言葉の意味は一つとは限りません。
「・・・なるほど。
『軽いけが』という言葉の意味を、はやてちゃんと白ちゃんでかなり違って使ってた、ということね。」
「らー。そうなんだって。
はーたんの、軽いけが、どのくらい?」
「軽いけがっていうのは、どう表現したらいいのかな、骨折とかまで行かないくらいのけが?
すり傷、小さめな切り傷、打撲とか、ジャンクポーションで治せるくらいのけが?まあそんな感じ。」
「うん、私もそのくらいだと思ってたわ。
骨折くらいになると軽いけがとは言えなくなるわよね。
それで、白ちゃんの『軽いけが』というのはどのくらいの意味なのかしら?」
「むー。
ちゃんと応急処置すれば、普通の人間なら死ぬところまではいかない、そのくらい。後遺症はかなり残る。」
「え、全然軽くないよね。それ。」
「らー。軽いけが、だから、軽くないよ。」
「あー、そーいえばさ。
白ちゃんの言葉って、本で覚えたんだよね、ほとんど。
本だとさ。大けがした人が居る時、『こんなのかすり傷だ』とか『傷は浅いぞしっかりしろ』とかいうシーンってけっこーあるよね。特に物語だとさ。
そういうのから情報取っちゃうと、なんか変な感じになってもおかしくないような気がする。」
「あっ、そういわれてみると、そうかもしれないわね。
ポーションですぐ治るくらいのけがなら、物語ならわざわざ描写する必要もなく治しているでしょうし。」
「むー。
そーいう原因じゃなくて、古語的用法と最近の言葉の意味の違い、かな。今回は。
軽いけが、っていう単語を、単純に音として聞くと、『重い』と『致命傷』と『否定』という意味の古語に分割できる。
で、それをつなげると『重いわけではないけど、致命傷』になるから、『適切な処置をすれば大丈夫だけど、処置しないと死ぬ』くらいの意味になる。
でも、今の人間ことばのばあい、致命傷、っていう意味が薄れて、たいしたことのないけがっていう意味に変化したんじゃないかな。」
「なるほどー。っていうことは、文字通り読むと『軽いけが』が『死ぬ一歩手前』で間違ってないわけだ。
古代の言葉はけっこー文字の意味そのまま使ってる感じだっていう話だしねー。」
「らー。そんな感じ。
でも、今回覚えなおしたから、今度からは『軽いけが』っていう言葉は現代の人間ことばと同じ意味で解釈できるようになったよー。」
「うん、それはよかった。
でさ。さっき白ちゃんがくれたポーションってさ。
『軽いけが』でも使えるんだよね。死ぬ寸前のほうの。」
「らー。つかえるよー。
完全に治るってわけじゃないと思うけど、ある程度の回復はできるー。」
「実際どのくらいの品質のポーションなのかって、わかる?
めちゃくちゃよさそうな気がするけど。」
「・・・Aランクのポーションね。
一般的にジャンクポーションって呼ばれているものがD、チープポーションがC、ノーマルポーションがBだから、そのさらに上になるわ。
効果は鎮痛と体力回復、それと負傷回復、部位欠損回復かしら。」
「らー。そんな感じだね。
部位欠損回復っていっても、指切断とか複雑骨折くらいなら手遅れでなければ治る、ってくらいだと思う。あと古傷とかの痛みの解消?
かんたんに作れるっていう条件だと、わたしはこのくらいがげんかいー。」
「・・・白ちゃん、人間が、いえ、エルフ以外の生き物が現時点で作れるポーションの限界って、どのくらいか知ってるかしら?」
「むー。
普通のポーションならSSくらいはだれかつくれるんじゃないかな?私でも使用期限短いのでよければSくらいの回復力のぽーしょん作れるし。」
「Bランクなのよ。まだ。
作れると言われているのは、だけどね。」
「まあ白ちゃんがどのくらい作れるかが一般に知られてないのと同じような感じで、どこかにものすごいの作れる人間もいるのかもしれないけどね。」
「み?そうなんだ。
たしかに、BからAにあげるのは難しいかも。まじめにやってたら私でも何年かはたぶんかかったと思う。
それじゃ、普段使いのぶんはBくらいまでにしておいたほうがいいんだね。」
「そーだね。まあBもあたしとかみやっちみたいな下っ端が使ってたら不自然だけど、赤ゲージの人とか治せるのはBからだっていう話だし、いざというときのために持っておくのはいい方法かも。
訓練の時のけが程度に使うのはさすがにまずいけどね。」
「むー。
それじゃ、訓練で普通に使うのはCくらいにしておいて、いざというときのためにBとAを少しだけ準備しておくといいのかな。」
「うん、そんな感じでお願いしていい?
Dでもいいくらいだけどね。訓練用は。ポーション無しで済ませることも多いし。あたしらだと。」
「むー。
Cならちょっと作り方を間違えれば作れるし在庫もいっぱいあるけど、Dは難しいかも。
Dが必要な時は普通に買ったほうが速いかもしれない。
とりあえず挑戦はしてみる。」
「あ、Dのほーが難しいんだ。
それなら、Dは普通に買うことにするね。」
「そのほうがいいとおもうー。
怪しまれない程度の品質になるよーに作るのは、逆に難しい。」