じかんかせぎ。
獅子の頭と前足を鷲に変え、背中に翼を植え付けたようなモンスター『鷲獅子』が、小さな町の中央にある広場に立っている。
巨大な体をゆっくりと動かし、広場の中を歩き回る。
気まぐれのように翼を動かして衝撃波を放ち、広場の近くの建物を砕いていく。
建物の陰で、大型の弓を持った狩人が、精神を集中し、ゆっくりと弓を構える。
『魂の矢』『貫通』『急所撃ち』
「(これでも喰らえくそったれ!)」
放たれた矢は、狙い通りに鷲獅子の左目に向かって飛んでいく。
貫ければ最高だが、避けられたとしても、他の戦士たちが切り込む隙を作るのに役立つ、はずだった。
しかし。
眼に当たったはずの矢ははじき返され、あらぬ方向へ飛んでいく・・・。
斧を持ち、全身を金属鎧で覆っている戦士が、鷲獅子からかなり離れたところ、建物の陰まで帰ってきた。
「なんだよあの化け物は?足に全力で斧叩き込んでも平気な顔してやがる。
くそっ、誰か、この状況なんとかできるやつはいないのかよ!」
狩人が、鷲獅子のほうを向いたまま答える。
「無理じゃないか?
あきらかにこんな町の戦力で勝てる相手じゃないだろーよ。
攻撃通ってないわけだし。
俺が矢を眼に当てたのに効かなかったから、普通の手は通用しないんだろうな。」
戦士は斧を建物に立てかけ、鎧の継ぎ目にポーション瓶を当て、B級ポーションを流し込む。
衝撃波の余波で傷ついた体の痛みが、一時的にやわらげられる。
「目に当てた、ってのは見間違いじゃないんだろうな?」
「眼かまぶたかはわからんが、とにかく目の位置には当てた。
まぶたが鎧みてぇな硬さ、とかいう笑えない冗談なのかもしれねぇ。」
轟音が響き、隣の建物が砕けていく。
「お前、残り何発撃てる?」
「さっきのやつと同じくらいなら5本程度が限界だ。
そのほかだと、火矢が何本かある程度だな。」
斧を構えて、ゆっくりとまわりの気配をうかがう。
「ある程度は逃げた、よな?」
弓を構え、答える。
「ああ。隠れるか逃げるかはしてるだろうな。
いくらか時間は稼げたと思うぜ。
・・・逝くか。」
「おう。」
唐突に、幼い子供の声が聞こえてくる。
『つーしんてすと、つーしんてすと。
声聞こえてる、かな?』
「!?」