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3人の勇者と6人の勇者

(もぐもぐ)

「それで、コビットさんが今回聞きたいことはなにかな?」


「えっと、試しに使ったと仮定した場合ですが、シロちゃんの探知能力で、周りの町との位置関係を調べることはできますか?」


「むー。できるといえばできる、かな。

自分の飼い主を捜す能力は、距離と方向がなんとなくわかる。それを利用して以前見た場所との位置関係を調べる方法は前回使った通り。

魔法をかけられた武器とかを目印に探す方法だと、目印に使う魔法がものすごく珍しくて強い魔法じゃないと調べられないかな。

具体的に言うと、現物を見たことない物なら、『世界全体に、それと並ぶ力を持つものが片手で数えられる数しか存在しない』くらいの物だったらどこにあるか調べられる可能性はある。その場合の精度は探すものの特異性しだいかな。ものすごく強力な魔力を発してるとか。属性が変わった物だったりすると探しやすいかも。

それから、ある程度以上の強さのもので現物を見たことあるものなら『それと全く同じ波長のものがどこにあるか』が調べられるかもしれない。」


「世界に片手で数えられる数、ですか?

ということは、そういうものなら世界のどこにあってもわかるということになりますか?」


「わかる可能性もある、くらいだね。

距離は遠くても調べられるけど、他の物と反応が混ざったりするからかなり大ざっぱになることもあると思うし、調べられないこともたぶんある。」


「それだったら、それを利用して、この大地、世界全体の広さをおおまかに調べることはできますか?」


「み?

一番遠くの反応を調べれば推測はできるね。

ためしにしらべてみる。

・・・計算終わり。

旧世代の歴史書『三日間世界一周』の内容と矛盾しない情報が取れた。

その歴史書では、大地の広さは縦と横の長さがそれぞれ3万きろめーとる前後の正方形、って書かれてた。

でもはかったひとがいないからわからないらしい。

はかるきじゅんの棒がながさばらつきあるくらいだし。

でも、測定した魔力反応から推測すると、大きくは違ってないんじゃないかとは思う。

ひょっとしたら縦横半分くらいに小さい可能性はあるけど。

私が感じた魔力との距離が、えっと、46340きろめーとるかな?そのくらいを大幅に上回ってるなら矛盾が確定するんだけどね。

まあそれも、私の感知範囲がその程度で終わってる可能性はあるから、ひょっとしたらもーっと広い可能性も否定はできない。

まとめると、「最小で縦横1万5千きろめーとるの正方形、おそらく縦横3万きろめーとる前後の正方形、ただし極端に広い可能性も否定はできない」だね。」


「かなり広いんですね、この世界。」


「せかいはひろいねー。

次、何か聞きたいことある?」


「僕たちは3人の勇者という言葉について調べています。

なにか、関係することで知っていることはありませんか?」


「3人の勇者?」


「はい。昔、魔王を倒した勇者たちの話なんですが、聞く場所によって内容が違っているようで、地域によってどのように違うのか調査しようと思っています。」


「魔王を倒した勇者、3人の勇者、なんだね。わかったー。

歴史書で簡単に調べられる範囲でなら情報わかるよ。

少し長くても良いならせつめいするー。」


「あ、はい。お願いします。」


「私が知ってる範囲の情報では、3人とも本名はわからない。3人とも亜神として扱われることが多いから、本名を知ることは危険って考えられてるのかも。」


「一人目、知られてる異名は、『黒翼の天使』『白衣の悪魔』『鳩嫌い』『薬草王』。

見た目は人間、魔道具とポーションと軟膏と回復魔法を並みの達人以上に使いこなすものすごいヒーラーなんだって。

でも、一番得意な回復魔法で本気を出すとき、背中に黒い羽がはえてきちゃう。それを気にしてたみたい。だから鳩がきらい。」

 

