からいすーぷとれっしゃ。
「ただいまー。
スープ買ってきたよー。辛いのと普通のと。」
「にゃー。あいあとー。」
「おかえりなさい。
値段はどうだった?きのうまでより上がってたかしら。」
「えっとね。
あたしらが普段買ってるくらいの安物は今までと同じくらい。
でも、珍しいモンスターの肉とかアクセサリーの高品質なのみたいに、もともと高いものはもっと高くなってる感じだったかな。
だからこれはきのうまでと同じ値段で買えたよ。ひとつ15チップ。」
「み?
いがいに、あがらなかったんだね。」
「意外なの?
あ、そういえばあたしが買い物に出かける前に『少し多めにお金持って行ったほうがいい』って言ってたし、高くなってるのを予想してたのかな。」
「らー。
そろそろ、すきるあげのためには品質の良い素材が必要、っていう情報がかなり広まってそう。
じょうずな人が品質のいい材料ばっかり使うようになれば、安い材料で上手な料理を作ってくれる人が少なくなる。
だから、ふつうの料理の値段も上がるんじゃないかと思った。」
「その考え方で言えば、上手な人がいままでよりいい素材を使うんだから、わりと下手な人にもいつもよりいい素材が回ってくるってことにならない?」
「らー。たしかにそうなる、とおもう。
でも、じょうずな人が、良い素材で練習するため、良い素材を高く買うとする。
そーなると、それに連動して、ちょっといい素材も、高くなりそう、だと思った。」
「あら、そういう考え方もあるのね。
いろんなことが影響するのねぇ。」
「わりとおーざっぱなこともあるかも。
でも、ねだんがあがらなかったならよかった。」
「うん、そうだねー。
あたしらがそんな高いもの買うなんてことめったにないだろうし、いまのところあたしらには関係ない話って感じだね。
あ、白ちゃんが何か作る材料買うときなら高いものな可能性もあるか。」
「なぽたんがねだんかわらないなら、もんだいなし。
あがっててもかうけど。」
「白ちゃんは本当にナポリタン好きだねー。
今だったらどんな高い料理でも買えるくらいにお金は持ってそうだけど、やっぱり今でもナポリタンが一番なの?」
「むー。
すごくおなかがすいたときは、なにたべるかかんがえるのもつかれる。
そういうときは、なぽたんならだいたいどこでも買える、はず。おいしい。
ほかのたべものもおいしいし、いまは辛いものでも毒物でもだいたいのものは食べられるよーになったから、なぽたん以外の食べ物でもよくなったけどね。」
「うーん、なんか、白ちゃんってさ。
ひょっとして、食べ物にあんまり興味ないの?」
「み?」
「いや、なんか、どんな食べ物でも好き、っていうのは、逆にどの食べ物が特に好きとか特に美味しいってこともないのかなーって。
ナポリタンは好きなのかと今まで思ってたけど、それも考えるのが楽だからなんでしょ?
味が特に好き、っていうのはあんまりない感じなの?」
「むー。
いままで、ものすごいあじのものもいろいろとたべたことある。
だから、ふつーのにんげんのひとが変な味だなって思うものも、たぶんだいたい『おいしい』になる。
からいものにがてだったのは、こっちにきてから体力と耐性が足りなくなってただけ、味覚で嫌いなわけじゃない。」
「あれ?
こっちに来てから、っていうことは、もといた国では体力ないわけじゃなかったってこと?」
「らー。たぶん体力あるほうだったとおもう。
おなじくらいの年のなかまのなかでは、はしるのいちばんはやかったよ。」
「えっと。
ひょっとして、エルフって、場所によって強さ変わる種族なのかな?」
「み?
エルフ?
