べくさしおんふたたび。
「ただいま。予定通り、お芋をたくさん買ってきたわ。」
「みーたん、おかぁいー。」
「おかえりー。
ずいぶん大きな箱で買ってきたんだね。
それじゃ、白ちゃんのお料理教室、スタート、かな?」
「にゃー!
どうぐのじゅんびもできてるー。」
「あら、いろいろ準備してくれたのね。ありがとう。」
「らー。
初歩から訓練できる道具で、厳しい訓練でもだいじょーぶ、っていってたよね。
どーぐ、いろいろ作ってあるよ。
さっそく、くんれんひとつめはじめよー。
厳しい訓練でもだいじょーぶっていってたから、さいしょからきびしくいくよ?」
「うん、厳しくて大丈夫。無理だったら早めに無理っていうから。」
「ええ。もちろん大丈夫よ。。
目標が遠いのはある程度想像できているから、どんどん厳しい指示してね。」
「らー。
それじゃ、最初に使う道具、スライサーのつかいかたからせつめいするね。
こっちの部品の、ここに、洗ったあとのいもをくっつける。
あとは、本体にせっとして、こうやって動かすと、いもの薄切りができる。」
「ふむふむ、聞いた感じ簡単そうだね。
注意したほうがいいこととかある?」
「らー。しっぱいすると、品質が低くなる。
そのばあい、次のさぎょーで焦げる。
どーいう条件で失敗するかとかは、何度か自分でやってみれば自然にわかる、はず?
魔力認識とかつかって、感覚をとぎすますかんじにするとわかりやすくなりそうかも。
あと、ゆびをきるとたぶんいたい。」
「うん、まあ指を切れば痛いよねぇ。」
「刃の部分は見るからに切れ味良さそうだし、気を付けたほうがいいのは間違いなさそうね。
しくみを見る限りで言うと、どうやっても自分の手を切ることはなさそうだけど。」
「なさそーなことでもないとはいいきれないのが、この世界。
だから、ねんのため薬とかいろいろ準備してある。だからあんしん。」
「うん、ありがとー。
それじゃ、始めるね。
どのくらい切ればいいの?」
「み?
つかれるまで?
たくさんやったほーが訓練にはなるね。」
「それなら、数をかぞえながらやろうか。」
「そうね。
訓練の成果が出るまではかなりかかるんでしょうから、数で目標を作って作業したほうがやる気は出そうね。」
「にゃー。それじゃ、わたしはまほーでおいもあらっておくね。」
「それじゃ、1個目始めるね。
芋をくっつけて、こうやって切る、と。
お?なんか楽しい。これ。」
「きれいな薄切りになるものなのね。
これなら、慣れていない人でも料理に参加できるわね。」
・・・
「よし、これで26個!」
「23個。そろそろ残りも少なくなってきたわね。」
「そーいえばさ。
この薄切りって、やっぱりヴェクサシオンの材料なのかな?」
「むー。
そう、だけど、ちがう。」
「合ってるけど違う、ってこと?」
「らー。あってるけど違う。
ヴェクサシオンっていうことばは、いやがらせっていう意味。
いやがらせじゃないから、ちがう。」
「あら、そんな意味の言葉だったの?
どうしてそんな名前になってるのかしら?」
「むかし、新人に材料の薄切りをずっとやらせたりょうりにんがいた。
新人は、ずーっとおなじことやらされて、いやがらせかー、っておもった。
その新人よりちょっと上手な人も、薄切りにした材料ばっかり渡されて、いやがらせかー、っていってた。
料理人にきいてみたら、くんれんのためだったことがわかってなかなおり。
でも、仲直りする前に、料理の名前が広まっちゃってヴェクサシオンって名前になっちゃった。そんなかんじ。」
「あらら、そんな理由があったんだ。
それじゃ、なんて読んだらいいの?本当は。」
「むー。
ほんとうは、『ぱるてぽるて』っていう名前にする予定だったって言われてるらしい。
でも、その名前いってもわからないだろーから、昔の丁寧語だと、『ヴェクサシオン』をあえて少し発音間違うのが正しい、らしい。
でも今だとそれも笑われるだけだろうから、やっぱりふつうの人ならふつうに『ヴェクサシオン』って呼ぶしかないのかも。」
「うーん、けっこう昔の言葉とかまで考えちゃうと大変なんだねぇ。」
「らー。そうだね。」
「あ、そーいえば、薄切り全部終わったけど、次は何すればいいの?」
「み?
こんなにたくさんできるとはおもわなかったから、すこしだけ、油で揚げるね。残りは保存しておくー。
4個くらいで疲れるかなーと思ってた。」
「あら、厳しいって言ってたわりには少なかったんだねー。目標。」
「もくひょーおおめにしたはずなんだけど、予想以上にじょうたつがはやかったのかも?
とりあえず、このなべにいれて。ふたを固定するね。よいしょ、っと。」
「ずいぶん頑丈そうな鍋使うんだね。
でも、油を入れてないんじゃない?」
「あぶらは、まほーでアイテムボックスから直接入れる。
あぶらのおんどは、『せるしうす』で170くらい、こっちのことばでいうと『ふぁーれんはいと340』くらいかな。
温度を維持したまますこし待ったら、あぶらをぬいて、できあがりー。」
「おお~。なんか、鍋に入れただけでできたみたいに見えちゃうねぇ。
見えないものでも扱えちゃうんだね。魔法は。」
「鍋の中までは私の感知能力ではまだしらべられないみたいね。」
「魔法認識のスキルを上げれば、見えないものでもある程度感知することができるよーになる。
そーすれば、あとは遠隔起動の魔法を組むだけだから、このくらいのはすぐにできるよーになると思うよ。
そろそろさめたかな、たべてみよー。」
「あ、そうだね、食べてみようか。」
「そうね、食べてみましょう。」