ぬけはね。
不意打ちで撃ち込まれた魔法によって、街の中、門前の広場に飛ばされた二人。
状況を認識するため、辺りを見回す。
周りにも人は多くいるが、自分たちのことを気にしている人はいないようだ…
「街の中、だね。」
「そうみたいだな。
ん?ペンタ、頭のうしろになんかついてるぜ。なんだそれ。」
「頭に?あ、これか。
羽根?鳥でも飛んでるのかな。」
上を眺める。
ひざを抱えた状態で空から降りてくる幼女と目が合った。
「えっ?スミシーちゃん!?」
「み?ただいまー。」
背中の羽を羽ばたかせ、ゆっくりと降りてきて着地した。
「・・・むー。なんとか着地成功。」
「おかえり、ってなんでそんな状態になってるの?」
「よう、おかえり。おもしろい降り方だなそれ。
ところで、さっきのあれはなんだったんだ?
変な所に飛ばされたと思ったら町に帰ってきてたんだが。」
「さっきのは街に戻すまほー。ちょーど事前詠唱の使用期限がギリギリだったからつかってみた。
いまとんでたのは、さっきのまほーの魔力の痕跡を消すために、空から降りてくるまほーを使ったから。」
「つまり目立たないように、ってことだよね。
さっきの降りかたはものすごく目立ってたと思うけど。」
「むー。
にんしきそがいのまほーもかかってるから、見た目よりは目立たない。
見えるんだけど、ふつーの光景だよね、って思うような錯覚をかんじさせるまほー。
すこしへんなことをしても、きづかれにくくなる。」
「いや、まあ問題ないんならいいけどな。
魔法ってのはすごいことできるもんなんだなぁ。俺は全然知らなかった。
とりあえず、急いでこのハーブの束から浄化のハーブを選んで妹に持っていってやりてぇんだが、礼の話はそのあとでいいか?」
「らー。いいよー。
わたしもちょっと用事があるから。」
「ありがとな。それじゃ行ってくるぜ。
よっしゃ待ってろーーーー。」
「はしっていったね。はやいなぁ。」
「妹がすごい呪いにかかってるって言ってたから、たぶんあのハーブで呪いが解けないか試してみるんじゃないかな。」
「そーなんだ。
ぺんたさんはいかなくていいの?」
「ああ、オクトの妹にはあんまりあったことないしね。
呪いが解けたならお祝いでもしようかとは思うけど。」
「そーなんだね。」
「そういえば、スミシーちゃんの用事ってのは急ぎなの?
僕としゃべってて大丈夫だった?」
「むー。
さっきとんでたときに、背中から抜けた羽根を落としちゃってたみたいな感じしてたから探そうかなとおもってた。
でも見つからないから、だれかひろったのかも。」
「これのことかな?
さっき頭の上に落ちてきたから拾っておいたんだけど。」
「らー。それだね。
やっぱりぬけてたんだなぁ。」
「あ、これだったんだ。それじゃ返すね。はい。」
「み?
いらなかった?」
「え?
スミシーちゃんの物なんだよね?」
「むー。
わたしの物だったけど、落として拾ったら拾ったひとの物になる?」
「そうなの?」
「らー。たぶんそうだね。
まあつかいみちはあんまりないと思うけど。
なにか困ったことあったら、その羽根と引き換えに簡単なことなら手伝うよ。
いろいろまほー使えるから、役に立つかも。たたないかも。」
「えーっと、大事なものってわけじゃないんだよね?」
「らー。
人間の人で言うと、抜け毛くらい?
大事なものではないよ。」
「抜け毛くらいだったら、大丈夫そうだね。
それじゃ、記念にもらってても良い?」
「らー。どうぞー。
わたしはそろそろ眠いから帰るね。それじゃ。」
「あ、今日は本当にありがとう。
無事に帰れたし、ハーブも取れたし、スミシーちゃんのおかげで助かったよ。」
「むー。
無事に帰れてよかった?
眠さ限界。かえるー。
『転移門』。それじゃねー。」
空間のゆがみを通り、幼女は姿を消した・・・。