はたをたてないように。
「ただいま、イエローケーキ買ってきたわよ。」
「たらいー。」
「おかえりー。ありがとねー。せっかく買ってきてくれたんだし、おやつにしよーか。」
「おやつの前に、白ちゃんにお話しすることがあるんだけど、良いかしら?」
「らー。おはなしするー。」
「白ちゃん、今日買いに行った「イエローケーキ」のことを、危ないものだと思ってたのよね?」
「らー。私が住んでた国の一部で使われてた言葉で、ものすごーく危ないものをさすことばだった。たぶんべつものだとおもったけど、一応警戒はしてたー。」
「それだったら、出発前にひとこと言ってくれれば私だって説明できたと思うの。そうすれば無駄に警戒することもなかったわよね?」
「むー。
私がいた国の考え方では、危ないって言われて行動を変えるのは、すごく不吉な感じ。
だいたい、いちばん最初にひどい目に合うって言われてる。
だから、おおきな方向での行動は変えないように、そのまま行ってもだいじょーぶなような対策をとった。」
「あら、そんな考え方もあるのね。
経験則なのかしら、それとも宗教的なものなのかしら。」
「むー。
しゅーきょーではないけど、昔から言われてるかんじ。経験則かも。」
「ねーねー、白ちゃん。
出発前に使ってたおまじないって、けっこー強力なやつなんだよね?
どんな感じのおまじないだったのか、良かったら教えてくれないかな?」
「らー。せつめいするー。すこしながくなるかもしれないけど、いい?」
「うん。長くても大丈夫。お願い―。」
「おまじないの名前は決めてなかったけど、名づけるなら『声願・七柱の祝福』って感じかな。
目的は七柱の神による祝福七種類の重ね掛け、今回の場合効果続くのは1刻くらい。
呪文聞いてればわかったと思うけど、何かいいことありますように、っていうくらいのおおざっぱな感じな呪文だから、どんな感じの祝福かかるかはわからないけど、その祝福自体では悪いことにはならないはず。
でも、本当の目的は、呪いからの防御。
祝福をたくさんかけてると、呪いや毒にかかりにくくなる。
呪いや毒を受け入れるほどの空き領域が残ってない感じ。
逆に、良いこと起きる強化とか加護の効果も祝福の時間中は発揮できない場合もあるから、そこだけが欠点かな。
今回つかったじゅもんの場合、対象を『主』、つまり飼い主に限定。まほーに使う言語で『姉』っていう単語がわからなかったから今まで通りの認識で設定してみた。
あの呪文そのまま私が使った場合だと、対象が『主』だから、みーたんかはーたんにしかかけられないようになってる。たとえば騎士とかやってる人の場合だと領主みたいな人が対象になるのかな?呪文の『主』の部分を複数形にして唱えれば二人に同時にかけることは可能。
魔法文字読めないで丸暗記してる人の場合だと、特定の対象にしか使えない、という欠点がある呪文、っていうことになる。その分効果は高くなる。
でも私の場合だと、あの程度の呪文をもとに対象の設定を変えるくらいなら1小刻くらいあれば作れるから、特定の対象にしか使えないのは欠点にならない。でもなぜか効果は上がる。
本来は六人か七人で使わなくちゃいけない儀式魔法だけど、無理やり一人で発動してるからかなり魔力効率は悪いと思う。
あと、第七属性もかなり魔力コスト高い。これは七属性使うという目的には必要だから仕方ないけど。
だいたいそんなかんじ。」
「えっと、第七属性っていうのも気になるけど、七柱の神、って、「幸運の女神」、「正義と契約の神」、「酒と宴の神」、「炎と鋼の神」、「世界樹」、「勇気の神」・・・他にまだいるの?
あたしは呪文聞いて意味聞き取れるほど魔法言語勉強したわけじゃないから、正直言うとさっぱりわかってない。」
「むー。
「酒と宴の神」と「炎と鋼の神」は同じ個体だって言われてる。あと、「勇気の神」っていう表現だといろんな神に当てはまっちゃう。
でも、今回のまほーの場合は適当に6種類の神の名前入れて呪文作ればいいだけだから、その認識でも使えるから問題ないけど、イメージがかぶらないようにしないと六属性のバランスが崩れて七属性目を追加した時に安定が保てないかな。
私が使ったおまじないでは『幸運と狂気の女神』『炎と鎚の神』『水と再帰の女神』『狂信と束縛の神』『風と唄の女神』『大地と無謀の神』『万物と虚無の神』に祈ってるよ。」
「え、適当な名前って、そんなおおざっぱな話でいいのかしら?」
「らー。だいじょーぶ。
神話自体、全部一柱の神の一部分だ、っていう説もあったりするし。
あと神とか悪魔とか天使とかと魔法契約するときは、あえて一部分だけを意味するような名前で呼ぶことも多いし。
けっこー、おおざっぱ。
でも、会ったことない存在に対して願い事するわけだから、情報があることのほーが少ないとおもう。
敬意とそれなりの代償を準備することと、あんまり見返りを期待しすぎないことだけ守ってればだいじょーぶとおもう。」
「えっと、ちょっと気になったんだけどさ。
祝福の魔法が1小刻で作れちゃうってことは、呪いとかも簡単にできちゃうの?」
「らー。呪文自体は似たような感じだから、簡単に作れるー。
おおざっぱにつくるなら、祝福と逆の意味を持つ言葉で構成すればいいだけだから、いくらでも作れるよ。
ただ、悪意のある言葉はあんまり魔法書とかに書かれてない、というか、書かれているものは普通は一般人が見れるところにはおいてないんだよね。
だから、わたしの知識で構成できる呪いの種類はあんまり多くないし効果もあんまり強くはない。例えば能力封印系の呪いなら、六感のうち2つか3つくらいを一時的に能力半減する程度なら構成できると思うけどその程度。」
「えーっと。六感のうち2つか3つ半減・・・って、めちゃくちゃ強いよね。
まあ全部が自分の倍もある能力の人と戦うなら無駄かもだけど、もとが互角に近い相手なら圧勝できるよ。」
「むー。でも、呪いにかけるってのは、攻撃を命中させるってこと。
呪いじゃなくても、ふつーに刀かなんかで一撃当てれば、普通の人ならかなり弱るよね。
だから、呪いだって当たると弱る。そんなに強すぎるってことはないと思う。
もし実戦に使うとすれば練習と改良を繰り返して、どれかの感覚を完全封印くらいまでするといいかも?」
「いや、まあたしかに刀と比べるとそのくらい必要になるのかな?
刀に斬られたら普通は戦闘不能だろうしねぇ。
説明ありがとね~。参考になったよ。」
「にゃー。それならよかった。
おなかすいたー。けーきたべよー。」
「あ、そうだね。
説明のお礼に、今日はあたしがスプーンで食べさせてあげよう。
まだあたしの手から食べるのはおいしく感じるって効果はついてるんだよね?」
「にゃー。あいあとー。
たぶんその効果は消えることはないと思う―。消す必要もないー。」