おはなしとそうだん。
「おあよー。れんしゅー、おわったかな?」
「おはよう、シロちゃん。
ミヤさんとハヤテさんにいろんな技を教えてもらったよ。本当にありがとう。」
「あたしらでいまのところ教えられる技はあのくらいかな。
ほんとは、外で戦うのが目的なわけだから外で戦うのに便利な技をもう少し教えられればよかったんだけど、そーいうのは苦手なんだふたりとも。」
「私たちは仕事が室内での作業ばかりだったから、どうしても室内で戦うことを前提とした技ばかりになってしまうのよね・・・。
はやてちゃんが見せてくれた無音歩行は人間相手ならかなりの効果があると思うから、外に出てからも役に立つと思うけど。」
「いや、あれは相手が自分に気づいてないときにしか使えない技だから、あんまり役に立つ機会も少ないんじゃないかなぁ。
あたしらの職場では場所が場所だからそれなりに戦えたけど、外では微妙な効果だと思うよ。
まあ技っていうのは派手で強力な技だけじゃなくて、あえて地味な感じにしてる技もあるんだよー、っていう感じのことがわかるかなって思ったんだけど。」
「み?
無音歩行、しずかに歩く技だね。
それなら、次は震脚とか打撃技とかがおすすめ?
無音歩行を習得すると、震脚みたいな『足音を利用した技』の効果が上がる。ほかにもいろいろ相性の良い技がある。
震脚は威嚇のためにも使えるし、打撃系の技の威力を増やすための予備動作としても使える。」
「あ、そうなんだ、それは知らなかったなぁ。
自分で訓練してても、上達したらどうなるかなんて情報はあんまり手に入らないもんだね。」
「むー。それはしかたないかな。
無音歩行は、暗殺術とかでも必要とされるわざだから、そんなにかんたんに、どの技と組み合わせられるかとかの情報をおしえてくれるひとはあんまりいないとおもうよ。」
「ちょうど、みやさんが見せてくれた技が『踏鳴』と『破身掌』だったから、相性のいい組み合わせだったってことだよね。」
「らー。そうだねー。
『踏鳴』は震脚と似た技だけど、小さい音で最大の効果を出すための技、っていう感じかな。こういう住宅地でも練習できると思うよ。
『破身掌』はそれ自体あんまり威力はないけど、スキル進化させて『破鎧掌』までいけば、硬い敵にもあるてーどのだめーじをとおせるようになる。
どっちも、無音歩行との相性はいい。はず。」
「『破鎧掌』・・・そんな技もあるのね。
『破身掌』でも護身用には充分だと思っていたけど、私ももっと鍛えなおしたほうがいいのかしら。」
「むー。ある程度でじゅうぶんかな?
硬い敵にもダメージ通せるって言っても、しょせんは素手。
武器を装備しててスキルも高い人と戦ったら、普通は負ける。
だから、技を鍛えるよりも、強い人とは戦わないで済むように考える感じがいいかも?
いざというときの選択肢が増えると考えると、覚えておくのは損はないかもしれないけど、あんまりかしんするのもどうかとおもう?」
「あ、そういわれてみればそうよね。
素手でそんな強力な技が覚えられるなら、剣や槍ならもっと強い技があるんでしょうし。
もっと考えないとダメだったわね・・・。」
「こまったときに、てもちのわざでなんとかできるかかんがえるといいのかも。
こまるまえからしんぱいしてたら、この世界の全部の技を覚えても足りないことになってしまうし。
たとえば、ドラゴンを敵に回した時どうすればいいか、とか考えたら、どうぐの準備だけで国を傾けるくらいのお金がかかるだろうしね。」
「ドラゴン出たら逃げるか隠れるしかないんじゃないかなぁ。
ボクはあんまり詳しくないけど、ドラゴンに勝てる人間がいないってことくらいは知ってるよ。」
「むー。
にんげんのひとも、つよいのからよわいのまでいろいろいる。
どらごんも、ものすごーくよわいのもいるかも。
そういうのだったら、準備をしっかりしてれば勝てるかもしれない。
予算とか手間の大小を一切考えないとするならば、常に最大の準備、最大の戦力を準備して当たるのが最善。
その準備にかかる手間のわりにリスクの減少幅が少ないだろうからたぶん効率わるい、っていうだけだから、全力準備が絶対にだめってわけじゃないよ。」
「もしかしたら、全力で準備してなければ危なかった~、ってことになるかもしれない、ってこと、だね。」
「らー。そんなかんじ。」
「ところで、シロちゃんって、ひょっとしてものすごい物知りだったりする?
