そうびせつめいとわいばーん
「たっだいまー。」
「ただいま。遅くなってごめんなさいね。」
「おかぁいー。
きがえのふく、少し強化しておいたよ。」
「おお、ありがとー。
白ちゃんの『少し』はなんかすごいことになってるんだろうなと予想しつつありがと~♪
このワンピースかな?」
「らー。それだよ。」
「白ちゃん、いつもありがとう。
この服、防御力強化と衝撃耐性・・・?
いえ、それだけだけじゃないわね。
隠された性能がありそうな気配を感じるわ。それも、かなり強いものが。」
「み?
もうみやぶられた。はやかった。」
「防御強化と衝撃耐性だけに見えるけどなぁ。
『だけ』って言っていいのかわからないけど。とんでもない強度でかかってるっぽいし。」
「周りの空間をぼんやり見るようにして気配を読むようにすると、かなり強い魔力を感じたわ。
その二つだけでは説明できないくらいの強さに思えたから聞いてみたの。」
「ぼんやり見るとわかるってこと?
えーっと。
こんな感じかな・・・?
あー。たしかに、少し存在感が強すぎる感じ、かな?」
「むー。
やっぱり魔力量を見破れるくらいになると偽装も通用しないか。
ふたりとも魔力認識練習してたし、魔力認識の心得がある人には通用しない程度の偽装だったんだね。」
「魔力付与を隠すなんてこともできるんだねぇ。知らなかったよ。」
「にゃー。
隠せるってことを知られなければ隠しやすい、ってことだねー。
普通の識別だけ使う人相手だったらある程度隠せるかも、ってくらいみたい。
隠さないよりはまし、っていう程度なのかも。」
「いや、でもあたしにはなんか強化されてるのかなーってくらいしかわからなかったから、どんな効果かを隠せるってだけでも充分役に立つんじゃないかな?
スキルによっては戦い方の傾向がわかっちゃうだろうし。」
「らー。そうかもしれないね。
うらをかいて、なにかを隠してるように見せて何も隠さないっていうのも面白いかも。」
「ねぇねぇ白ちゃん。
それで、ほんとはどんな感じの強化したの?
防御力と衝撃耐性がすごいことになってるのはわかったけど、そのほかにもいろいろあるってことなんだよね?」
「らー。いろいろきょーかしてあるよ。
まず、『ボス体質・下級』、これは状態異常の即死、毒、石化、拘束、洗脳、麻痺、割合ダメージ、そのほかいろいろに少しだけ耐性が付くスキル。当たれば一撃で決着しちゃいそうな状態異常はだいたいカバーしてるみたいだね。対応できるのが多いぶん、性能は低め。
あと『魔法耐性』『物理耐性』『精神耐性』『防御力強化』『耐衝撃』。これは文字通りだね。
『装備耐久値自然回復』と『清潔化』で装備のお手入れの手間を減らしてる。
『体温調整』であせもとかふせぐ。
『サイズ自動調整』で体形が変わった時でも安心。
アクティブスキルで『簡易結界』と『障壁呪』と『王者の威圧』が使えるようになってる。
『簡易結界』は精神系の魔法とか、方向が良くわからない物を防ぐ。
『障壁呪』はふぁいやーぼーるなまほうみたいな、方向がわかるものを防ぐ。ばりあーとしーるどはどっちかしかつかえないし、つかってるときに激しい動きするときえちゃう。
『王者の威圧』は、弱いモンスターを追いはらったりこわがらせたりできる。あと相手が威圧系の技を使ってきた時に抵抗しやすくなる。
『使用者限定』は盗まれたりしなくなる効果。
『魔力隠蔽』は魔力の気配を弱くして魔力付与かけた形跡を隠す。
『対識別偽装』は識別してもスキルが見えにくいようにできる。
これで全部、だったはず。」
「うん、なんかとんでもないことになってるのはわかった。
ボス体質、なんていうスキルあったんだねぇ。
そのほかのスキルもなんか便利そうなのばっかりな気がする。
こんなに強化かけるのって大変だったんじゃない?」
「むー。そーでもない、かな?
でも、魔力量の微調整は難しかったかも。
使う量が10万点くらいまでなら細かく調整できるようになったけど、その上になるとまだおおざっぱにしかそうさできない。」
「えっと、白ちゃん?
一応聞くけど、これ作るのに、魔力ってどのくらい必要だったの?」
「むー。
魔導結晶が7個で80万点ぶんくらい?
魔力はたぶん300万点くらいかな。
魔力コントロールがまだ甘いから、ちょっと多めに魔力注いでる。」
「結晶は作るのに10倍くらい魔力使うって言ってた気がするから、実質1100万点か・・・。
って、いくらなんでも高すぎじゃない?
