食堂でおやつ
「恐ろしいことに、休日もそろそろ終わりに近づいてるわけだけど、これからどーしよっか。
あと1刻(2時間)もしないうちに夜になっちゃうから、出かけるなら近場じゃないとだめだね。」
「どうしましょうか、白ちゃんどこか行きたいところあるかしら?」
「それじゃ、図書館の食堂、行きたい。おやつたべる。」
「そだね。たまにはいいかもねー。いってみよー。」
「そうしましょう。」
・・・
「いらっしゃいませ。3名様ですか?」
「らー。3にんです。
個室、おねがいします。」
「申し訳ありません、この食堂に個室はございません。」
「み?
そーいえば、この言い方じゃだめなんだっけ。
特別メニューを頼みたいので36番席お願いします。」
「かしこまりました。
こちらへどうぞ。」
食堂入り口の2つの扉。
ウェイトレスはひとつめの扉をくぐった後、左側の壁を押し開き、隠された個室に3人を案内する。
「お待たせいたしました。
特別室『36番テーブル』でございます。
ごゆっくりおくつろぎください。」
「にゃー。ありがとー。」
「この食堂、隠し部屋なんてあったんだね。知らなかったよ。」
「まぎらわしいけど、36番テーブル、っていう名前の食堂っていうことになってる。いつものとは別。
何のためにあるのかわからないようなへやって、意外にいろんなところにある。」
「そーなんだー。
って、なんで職員やってた私たちが知らないよーな隠し部屋に気づけたの?」
「辺境図書館の持ち主の権限で、ほかの図書館の情報でも重要度があんまり高くない情報はもらってこれるよーになってる。」
「あー、そーいえば白ちゃんは図書館持ってるんだもんね。情報が手に入りやすいのも当然といえば当然か。」
「らー。いろいろ情報ある。
でも、今回は自分で来ないとわからない情報のために来た。」
「情報集め?
ここの隠し部屋になにかあるってこと?」
「あ、メニューの色が変わってる。普通のは白なのに、これは黒ね。」
「らー。あたりまえだけど、なかみのめにゅーもちがうよー。」
「なるほどー。ここでしか頼めない料理があったわけだ。」
「今回、私が払うから、なんでもすきなもの、たのんでね。
おかねけっこーたまってるから。」
「あら、ありがとう。」
「え、いいの?ありがとー。
でも、私になんでもなんて言っちゃうと本気で一番高いの頼んじゃったりするかもよ~?
たとえばこの「クリスタルシャンパン」とかー、ってなんじゃこりゃ。銀貨600枚!?」
「み?けっこーたかいのもあるんだねー。」
「・・・けっこう高い、という次元の金額じゃない、わよね?
何年かは生活できる金額よそれ。」
「説明読んでみるー。
『グラスのシャンパンに沈めたクリスタルの輝きを楽しんだ後、そのクリスタルを一流職人がアクセサリーに加工します。』・・・かな。
加工代金込みで600まい、だから、ほんとにいちりゅーなら安いんじゃないかな?そーばしらないけど。
きになるならためしにたのんでみる?」
「いやいや、そんなの怖くて頼めないよ。
給料1000日分のシャンパンとか恐ろしすぎる。
それに今回はおやつ食べに来たんだからお酒は飲まないよ。
えっと、白ちゃんが情報集めするのにちょーどよさそうなメニュー選んでもらっていい?無難なやつで。
みやっちもそれでいいかな?」
「ええ。好き嫌いはないから、情報集めに良いものでお願いするわね。」
「み?
それなら、遊撃のショートケーキと、闘志のホットケーキと、忍耐のレアチーズケーキかな?
