『干渉』と『賭け』
「テトラ、入るぞ。」
「お兄ちゃん、お帰りなさい。
あれ、お客さん?珍しいね。」
「ゆー。テトラさん、はじめまして。
私は、スミシー・ホワイト。副業でヒーラーのスキル取ってる。
呪いをなんとかできないかってオクトさんに呼ばれてきてみた。」
「はじめまして。
知ってるみたいだけど、私の名前はテトラ。よろしくね。」
「らー。知ってたー。よろしくー。
でも、本人からの名乗りは重要。
魔法とか呪いとかそーいうものに対応しようとするときは、本人がどう名乗るかによって現状の認識を固めることができる。
攻めるとしても守るとしても、認識が固まってたほうが安定した戦いができる。
ひとによっては逆に不安定にして限界を超える、っていう方法を使う場合もあるけど、今回の場合は安定と防御が必要。だから無知より既知が必要と言える。」
「呪いに詳しいのね。外見からは想像もつかないけど。
少なくともふつうの人はスミシーなんて名前は名乗らないはずだし。」
「らー。すこしだけくわしい、かな。
あと、『スミシー・ホワイト』はたしかに偽名。
でも呪い対策の偽名なわけではないよ。別の理由。
人間の人がかける呪いくらいなら、本名知られてても防げる。」
「人間がかける呪いは防げる、って、すごい自信ね。
ちっちゃいけど、見た目通りの年齢じゃないってこと?
敬語で話したほうがいいのかしら。苦手だけど。」
「むー。自分の年齢、知らない。
見た目でどのくらいの年齢が想像されるかも興味はない。
だから、その質問には正確な答えを持たない。
話し方は普通でいいよー。わたしも敬語っていう話し方は苦手だから。」
「うん、それなら普通に話すね。
スミシーちゃんって呼んでいい?」
「らー。いいよー。
オクトさんに、その呪いをどーにかできないかって頼まれて、見に来てみた。
ある程度の『干渉』はできる。呪いが解けるかもしれないし、呪いを弱めることができるかも。
私に任せる『賭け』ができるならだけどね。」
「『賭け』?
賭けの内容は聞いても良い?
呪いを解けるかどうかってことかしら?」
「そーいういみじゃない。
私が裏切るかどうか、っていう意味の賭け。
私が現状使える情報と道具で、呪いを完全に解くところまで行くかはわからないけど、少なくともある程度呪いを弱めることはできる。
ただし、同じ道具を逆の使い方をすれば呪いをもっと強くしたり、呪いの数を増やしたりもできる。」
「呪いを解く道具も呪いをかけることに使えるってことね。
呪いを強くしてるのか解いてるのか私にはわからないだろうから、スミシーちゃんを信用できるかどうかで決めろ、っていう話であってる?」
「らー。そんな感じ。
だから、そーいう道具を使わない方法が良ければ道具無しでやるし、手出ししないほうがいいならこのまま帰る。
オクトさんには頼まれたけど、本人の許可が無いと手出しはしにくいしね。できるけど。」
「私に選択の余地を残してくれてるのね。ありがとう。
信用するかを決める前に、少し質問していい?信用してないわけじゃないんだけどね。」
「らー。どうぞー。
答えられるものなら答えるよー。」
「スミシーちゃんに『干渉』をお願いしたとして、報酬は何を払ったらいいのかしら?」
「むー。
呪いに関連する本とかある?」
「4冊あるわ。情報は大したこと書いてなかったけど。」
「にゃー。それじゃ、成功したらその本を貸してもらう、ってことでいいかな。」
「え?それだけでいいの?
読んだものだし誰も買い取ってくれないだろうから、そのくらいなら全然かまわないけど。」
「らー。買い取ってくれない、ってことは、本屋で買うのも難しい。
だから、呪いとか調べるモノにとっては、けっこー価値がある。」
「そうなの?逆に価値があるのね。」
「らー。そんなかんじ。
それで、どうする?呪いを解除できるか試してみていい?」
「うん、それじゃお願いするわ。
成功したら4冊の本を渡すわね。」
「にゃー。それじゃ、解呪の準備を始める。
まずはじめに、換気。窓と扉開ける。」
「換気?呪いを解くのに??」