歌にも技にも詳しいみたいだし。」
「み?
本を読むのがすきなだけ、だよ。
偶然そーいう本を読んだことあったから、知ってただけ。」
「そうなんだね。
やっぱりいろいろ本を読んだりして勉強しておいたほうがいいのかなぁ。」
「むー。
わたしは本を読みたくて読んでるだけだから、べんきょーしようってがんばってるわけじゃない。
だから、そのしつもんはどうこたえていいかわからない、かな。
いつか使うかもしれない、って思うことに関しての本が手持ちにあるなら、ひまなとき読んでおいたほうがあとで困らないかなとは思う。」
「なるほどー。
それじゃ、おとーさんが帰ってきた時のために、宗教の本と戦い方の本を探してみるよ。」
「にゃー。それはいいこと、かも。」
「そーいえば、ルナリアちゃんのおとーさんって、いつごろ帰ってくるのかな?
まだ帰ってきてないってことは、あたしらみたいに夜になったら帰る感じ?」
「えっと・・・知らない。
帰ってくるの、待ってる。」
「宗教関係でいつ帰るかわからない、というと、聖騎士とかそういう職業なのかしら?」
「えっと・・・知らない。
帰ってくるの、待ってる。」
「むー。
そろそろ、よる、ちかい。
帰る準備、しよう。」
「あ、もうそんな時間だっけ?」
「白ちゃんの言うとおりね。
いつもよりは少し早いけど、慣れた場所じゃないことを考えると、そろそろ帰らないと危ないと思うわ。
それじゃ、ルナリアちゃん、また今度遊びに来てもいいかしら?」
「うん、ボクはいつでもここにいるから、いつでも来てね!」
「それじゃねー。」
「るなりあさん、さよならー。」
・・・
「それじゃ、宿まで戻りましょうか。」
「らー。
くらくなるまえにもどろー。」
「ところでさ。
歩きながらでいいから、ちょっと今日のことについての確認したいんだけど、いい?」
「らー。
もちろんいいよー。」
「まず、今回会ったルナリアちゃんのことだけどさ。
白ちゃんの言ってた『簡単な護身術なら』っていう言葉は、避ける防ぐ足止め、っていう感じの技まで教えて良いって感じだったの?
みやっちが見せた『破身掌』くらいまでだったら、もし予想外に近づかれちゃった場合の切り札としてならいいかなとかおもったんだけど、教えすぎだったかな?」
「み?
るなりあさんがもし敵に回っても負けはしないなーっていうていどまでならいいんじゃないかな?」
「やっぱり敵に回ることを想定はしてるのね・・・。」
「らー。
人が手助けしても問題ないのは、『裏切らない相手』じゃなくて『裏切られても問題ない相手』だけ。
裏切ったらどうしよう、とか考えなくちゃいけないくらいの相手なら、考える時間の無駄だから、手助けはするべきではないと思うよ。」
「なるほど、そう考えるとわかりやすいね。
裏切れるもんならいつでも来たらいいさー、っていうくらいじゃないと、誰かの手助けはするべきじゃないってことか。」
「らー。そうだとおもうよ。
でもわたしの場合だと、もともとだいたいの生き物には一方的に負けるっていう程度には弱いから、手助けした結果負けるようになる、っていう事態になる確率は低い。
だから、わりときがるにおしえてもだいじょーぶなかんじ。」
「ああ、まあ歩く速さがこれってことは、戦うときの速さだって速くはないだろうしねぇ。
たしかに、白ちゃんの場合は情報教えたせいで負ける、っていうことは考えなくていいかもね。
魔法ならだいたいの人には勝つだろうし、魔法が間に合わない速さで攻撃されちゃったりすれば勝ち目はなさそう。
歩くのが遅いっていうのも、見てれば当然わかるだろうし。」
「らー。隠したほうがいい情報はたくさんあるけど、実際隠せてるじょーほーはほとんどないとおもう。
だから、あんまりきにはしてない。
必要ないときにわざわざ教えてまわるとかするほどではないけどね。」
「ふむふむ、なるほどねー。
もうちょっと聞きたいことがあるんだけど、それは宿に戻ってからにしようか。
もうすぐ着くしね。」
「らー。そうしよー。
むずかしいはなしは、やっぱりあんしんできるところでするのがいいよね。」
「そうね。
ほかの人の情報を町中であんまり話すのも問題でしょうしね。」
「むー。そういわれてみればそうかも。」