どっちがパパ?
「白ちゃん、お腹とか顔とか触っていい~?」
「らー。どうぞー。」
「ありがとー。それじゃ膝の上に座ってね。」
「らー。すわるー。」
「それじゃ、触るね~。
おお、ぷにぷにしてる~。」
「えーっと。なんなのかしらこの状況は?」
「み?
はーたんのひざの上に座ってるじょーきょー。」
「そしてあたしが白ちゃんのお腹をぷにぷにしながら餌付けの準備をするべくクッキーの缶を開けてるところ。」
「・・・はやてちゃん、器用なことするわね。
って、そうじゃなくて。
どうして唐突にひざに座らせるとかお腹触るとか、そういう話になったのか、ってことよ。」
「むー。なんでだろ。」
「白ちゃんと言葉が通じるようになったんだから、触らせてってお願いすればOKもらえるかもしれないと思って賭けにでた。その結果がこれ。」
「こんなことならいつでもだいじょぶー。
わたし人間の人より体温低いから変な感じするかもしれないけど、あったかいほうがいいならがんばって体温上げるから言ってね。」
「いや、ちょーどいい感じだよ~。
がんばれば体温上げられるってのもすごいね。」
「血液に魔力流すと、人間の人と同じくらいの体温にできるかも。
制御失敗したらたぶん焦げるけど。」
「いや、体温くらいで賭けにでなくていいわよね!?
それから、はやてちゃん、餌付けって、なんて表現使ってるのよ。白ちゃんに言葉通じないわけじゃないのは知ってるでしょうに。」
「いや、餌付けのほうは白ちゃんのリクエストなんだけど。表現含めて。」
「らー。飼い主が手で食料を与えるのを餌付けと呼ぶ。間違ってない。」
「えっと。どこから訂正すればいいのかわからないんだけど。
飼い主、って、どうしてそんなことに?」
「最初に手からごはんくれた。だからみーたんとはーたんが飼い主。」
「え、それだけ?」
「らー。それだけー。」
「えーっと。
なんだか、ものすごーく、危険な分類方法をしているような気がしてきたんだけど。
白ちゃん、ちなみに、初対面で「こんにちはー」って感じに話しかけてくる人は、どう思うの?」
「むー。もしかしたら交渉相手にはなるかもしれない、くらい?」
「それじゃ、「初めまして、わたくしなんとかと申します」って感じの敬語は?」
「そのはなしかた、きらい。
だから、最低限の話で終わらせたい相手、って思う。」
「本当に簡単な分類方法なのね・・・。」
「らー。でも、分類を変えるのに必要な情報が手に入った場合は、認識をちゃんと変えてる。
だから、問題は起きない、はず。
せーかくにいうと、問題は起きるかもしれないけど、どーでもいいひととの無駄な話で時間無駄にするよりは、問題が起きたほうが傷が浅い?」
「うーん、なんか、複雑な理由がある感じ?
そーいう分類方法はダメ、って全否定するだけじゃ解決しなそうな気がするね。」
「・・・そうかもしれないけど。
とりあえず、飼い主って言うところだけは訂正させてもらうわ。
白ちゃん、人間族は、手から食べ物もらっても飼われてることにはならないのよ。もちろん、エルフも。」
「み?そうなんだ。
それじゃ、どーいう関係だと、手からごはんもらっても問題ないの?」
「両親かな?パパとママ。」
「にゃー。そうなんだ。
それじゃ、みーたんとはーたん、どっちがパパ?」
「うーん、どっちだろーなー。」
「はやてちゃん、こういう時に冗談言ってる場合じゃないわよね?」
「いや、でも、白ちゃんにだったらパパって呼ばれるのもありかなーと少し思った。」
「無しですっ。おねーさんくらいならアリかもしれないですけど。」
「おねーたん?」
「うん、それもありかもね。
って、なんでそーいうのだけ発音がビミョーに違うんだろ。通じるから大丈夫だけど。」
「むー。
本に、あんまりそーいう表現は載ってなかった。
みーたんとはーたんは、おねーたん。おぼえたー。」
「でも、実年齢考えると、たぶん私たちより白ちゃんのほうが年上のはずなのよね・・・。」
「むー。そろそろおなかすいたー。おかしちょーだい?」
「あ、ごめんね。
約束通り、手から直接いくよー。口開けて―。」
「にゃー。」
(ぽりぽり)
「このくっきー、おいしーね。」
「そーだねー。」
「・・・悩んでも仕方ない、のかしら。」
※男女同権が進んだ世界なので、『パパ』とか『ママ』という言葉は男女関係なく使われます。