じっさいなんでもいーんだけど。
値段も安めだし飲み物ついてくるみたいだし良さそう。」
「おお、それぞれ銅貨90枚。さっきの見た後だとすごく安く思える。」
「でも、それでも私たちの給料一日分より多いわね。」
「そのへんは、じょーほーりょーと考えれば仕方ない程度かなと、おもう。
作り方まではわからなくても、能力値強化の仕組みをみておけば、いざという時に強化重ねがけがどこまでできるかとか、今のうちに考えておけるかも。」
「ほほう、って説明されてもよくわかってないけど、白ちゃんがその料理を見れば情報集めができる、ってことかな?」
「らー。そんなかんじ。
そんなわけで、そのみっつをためしてみたいんだけど、たぶんひとつしかたべれないから、のこりおねがいしていい?」
「うん、食べるのならまかしといてー。
ところで、白ちゃんはどれがいいの?3つのうちだと。」
「むー。
どれもおいしそうだけど、一番小さそうなのがホットケーキだからホットケーキ。かな。」
「それじゃ私がショートでみやっちがレアチーズでいいね。
みやっちチーズ系好きだったはずだもんね。」
「ええ。それで大丈夫よ。」
・・・
「お待たせしました。
遊撃のショートケーキと、闘志のホットケーキと、忍耐のレアチーズケーキです。」
「にゃー。ありがとー。
ほっとけーきこっちにおねがいしますー。」
「ありがとですー。
ショートケーキこっちにお願いしまーす。」
「ありがとうございます。」
「これが90チップするショートケーキかー。
材料がすごいいいのだったりするんだろーねー。」
「ざいりょうは、ふつーのよりはかなりいいはず。
でも、値段のわけは、一時的な能力値強化効果のほうだね。
まあ今回は強化してもあと寝るだけだからあんまり関係ないけど。」
「そー言われちゃうとなんかすごくもったいないことしてるような気がしちゃうね。」
「むー。
でも、この料理で強化される能力ってそんなに多くないはずだから、そんなのに頼らないと危ない行動なら、最初からしないほうがいいかなとおもう。
場合によってはいちかばちかでやらなくちゃいけないこともあるかもだけど、そーいう状態になる前に、手札としてどの程度頼りになるのか、正確なところを認識しておくべきと思う。」
「なるほど、なんでもないときに使っておくことに意味がある、ってことね。」
「らー。そんなかんじ。
とりあえず、たべましょ。」
「そだね、いただきまーす。」
「そうね。いただきます。」
・・・
「にゃー。けっこーおいしい。
でも、能力強化の魔法をかけるときに本来のホットケーキの味に悪影響を与えてるみたいなところが難点かな。
魔法のしくみはだいたいわかったし、私は魔法解除してからたべるー。」
「そう?
すごくおいしいけどなー。魔法で味が悪くなったりするの?」
「むー。
たぶん、普通の人がわかる範囲では影響ないと思う。
普通の人なら食べた後やる気が出たり、あと足が速くなったり、手先が少し器用になったりする効果があるかも。」
「ほほう。
いい効果だねー。
普通の人には、ってことは、白ちゃんには効果なし?」
「らー。
精神に効果をおよぼすよーなのはある程度防げるようにしてるから、このホットケーキくらいのふわっとした魔法は効かない。」
「ふわっとしてるんだ・・・。」
「らー。
魔力耐性ない人でも抵抗するつもりでいればかなりの割合で防げる程度の効果しかない。」
「えーっと。
危なくはないんだよね?この効果って。」
「あぶなくはないよ。」
「危なくないのに抵抗できるの?」
「らー。
正確に言うと、どのくらい受け入れるつもりがあるかによって効果が変わってくる感じだね。
信頼しきってる場合だと効き目が少し強くなったり長く続いたりしそう。」
「へー、気持ちで違ってくるんだね。」
今回頼んだ料理一人分90チップ→3000円くらい
一日の給料60チップ→2000円くらい(物価が上がったので最低賃金も上がっています、ただし物価上昇に賃金上昇が追い付いてないので以前よりひどいことになってます)
クリスタルシャンパンの値段銀貨600枚→200万円くらい?