エルフは、大きな木の近く、深い森のなか、強くなるらしいよ。」
「そうだったんだ。
それなら、こういう普通の人間が住んでる町って、エルフにとってはかなりつらい環境なの?」
「むー。
ひかくたいしょー、ない。わからない。
でも、えるふことばでは、『木が細い』って表現が、人間言葉の『田舎』とか『辺境』っていう意味でも使われてるらしい。
だから、たぶんみーたんとはーたんが働いてたとしょかんがある町とかだと、エルフ基準だとものすごくいなかってことになる、とおもう。」
「ああ、そーいえば木は小さいのしかないみたいだね、あの街は。
土地は広いはずなんだけど、どうしてかな?」
「むー。
あの街は、結界、地中までつながってる。
ある程度以上木が大きくなるためには、大地の奥深くまで気脈とつながらないと難しい。
あの街は結界のせいで浅いところまでしかつながれないから、つたとか草とかが主になる。木が育っても少しだけ。
だから、食料生産という点ではかなりの問題があるはず。
肉類はある程度モンスター素材でなんとかなるかもしれないけど、野菜や果物は育ちにくい。
こどもぼーけんしゃ協会の裏の草生えてるところも、食料生産のためだったら草を全部取り除いて野菜とか育てたほうがいいんだろうけど、たぶんあれは訓練のためなのかな。
いや、むしろ野菜の生産は必要ない?
食料の生産量と輸入量、消費量から考えると、植物系の素材が不足するのが妥当。
それなのになぜ野菜の値段は上がらないし売り切れにもなりにくいのか。
がっこーエリアとおなじく、『でむ』のしわざで調整された結果ってことかな。
にゃー。かいけつ。」
「えっと、とりあえず結界のせいで大きな木は育たない、ってことまではわかった。」
「らー。そんなかんじ。
おなかすいた。すーぷたべよう。」
「あ、そうだね。冷める前に食べようか。
からいの大丈夫になった、って言ってたし、最初は辛いほうにする?」
「からいほうにするー。」
「それじゃまず試しに少しだけ分けるね。
具と汁は別に分けたほうがよかったんだよね、白ちゃんのぶんは。」
「らー。あいあとー。
さましてからたべるね。」
「そーいえば、明日は何しようか~。」
「むー。
私は、きょうみーたんとはーたんがねたあとに、真魔結晶をなんこつくったらつかれるかやってみようかな。
そのあと、れべるあげるために3刻くらいねむる。そのあとごはんたべる。
あしたのあさには、もうちょっとレベルが上がってHPがふえる、はず。」
「真魔結晶というのは、魔力結晶の強いの、っていうことでいいの?」
「魔導結晶より強いものが真魔結晶なのかしら。」
「らー。
10万点くらいが魔導結晶、100万点で業魔結晶、1000万点くらいが真魔結晶。
だから、強い強い強い魔力結晶だね。」
「1000万点、って、どんな魔法使うときに使うのかなぁ。そんな強さの。」
「むー。
少しむずかしいまほーつかうときにつかうくらい、かな?
魔力付与とかは、ある程度以上の種類重ねようとすると、ものすごーく多く魔力使う。
あと、ドラゴンブレスみたいに力をそのままぶつけるような感じの技は、魔力量が威力に直結するらしい。
幻術とか具現化とかも、魔力量が高いほどいいもの作れるし持続時間も増えるね。
それから、魔導列車の動力とかだと、業魔結晶では長くは持たないから真魔結晶くらいが必要かも?」
「魔導、レッシャ?
聞いたことないね。みやっちは知ってる?」
「私も聞いたことないわ。
どういったものなのかしら?」
「でんしゃーみたいなもの、っていってもわからないよね。
むー。
転移のまほーじんみたいに、遠くに行ける乗り物。
ものすごく魔力使う、移動はゆっくり。
でも、載せてもらう人に特別なスキルがなくても安全に運べる。
たくさんの人、たくさんのものを一度に運べる。べんり。
理由はわからないけど、いまはたぶんつかわれてない。」
「うん、まあ白ちゃんがものすごく魔力使う、って言うよーな乗り物なら、人間にはたぶん使えないよね。
業魔結晶っていうやつでも長くは持たない、っていうけど、業魔結晶なんてものがあること自体知らなかったし。
白ちゃんが言う『にんげんのひと』には作れないのは間違いないはず。」
「間違いなく、使えないでしょうね。」
「むー。やっぱりそうなのかな。」