スミシーの意味。
「それじゃ、さっき説明したとおり、『解析』っていうスキルで呪いについて詳しく調べるね。
心の準備は良いかな?」
「うん、いつでもいいわ、お願いね。」
「いくよー。『解析』。
おわりー。」
「え?もう終わったの?」
「らー。そんなに時間かかるスキルではない。
呪いはちゃんと解けてたよ。
今もすごく調子悪く感じてるだろうけど、大部分は蓄積された疲労だから、ゆっくり休めばある程度はよくなる。
後遺症で体力とか精神は呪われる前より減った状態になっちゃってるから、呪われる前と比べたら『すこし調子悪い状態』は続くと思うけどね。」
「ほ、本当に治ったの?
もうあの痛みはなくなるの!?」
「むー。信じるかどうかは自由。
体も精神も調べたけど、調べた範囲では呪いは全然残ってない。
今回の呪いは解決したと断言できる。」
「・・・ほんとに、終わったの?
私、生きていてもいいの?」
「わたしでも生きてるくらいだから、生きててだめなことはないとおもう。
・・・返事できる状態ではなさそーだね。」
「テトラ、帰ったぞ。」
「み?オクトさんだ、おかえりー。
テトラさんはしばらく返事できないと思う。
涙とかいろいろ止まらなくなってる感じ。
しばらくしたら落ち着くんじゃないかな。」
「ど、どうしたってんだ?
なにかまた変なことになったのか?」
「呪い解けたって言ったらこーなっただけだよ。」
「呪いが解けた・・・?
本当だろうな、本当に解けたんだよな!?」
「さっき調べた、呪いの痕跡もなくなるくらいに完全に解けてる。
今までかかってたくらいの呪いを、わたしがさっきしたレベルの感知技能に見つからないように隠すんだったら、たぶんこの町全部消し飛ばすほうが簡単っていうくらいの力が必要。
だから、呪いが残ってて見つけられてないってことは無いって言っていいと思う。完全に解けてる、って言える。」
少年は片膝をつき頭を下げ、腰に付けていた短剣を鞘のまま外し足元に置いた。
「み?」
「『偉大なる』スミシー・ホワイトよ。
我、見習い冒険者『オクト』
かつて誓いし『声約』のもと、我が『未来』を支払うことを誓う。」
「むー。
スミシー・ホワイトの名において、『受け取り拒否』。
『アラン・スミシー』。こっちの言葉だとスミシー・アレンだったかな。
それは『名前が無い』という意味の名前。
この世界で彼の名前『スミシー』を名乗るものは、『名前が無い』というあつかいになる。偽名ってことだね。
だから、『スミシー』に誓われても、誓いの対象が無いってことになる。
そんなわけで、誓う意味がない。
オクトさんは一度も殺しに来なかった。それで充分。」
「はぁ?なんで治してくれるやつ探すのに殺す必要があるんだ?」
「解呪頼む人がこーいうひとばっかりだったらもーちょっと呪い解ける人多かっただろうね。
呪いっていうのは、解くよりかけるほうが技術的には簡単。呪具が揃えられればだけど。
呪いを解ける技術があるってことは、呪いをかける技術もあることが多いってことになる。
解呪の仕事してる人の一番多い死因は、依頼人からの暗殺だって言われてる。
解呪をする人は、常に暗殺とかに警戒しながらやってる。
技術はあってもそういうのにかかわらない人もある程度はいるだろうね。」
「呪い解くの頼んでおいて殺す、ってのかよ!?」
「らー。そーいう人が多いってことだね。
解呪に失敗して殺される人も多いらしい。
成功しても殺される、失敗しても殺される。
だとしたら、名乗り出ないよね?」
「ああ。まあそうだよな・・・。」
「眠くなってきたから帰るね。
まだテトラさんは落ち着かないみたいだけど、そろそろ意識が無くなるし。
それじゃ、おやすみー。」
「スミシー、ありがとなっ!!」
「にゃー。」