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所長はかなりえらいです。

 「さて。

 フォルス、だったか。

 エルフらしき存在と会ったわけだが。」


 「しょ・ちょ・う?

 フォルス『ちゃん』ですよ?

 あんなにかわいい子にあったばっかりで呼び捨てとかいけませんよ。」


 「あ、ああ、悪い、フォルスちゃんな。

 そのフォルスちゃんと会ったわけだが。

 ・・・俺、一応上司なんだがなぁ。」


 「はい、なんでしょう?」


 「俺としては、エルフであるという前提で動くべきだと思う。

 いたずらにしては手が込みすぎているし、だましたところで手間の割に大した利益にはならないだろうしな。

 エルフに化ける魔法、なんてのはあったとしても禁呪扱いのはずだし、その呪文入手する手間考えたら普通に金稼いだ方がよっぽど早いしな。」


 「なるほどです。

 ここでも禁呪の封印場所は秘密になってますしね。」


 「・・・まあそうなんだが、秘密じゃなくてもバイトには教えないからな。普通に。

 エルフだとすると不自然なのは行き倒れていたという点。」


 「歴史書を読めばわかることだが、エルフは精霊魔法や属性魔法が使えて当たり前、らしくてな。

 布の服一枚で冬山登山しても平気なほどだそうだ。

 ということはこの町の寒さ程度でどうにかなることはない、はずなんだ。空腹にも強いはずだしな。」


 「つまり、何かの理由で、魔法が使えない状態になっていると?」


 「だろうな。

 あんなに小さいエルフが独りで人間の町に来るのはおそらく初めてだろうから、

 単にある程度の年齢にならないと使えないのかもしれんし、

 誰かに教わらないと使えないのかもしれん。

 だが、魔法が使えないレベルだとすれば、それこそ単独行動させる理由はないはずだ。」


 「そうですよね。

 しかも全裸でしたし、持ち物もありませんでした。」


 「うーむ。

 それなら、そのフォルスちゃんの仲間は壊滅してるのかもしれないな・・・。」


 「そうですか・・・。

 たしかに、仲間が無事なら、あんな状態で一人でいたりしないですよね・・・。」


 「仲間が魔法を使える状態で生きているなら、風の精霊魔法の中位魔法に『風の便り』ってのがあるから、それを使えば連絡は取れるはずなんだ。

 中位って言っても、人間の感覚での中位の難易度ってことだから、エルフからすれば簡単だろうしな。」


 「まあ連絡を取るのがまずい状態で無事って可能性もある。少しだが。

 エルフなんていうおとぎ話かなんかの存在って思われてるのが実在するなら、もっとやっかいなのがいてもおかしくない。

 通信魔法を探知してくるモンスターとかな。」


 「それは、明るい情報、でもなさそうですが、少しの望みはつながりそうな話ですね。」


 「だな。

 それでだ。

 エルフの仲間が壊滅してない可能性がある、ということは、もし出会うならできる限り友好的な関係になりたいよな。」


 「ああ、そうでしたね。

 敵に回すとドラゴン族より怖い、でしたっけ。

 フォルスちゃんを見てるとそんな感じは全くしませんけど。」


 「ドラゴン族なら怒ってなければ敵に回したやつ個人が焼かれれば済む。

 もし怒らせたとしても運が良ければ村いくつか、運が悪くても大きな街一つくらい焼かれたところであっちが飽きてくれる。

 単独の戦闘力は圧倒的だが、基本的には群れる性質はないし、もともと人間に興味は持っていないしな。

 それに比べるとエルフは、100年前がちょっと前っていう時間感覚の持ち主らしい。

 そして、敵と認めたら徹底的に攻撃する性質がある。らしい。

 その気になれば人間に化けて侵入なんて手もできるし、力押しでも数人で砦を落とせる。

 少なくとも100年間、暗殺におびえて過ごすことになるな。国単位で。」

 

 「運が良ければ村いくつか、というのも充分怖いと思いますけど、理解しました。」

 

 「そこまでは良いんだが。

 友好的な関係になりたいのは確かなんだが、うちの予算を使ってしまうと、面倒な奴らに気付かれてしまうんだよ。

 宗教とか、魔法学者とか、冒険者とか賞金稼ぎとかな。」

 

 「ああ。はやてちゃんから少し聞きました。

 つまり、逆に危険になるということですよね。」


 「残念だがそーなる。

 それでだ。

 フォルスちゃんと同居して、守ってほしい。

 お前たちはかなり友好的な関係を作れているようだし、外部の人間に行動をチェックされるほどの立場でもない。」


 「了解です。

 たしかに、アルバイターですから、いちいち外部にチェックされることはないと思います。」


 「戦闘に関しては、いざという時のために緊急用の通信魔法書を準備しておく。

 ある程度の護身術は身に着けてるよな?」


 「はい、司書術の基礎課程程度ですが。」


 「よし。

 それとだ。

 そのフォルスちゃんが望みそうなものってわかるか?

 あんまり金がかからん範囲で。」


 「えっと、

 お菓子が好きです。それに限らず食べ物は好きそうです。

 あと、本が好きみたいですね。

 まだ文字はあまり理解できないみたいですが、絵本に熱中していました。」


 「本か。

 それはいいな。タダだし。

 (さらさら)

 ほい、これ渡しといてくれ。

 ついでにお前らのも書いといた。」

 

 「第3書庫までの入館許可書!?

 私たち第1書庫のバイトですよ!?」


 「仕事中は入らんでいいぞ。

 フォルスちゃんが入りたいって言ったらついて行ってやれ。

 あと、これ持っていっとけ。」(じゃらっ)


 「袋、ですね。中身は・・・。

 銀貨?こんなにたくさん!?」


 「俺のへそくりだ。

 食費か危険手当だと思って取っとけ。あっちのにもあとで渡しておく。

 ほとんど残ってないから、追加しろって言われても無理だぞ。」

 

 「・・・お預かりします。

 お金に余裕がなかったのは確かですので、助かります。

 金額が多すぎるような気がしますけど。」


 「気にしなくていいぞ。

 失敗したらへそくりがどうとか言ってられんしな。」

 風精霊魔法『風の便り』

 『風の便りで聞いたって、彼は私に言いました。

 ならばもいちど届けてほしい、私の言葉をあの人へ。』

 風が吹いている場所で使用可能。

 音声メッセージを送ることができる。一方通行。

 成功率は距離が離れたり、風が吹きにくい場所を経由するほどに下がる。

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