しちようとおとーさん。
「ルナリアちゃんの話、続けようか。
ほかにも気になることいろいろあるし。」
「み?
どんなことが、きになってるの?」
「まず、ルナリアちゃんの正体かな。
怪しすぎるよね、あの子。」
「たしかにすこし不自然な感じはしたわね。
私が気になったのは、白ちゃんの反応のほうだけど。」
「み?
わたしの反応?」
「ええ。最初はのんびりしてたのに、ルナリアちゃんの言葉『帰ってくるの待ってる』っていうのを聞いた後に『帰る準備をしよう』って言っていたわよね。
かなり急いで帰りたい様子だったし、何か理由でもあるのかな、と思ったんだけど、どうかしら?」
「むー。
ルナリアさんのおとーさん、たぶんかえってこない。
帰ってくるまで一緒にまとう、とかいわれたらたいへんだから、はやめにかえってきた。」
「『帰ってくるのがいつなのかわからない』、じゃなくて、『帰ってこない』、なのね?」
「らー。
祈りの対象が『シチヨウ』だし、歌の内容も、何度も繰り返すことを前提とした歌詞。
それに、帰ってくるの待ってる、の部分の発音が不自然だった。あれは自分の意志で話した言葉ではない。
ルナリアさんのおとーさんが実在したと仮定しても、すぐに帰ってくるつもりはないと考えられる。」
「実在したと仮定、っていうことは、いない可能性もあるってこと?」
「らー。
ルナリアさんが、ルナリアさんのおとーさんに関する情報を持ってない、というのが不自然だよね。
たぶん、『ルナリアさんのおとーさんは実在するけど、ルナリアさんの記憶を処理して情報を消してから旅立った』。
または、『ルナリアさんのおとーさんは実在しない。誰かが都合のいい情報を書き込んで放置してる』と考えられる。
帰ってくるのはずっと後、か、帰ってこない。と思う。」
「実在したとしても、娘の記憶から消してまで旅に出る、っていうのは、どんな危険な旅に出るんだって話になるよね。
無事に帰ってくることはあんまり考えてないような感じがするよ・・・。」
「本人にとっては危険というほどではないけど、娘のルナリアちゃんにとっては危険、という可能性もあるわね。
その場合だと、無事に帰ってくるつもりではあるけど、帰りは遅そう。
たしかに、『帰ってくるまで一緒に待ちましょう』とか言ってたら大変なことになってたかもしれないわね。」
「らー。たいへん。
そのばあいは、てきとーな人を連れてきてお父さんだってことにする暗示かけて脱出、とか考えないとダメだったかも。」
「ああ、そっか。
お父さんについての記憶がないなら、ルナリアちゃんにお父さんだっていわせれば成功っていうことになっちゃうのか。」
「らー。そうなるね。
それ以外に証明するものとか、なさそうだし。」
「・・・なんか、また面倒な話になっちゃった感じがするなぁ。」
「み?
なにか用事ができるまで、ルナリアさんのおとーさんの話題はルナリアさんの前で話さないっていうだけでいいと思う。
探せるような情報もないし、宗教施設としての機能を回復させるとかしたらいろいろまた何か問題が出てくるのは間違いないと思うし。
必要以上にかんしょーするのはあぶない、っていうだけ?」
「うん、まあ本人があの状態で落ち着いてるなら、『おとーさんを待っても無駄だー』とかわざわざ言うことではないよね。」
「らー。
もし実在してて、帰ってきたら、一度会ってみたいとは思う。
しゅーきょーとか、ひとの鍛え方とかについてかなりの知識がないと思いつかないはずの方法だから、いろいろ話聞いてみたい。」
「うん、それなら、ときどき帰ってきてないか見に行くのもいいかもね。
ルナリアちゃんだってずっと一人で待ってるんだったらひまだろーし。」
「にゃー。そうだね。」