の眼光のどれかを使ってくるよ。上位種だと全部使えるかも。
普通に戦うなら石化耐性のそーびと石化解除のポーションで対応するのがいい。
攻撃と俊敏と敏捷高め、でも状態異常の耐性も高い。
弱めな個体でもモンスターレベル400程度はあるみたいだからほかの能力も全体的に強い。たぶん石化以外はワイバーンを弱くしたよーな感じ?
それを対策なしで蹴散らせるようにするところがとりあえずのもくひょーかな。」
「蹴散らす、って、あたしたちが、だよね。コカトリスを?」
「らー。そのくらいできるようにしたい。」
「一匹でも出てきたら騎士団が制圧に出るくらいのモンスターよね、それ。」
「うん、そうだよね。まあしょちょーとかなら鼻歌まじりに倒しそうな気しかしないけど。」
「そうね。所長なら『気合い入れればなんとかなる』の一言ですませそうね。」
「じっさいたたかうわけじゃなくて、そのくらいなら個別の対策なしで簡単に勝てるように、っていうくらいのそーびがもくひょー。
ぼーけんしゃ用の武器には、毒とか麻痺とかあるみたいだし、そーいうのが群れで襲ってきた場合を考えるとそのくらいは最低でもひつようとおもう。
けーじばんのひと、『帝国中央都市』が目的地かもしれないって言ってた。
たくさんいるらしいから、集団で襲われても簡単に勝てるくらいの能力が必要。
強さもわからないから、ある程度能力に余裕を持たせる必要がある。
みーたんとはーたんの専用装備にすることを前提とすると、かなりいい素材じゃないと作れない。
良い材料を買うか作るかしないと。」
「えっとね、白ちゃん。
たぶんだけど、そーいう基準で作ったらどんな強い装備作っても意味がないんじゃないかなぁ。」
「み?そうなの?」
「うん。
だって、冒険者みたいなのが群れになって襲ってくるっていうことになったら、勝ち目ないと思う。
まあある程度は、っていうかかなりのところまでは白ちゃんが作った装備があれば戦えるとは思うけど。
そーいう装備を持ってるっていうことがわかれば、装備狙いの人とかもっと強いのがどんどん出てくることになるでしょ。
『刑具』みたいに人間を攻撃する専用装備も世の中にはあるわけだし。
そーいうのがいつ襲ってくるかわからないって状態が続いたら、まず体力以前に精神がもたないでしょ。
そして疲れたところを隙をつかれておしまい、だと思うよ。
最初に戦うことを想定してる時点でどーかと思うけど、対策するとしても、『少数の変な人を無力化する』とか『不意打ちを1回防ぐ』くらいでいいんじゃないかな。」
「み?そうかな。すこしかんがえてみる。
専用装備にすれば強奪の危険性はなくなる、けど、逆に術者の価値は高まり、やっぱり狙われる。
パッシブスキル中心に組んだら寝てるときとかでも防御できるけど、攻撃側が対応もしやすくなる、か。
たしかに、集団に襲われるじょーきょーになった時点で、負けは決まってるかも。
ということは、あんまり防御にこだわりすぎても意味がないってことになる?
むー。
けーじばんの人たちに対する警戒レベル、質問の難易度をさげてみることにする。もともとあんまり高くはなかったけど。」
「あら、やっぱり相手を試してたのね。
七詩先輩の時みたいに、『試してる』んじゃないかっていう感じがしたのよね。掲示板での会話の時。
『聞き出してみなさい』じゃなくて普通に教えてもよさそうだったけど。
とりあえずのあの人たちの目的って、『帝国中央都市』に行ってみたいっていうだけの話なのよね?」
「むー。
ためしてるのはおなじ、むずかしさがちがうかんじ?
あと、行ってみたい、だけじゃなくて、そこが目的地だったら長期的に、たくさん、住みたい、だと思う。
いったん場所を知られたら、いざというとき排除するのもすこし難しいし、少し慎重になる。
だから、情報公開にはちょっとした条件をつけてある。」
「いや、いざというとき、って言ったって、もともと何千人か何万人か知らないけどすごい数いる街なんだし少しくらい増えたって誰もこまらないんじゃない?
呪われて暴走してるとかだったらさすがに困るだろうけどさ。
襲ってきそうな感じではなかったと思うし、変なことしたとしても騎士団とか自警団とかに囲まれて終わりな気がする。
白ちゃんみたいにとんでもないスキル持ってるんだったら話は別かもしれないけど。」
「スキルは、たぶんふつうのにんげんのひと、ぼーけんしゃよりはつよい。
人数は、全部だと両手で数えられないくらいの数いるみたいだね。帝国中央都市にすんでる数より多い。」
「両手で数えられない数、っていうと、5万人以上?ずいぶんいるね。
ひょっとして街の人数より多い?」
「両手で数えられない数だったら65536人以上ね。数えかたがおなじなら。
悪魔の数字、昔話にあったわね。」
「らー。街の住人の数より、かなり多い。
私のスキルでも感知しきれない人数だから、全部が同じ町に行くって言ったらたいへん。」
「うーん、でも、いくらなんでもみんなが行くってことはないんじゃない?」
「むー。
目的地っていうのが、どの程度の意味なのか、わからない。
だいひょーしゃが突破すればいいんだったら、強い人何人か送れば問題ない、って考えの場合もあるかもしれない。
でも、もし突破した人だけに報酬があって早い者勝ちとかなら、みんなが同じ場所を目指すかも。」
「本当にそんな人数が一度に来るんだったら大変そうだね。
今日は何人までって制限かけるとか?」
「み?
そのほうほうがあったね。
すこしじゅんびしてみる。」




