てんせいのぎしき。
「はいえるふ、なってみるー。
あしたのあさくらいにはできるかんじでやってみるね。」
「あ、今晩やってみるんだ。
今のうちに、変わる前の姿を覚えておこうかな。」
「むー。
たぶん、おぼえなくてもいいんじゃないかなと、おもう。
覚えてもらうのはうれしいけど。」
「うん、それじゃじっくり見ておくね~。」
「にゃー。」
「白ちゃん、ハイエルフになるのに必要なものは準備できてるかしら?
途中で足りないものがあっても大変でしょうし、しっかり準備しておきましょうね。」
「らー。じゅんびはできてるー。
みーたんがきのう焼いてくれたパンと、はーたんが買ってくれたワインで道具はそろった。
ごはんもたくさんたべた。おなかいっぱい。
あとは、呼びかける相手を決めることくらいかな。」
「ごはんは大事だね。
肝心な時におなかすいて動けなくなる、とかでも困るし。」
「らー。そうだね。」
「呼びかける相手、というと、精霊とかかしら。
無宗教だと、そういうものに呼びかけるって聞いたことがあるけど。」
「むー。
そういうものでもいいんだけど、自分の考え方とかの方向性を決めて宣言することが必要なだけだから、ひとあいてでもだいじょーぶ。
みーたんとはーたん、よびかけあいてになってくれる?」
「あ、うん、そのくらいだったら全然だいじょーぶだけど。
精霊とかのほうが強くなりそーな気がするけど、あたしたちでいいの?」
「らー。だいじょーぶ。
わたしのばあい、精霊とかより身近に思ってるし。」
「たしかに、精霊を感じるというのも難しそうよね。」
「らー。むずかしい。
魔力の濃度を計算するのとかはある程度慣れたけど、魔力がどこから出てるのか発生源を探すのはけっこーむずかしい。
にんげんのひともすこしは魔力発してるし。ふつうに空間にもある程度魔力はあるから。」
「なるほど、白ちゃんの場合はいろいろ感知しすぎてしまうから逆にどれが精霊の力なのかとかって考えることもないのかもしれないわね。
あ、私も呼びかけ相手になるのは大丈夫よ。呼びかけ聞くときに何か気を付けたほうがいいことはある?」
「にゃー。むずかしいことはないからだいじょーぶ。
でも、たぶんはいえるふになったあと一日くらいは今よりものすごく弱くなると思うから、踏まないような場所に収納してもらうとうれしい。」
「まあ踏まないとは思うけど、それならベッド柵をつけて一人で寝てもらうと良いのかな。」
「らー。そんなかんじだとあんぜん、だとおもうー。
それじゃはじめるね。」
「うん、どうぞー。」
「はい。いつでもいいわよ。」
『あた、なー、ふぉるす。
新たな躰で生まれるために、すべてを捨てて旅立とう。
今こそ身を捨て、名を捨て、経験を捨て、ただ一粒の種になろう。
その魂を炎で鍛え
この体は大地に沈め
水のように再び還り
彼女を讃える唄を響かせ
彼女を崇める心を示す
在るものも無きものも彼女に捧げ
この幸運をただ喜ぼう
疑うなかれ 信ずるなかれ
彼女は確かに此処にいるのだから』
『九曜転生呪』