「二人目。『疾風の地霊』『魔道王』『無限魔道士』『双魔剣』『酒断ちドワーフ』。

体質的にお酒が飲めないどわーふだったみたい。

勧められると付き合いで少しだけ飲むけど、そのあとものすごい体調不良になったみたい。

でも、お酒勧められるのは大好きだったから断ることはなかったんだって。

まほーが得意だけどあんまり使いたがらなかったらしい。

鍛冶は苦手だって言って他の人の武器は絶対作ろうとしなかった。

でも自分で使ってた双魔剣『ナマクラ』は自作だったらしいから、実際は鍛冶の技術は高かったらしいね。」

 

「三人目。『邪聖剣』『双大剣』『四本腕』『白黒剣士』。

大剣を2本使う二刀流剣士だったらしいね。

普通の人間なら両手で持たないと持ち上げられないような武器を片手で持って二刀流してるから、『四本腕』って呼ばれることもある。実際4本なわけじゃないみたい。

でも物語では4本腕で書かれることもある。その場合は剣も4本になるから『一身四刀』ってよばれたりもする。

『邪聖剣』『白黒剣士』は使ってる武器の属性が光と闇だったかららしいね。光と闇の属性の武器はほかの属性より作りにくいけど、性能は高いはずだよ。だいたいのモンスターにはどっちか効くし。

たぶん人間なはずだけど、人間以外の何かが化けた姿として考える人も多いんだって。魔族とか天使とか悪魔とか。」


「『双魔剣』と『邪聖剣』を合わせて『二身四刀』って呼ばれることもある、けど、二人が同じ敵にかかっていくことはあんまりなかったらしい。」

 

「『黒翼の天使』『白衣の悪魔』『邪聖剣』『魔道王』『双魔剣』『薬草王』をそれぞれ一人と考えて『6人の勇者』という解釈する場合もある。

私が住んでるところでは物語は6人のほうが一般的。歴史書では3人って書かれてるのがほとんど。

だから、3人のほうの物語が書かれてる本があるなら読んでみたいかな。」


「えっと、僕たちは本ではなく、人からの話で情報を集めていました。

手分けしていろんな人に聞いた結果、『黒翼の天使』『白衣の悪魔』『疾風の地霊』『双魔剣』『邪聖剣』『二身四刀』という呼び名の情報は集まりました。

その情報は、なぜか一人が1つずつしか持っていない状態でした。かなりの人数に聞いたのですが、2つ以上の言葉を一人から聞き出せた例はありませんでした。」


「み?

『黒翼の天使』と『白衣の悪魔』は『正義の神』の信仰してる人が使いそうな表現だね。『黒翼の天使』が新教派、『白衣の悪魔』が統一派かな。

『双魔剣』『邪聖剣』『二身四刀』は人間とかドワーフが使いそうな表現。

『疾風の地霊』は、ドワーフの使いそうな言葉ではあるんだけどそれにしては褒めてない感じだから、ドワーフの方言を習得したドワーフ以外の人、かな?

聞き出した数を推定すると、『黒翼の天使』と『白衣の悪魔』が多い、『双魔剣』『邪聖剣』が少ない、『二身四刀』『疾風の地霊』がすごく少ない、だね。」


「は、はい。聞き出した数はその通りです。

そんなことまでわかるんですね。」


「単純に、そういう呼び名をつけることができるまでの情報を手に入れる難しさを考えてみればわかるー。

二刀流の属性まで理解できる人がその二刀流を見る、というのは難しいだろうし。二刀流が2人揃って戦ってるのを見るのもたぶん難しい、それだけ。

そろそろしゃべるのつかれた。ごはんのつづきたべるー。」


「はい、ありがとうございました。」


「そーいえば、そろそろある程度見当つきそうな感じなのかな?こびっとさんのもくてきち。」


「いえ、ぜんぜんわからないので、いろんな質問を多くの人にしてみてそれから情報を読み取ろうとしているところです。」


「そーなんだ。やっぱり、知ってる人いない感じなんだね。

難しい単語なのかもしれないねー。もくてきちの名前。」


「そうなのかもしれませんね・・。」

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