うれしいときにはにゃーといいます。
「おやつ完了!」
「それじゃ行きますよ~。」
「らー。」
「おはようございます、所長。」
「おはよーです、しょちょー。」
「ゆー。」
「お、どうした?
お前らが休み時間にこっちに来るなんて珍しいな。」
「エルフ拾いました。認知してください。」
「はやて、それかなり違う。
えっと、行き倒れてる子供を救助しました。
その子供が、共通語が通じない様子で、耳がとがっていることからして、
物語に書かれている『エルフ』である可能性がある、と判断しました。」
「あ、ちなみにあたしたちは、まほーのちからは全然ありませんので、幻影の魔法とか変身の魔法とかで姿を変えられてたとしてもさっぱりわかりません。
エルフの言葉もわからないので、本人に聞くこともできませんし。
よって単なる悪趣味ないたずらの可能性も否定はできないかと思います。」
「ふーむ。
まあ『覚えさせる』のは難しいが『忘れさせる』方法ならいろいろとあるからなぁ。
共通語が通じない、だけでは確定はできんな。たしかに。」
「あれでも使うか。」
(ちりんちりん)
「お呼びでしょうか、所長。」
「お、来たか。
魔道書倉庫から、27番の巻物持ってきてくれ。」
「了解しました。
お待たせしました。」
「ありがとさん。」
「魔道書倉庫って、走っても3小刻(約15分)はかかる場所だよね・・・。」
「そうね。第4書庫のもっと奥だったはず。早すぎるわね。」
「お前ら~。世の中常識外れの存在もいるんだぞ~。
常識で考えちゃいけない存在がお前らの隣にもいるだろーが。」
「ああ、たしかに、エルフいた。」
「み?」
「んでだ。
この巻物を、エルフに見せると、正体がわかったりわからなかったりするというわけだ。」
「ほれ。どーだ?」
(魔法文字がなんかいっぱい書いてあるね。読めないけど。)
(そうね。全然読めないわね。)
「ふぉるす。」
「・・・その答えか。
エルフなら名前を名乗るか、完全無視するかのどっちかだと言われてるんだがな。」
「えっと、しょちょー。
この子。名前が「フォルス」らしいですよ。」
「そうなのか?」
「私、名前、はやて。」
「私、名前、みや。」
「あた、なー、ふぉるす。」
「こんな感じ。
そしてフォルスちゃんはお菓子が好き。」
「・・・ほう。」
(ちりんちりん)
「お菓子をお持ちしました。お口に合うかはわかりませんが。」
「ありがとさん。
フォルスちゃん、だったか?」
「らー。」
「はい、って言ってるみたいです。
ちなみにいいえはにゅーでした。」
「ちょっとこいつらと話してくるから、これ食べながら待っててくれるか?」
「むー。」
「むーはわからない、の意味だと思います。
知らない言葉が含まれていたのかと思います。」
「しょちょー。
あたしらのひとりがフォルスちゃんに餌付けしといて、そのうちにもう一人が出るのがいいと思います。」
「そうか、それじゃお前がここにいてくれ。
そんでお前が別室で話を。」
「りょーかい。
白ちゃーん、おやつだよー。」
「にゃー。」
「了解です。」
巻物の内容はほとんどが『白』で埋め尽くされている中に「もしもあなたがエルフならお名前を教えていただけませんか?」という文章が入っています。エルフなら一目で内容がわかりますが、人間で一目で見抜けるのはかなり魔法文字を勉強してる者だけです。