解呪作業開始
「え?換気?呪い解くのに??」
「らー。呪い解く前に換気する。
閉じられた部屋は、空間を区切るもの。
狭い世界に閉じることで、魔力効率を上げて、呪いの効果時間も長くすることができる。
だから、大きく扉を開けることで、逆に呪いが自然に解けるのを早めることができる。
効果は呪いの種類によるけど、呪具を使わない種類の呪いならこれだけでもかなり変わってくるよ。
あと、呪いの元凶になっている物を探すときにも、換気しておいた方が探しやすいとわたしは思う。
呪いのにおいが充満してるところじゃ探しにくいからね。
だから、とりあえず準備として、窓開ける。さむいかもしれないけどがまんしてね。」
「あ、うん、寒いくらいなら全然大丈夫だよ。
それじゃ開けるね。」
「オクトさんに開けてもらおう。
オクトさん、なんでも手伝う、って言ってたのを今使う。この建物の窓を開けてね。」
「おう、今開ける。」
「ありがとー。
これで、町の外に出る時に約束した『なんでも手伝う』っていう報酬が支払われたことを確認したよ。」
「えっ!?
お兄ちゃんとスミシーちゃんで町の外に出たってこと?」
「らー。そうだよ。もう一人いたけど。
浄化のハーブ取りに行きたかったんだって。」
「・・・私なんかのために、そんなことしてたんだ・・・。」
「むー。物の価値は、人によって解釈が違う。
テトラさんの呪いを『解ける可能性があるかもしれない』程度のハーブでも、命がけで取りに行く価値があるものだったんだろうね。
ふつうにありがとー言えばいいんじゃないかなと思うよ。」
「・・・そうね。2人とも、本当にありがとう。」
「にゃー。
窓を開け終わったみたいだから、作業を始めるよ。
まず、『解析』のスキルで呪いの情報を探りたいんだけど、たぶん能力値の情報も一緒に見えちゃうと思う。
それでもいいなら調べる、ダメならほかの方法にする。どっちにする?」
「うん、能力値知られて困ることもないし、大丈夫。調べてみて。」
「しらべたー。
眠くなりそうな時と、ケガしたときにすごく痛い、眠った時はすごくすごく痛い。そんな感じの呪いだね。
あと、傷の治りが速くなるみたいだね。普通なら死ぬ程度の傷でも、特定のもの以外なら治るみたい。」
「うん、そんな感じだったわ。
自殺しようとしていろいろと刺したり切ったりしてみたけど、全部治っちゃったわ。
それでも眠ってるときの痛みに比べればたいしたことない、って言えるのが怖いけど。」
「窓開けてきたぜ。」
「ありがとー。
呪いの情報は集まったよー。」
「もうわかったのか?
それで、どうなんだ、解けるのか?」
「むー。
解ける解けないで言えば解けるけど、普通にやると解ける前に精神がダメになると思う。
ある程度以上の時間とコストをかけることが必要になる感じだね。
あと、呪いは解けてもある程度の後遺症は残りそう。」
「コストってのはどの程度だ?
俺一人でなんとかなりそうな物ならどんな方法を使っても何とかするから、頼む。呪いを解いてやってくれ。」
「ゆっくり治す方法なら、道具とか薬は薬学の研究してた時の残りである程度なんとかなるから薬代とか道具代は気にしなくていい。
ちょっと足りないものもあるけど、一歩手前の素材は揃ってるから、今治療始めても、在庫が足りなくなる前に補充できる。
あと、呪いが解けたあとは、怪我が治りやすい、っていう体質はなくなるし、普通に致命傷受ければ死ぬ程度の耐久力になるけど、呪い解いた時点で自殺する、とかはしないでね。時間の無駄だから。」
「うん、それは約束するわ。呪いが解けたあとにどんな後遺症が残ったとしても、自殺はしない。」
「にゃー。ありがとー。
あと、呪いを解く方法で、護符とか魔法の指輪とかを使ってもらおうと思うけど、だいじょうぶ?
結果によっては、ちょっとぴりっとするくらいの痛みはあると思う。
そーいうものにかかわりたくないなら、他の方法を考えるけど。」
「ピリッとでもビリッとでも大丈夫よ。
あれより痛いってことはないでしょうし。」
「にゃー。それじゃ、ためしにこの『方違え』の護符を使ってみてね。
この紙を持って「かたたがえ」って言う。
遠距離からの儀式で呪われている場合は、これで一時的に呪いが解ける。」
「うん、やってみるわね。
「かたたがえ」!」
「それを使っても呪いが弱くなってないっていうことは、遠距離からの儀式ではないね。
痛みはあった?あったとしたらどのあたりにどんな感じで?」
「右手首のあたりに、ピリッとしびれみたいな感じ?