普通のワンピースにかける魔法じゃないよね、どう考えても。
ミスリルの鎧とか、オリハルコンの剣とか、そーいうのに使うような魔法なんじゃないかな。」
「魔導結晶・・・昔話だけのものだと思ってたわ。作れるものなのね・・・。
私も、ワンピースに使うには多すぎるんじゃないかとは思うわ。」
「使用者限定の魔法はかなり魔力使うしコントロールむずかしいからしかたない、かな。
はんぱなせいのうだけど、誰かに盗まれて使われるとかいうことになってもこまるし。
術式があんまりうまく構成できてない部分を魔力量で無理やりカバーしてるところもあるからそれも原因かも。」
「これで半端・・・いったいどのくらいの性能を目標にしてたの??」
「即死とか洗脳とか斬首には完全耐性つけたかった。
でも、そのへんを強化すると他の部分に無理が出てくる感じだから、もっと良い素材が必要になるし、スキルもきたえないとだめなかんじ。
そういう装備の見本があればいいんだけど、でまわってはいないみたい。」
「うーん、まあたしかに、そーいうのは怖いから無効化できればしたいよね。
このワンピースの性能でも強すぎるくらい強いからもう充分って気もするけど。」
「でも、そういう状態異常すべてに耐性つけようと思ったら大変なことになるのも想像がつくわね。
どれか1つの状態異常に集中でも『完全無効』までするのは簡単なことではないはずよ。
もし簡単に対応できるなら、『毒大蛇』みたいなモンスターだって簡単に倒せるようになっててもおかしくはないでしょうし。」
「らー、そうだねー。
『無効』は普通の耐性とは全然違う構成で魔力を注入しないとだめな感じみたい。たぶん。
でも、そのやりかたがわからないから、今は作れない、かな。」
「うん、まあ簡単に毒無効とかできるんだったら、みんな毒無効にするよね。
でも完全防御ではないとしたっていろんなのに耐性つく装備って時点でめちゃくちゃ強いのはわかった。
白ちゃん、なんかすごい装備ありがとうね。これなら強いモンスター出てきてもある程度身を守れそうだよ。」
「この装備で身を守れないような相手だったら、そういうものに狙われた時点であきらめるしかなさそうね。
ワイバーンにつかまったようなもので、『運が悪かった』としか言えないと思うわ。」
「み?
ワイバーンくらいだったらなんとかなりそうな感じになるよーに装備作ったから、だいじょーぶだと思うよ。」
「え?
ワイバーンって、あれだよね。
空から飛んできて、一人つかまえて、飛んで行くっていうやつ。
街の中でも時々さらわれる人いるらしいし、防げたって話は聞いたことないんだけど。
ドラゴンではない、って白ちゃんが言ってたけど、それだって普通に勝てるものではないんじゃない?」
「戦いにならないからだいじょぶ―。
ワイバーンからすると、人間一人なんておやつと同じ。
軽く攻撃してみて、倒せなかったらほかの食べに行くだけだね。」
「・・・おやつ、なの?」
「らー。
人間だったら、散歩してるときにおいしそうな木の実がなってるのを見つけた、くらいな感じ?
おなかすいてたら取りに行くけど、取るのが難しいようだったらすぐあきらめる、そんな程度なかんじらしいよ。」
「木の実をとるのと同じ感覚で人がさらわれてる、ってことなんだ・・・。
つまり、取るのめんどう、って思わせる程度に生きのびればいいってことだよね?」
「らー。そんな感じ。
攻撃なんかいか耐えれば、ほかのところにいくはず。
ワイバーンの種類にもよるけど、ブレスと、しっぽの毒と、あと爪でつかんで上空から投げる攻撃ある。
でもたぶん投げるのくらいしかしてこないからだいじょーぶだね。
ワイバーンはおなかすいた時にはブレスはしてこないはずだし、しっぽは人間が後ろにまわりこんだときしか使ってこないはず。」
「いや、それをだいじょーぶと言い切るのがすごいなぁ。
普通、ワイバーンに上空から投げられたら間違いなく即死、だよねぇ・・・?」
「普通は死ぬわよね。」
「らー。そうかも。
おなかすいた。
おいしそうなにおい、するね。」
「あ、先輩たちからお菓子もらってきたんだ。
おなかすいたとき食べなさいって、保存食。」
「むー。いまもおなかすいてるけど、たぶんそういう意味じゃないね。」
「出かけた先でおなかすいたとき、っていう意味でしょうね。
まず、どこかでお昼ご飯食べてから行きましょうか?」
「にゃー。そうしよー。」
「そーだね。どこで食べようか。
食べながら、遊びに行く方向も考えないといけないね。どのへんを目指すのか。」