痛いって言うほどではなかったわ。」
「それなら、その手首のあたりを見せてね。
むー。表面には魔力反応ないね。
ということは、体内だね。呪いの原因。
外で針に刺さったとか、そういうけがをした記憶はある?」
「えっと、覚えてないわ。
刺し傷は時々あると思うけど。」
「むー。普通の人間の人はけっこーけがが多いらしいから、仕方ないか。
たぶん呪いをかけた針とか小刀とかで攻撃されたのが原因の呪いだね。
呪いの武器一個つくるのもたいへんだろうし、呪いを解かれたら他の人を狙うとおもう。
だから、今回解けば解決はなず。」
「そうだよな、考えてみれば、呪いがかかってるってことは、呪いをかけたやつがいるってことなんだよな。」
「人間に限らずゾンビとかゴーストとかも呪い持ってたりするけどね。
すくなくとも、このレベルの呪いを回数制限なしで使えるような人間はめったにいないだろうし、もしいたとしても特定の人を何回も狙う必要はないとおもう。人間以外だったらまず人間の区別つかないことが多いらしいし。
それじゃ、テトラさんに質問するね。どの方法を選ぶか。」
「うん、どんな方法があるの?」
「呪いを解く方法と、とりあえずの痛みを和らげる方法があるけど区別しないで説明するね。
まず、一番お勧めできない方法が、普通に解く方法。
呪いのほかに2種類の魔法がかかってるんだけど、普通に解こうとすると、『精神覚醒』の魔法が先に解ける。
それ解けちゃうと、たぶん痛みで気絶してそのまま最大級の痛みを味わい続けることになる。
2つめの方法は、解呪のポーションの高レベルなので一気に解く方法。
手に入れば一番早い方法だけど、普通には手に入らない。
3つめが、『怠惰の指輪』っていう呪いの指輪をつける方法。別の呪いで上書きする方法だね。
これは3日あれば準備できる。
全身だるだるな感じになって、軽い熱病みたいな症状になるから身体能力は半分以下になるけど、痛みはほとんどなくなる。
ただし、もともとの呪いが解けることは永久にない、と思っていい。指輪外したら元通り。
4つめ、精神耐性の指輪をつけて、換気良くして、自然に治す。 精神耐性である程度痛みはやわらげられるはず。解呪のポーションを飲めば少し呪いの持続時間が減る。
これは今持ってるからいつでもできる。解呪のポーションは弱いので良ければ今度作ってくる。
そんな感じ。」
「えっと、呪いを解けそうなのは4だけよね。その中だと。」
「むー。そうかも。」
「それじゃ4をお願いしていい?
あと、依頼料はさっき言ってた本だけでいいのかしら、お金はほとんどないんだけど。」
「ほんだけでいいよー。
あと、指輪はほかの人には付けさせないってことと、終わったら返してくれるってだけ守ってくれれば。」
「うん、それはもちろん約束するわ。
他の人には付けさせないし、呪いが解けたら返すわね。」
「にゃー。よかった。
それじゃ、この指輪を渡しておくね。」
「ありがとう。
・・・銀の指輪!?」
「らー。ぎんだよー。
銀の呪い耐性に加えて、精神強化と精神耐性つけてある。弱めな効果だけどね。」
「えーっと、銀の指輪に精神強化と精神耐性、って、ものすごく貴重な指輪じゃない?
そんな簡単に渡してよかったの?」
「み?そんなに貴重なの?」
「いや、指輪には詳しくはないから、たぶんそうじゃないかなって思っただけだけど。」
「そーなんだ。
でも、いろいろ対策はしてあるから大丈夫。つけてみてね。」
「うん、つけてみるわね。
・・・つけてみたわ。これで少しは痛みがやわらげられる、ということなのね?」
「らー。そんなかんじ。
そろそろねむいから、いったんかえるね。
あした、あさきてみる。どんな感じだったか感想聞かせてね。
それじゃ、おやすみー。」
「おやすみなさい。ありがとう。」
「ありがとな。おやすみ。」