ドワーフの集落で4
ドワーフの集落。
行商人ドワーフが銀色のやや大型のナイフを鑑定している。
向かいに座ったドワーフの少年が、その様子をじっと見ている。
行商人ドワーフが口を開く。
「・・・ただのなまくらだな。石貨3枚ってところか。」
「たしかに、この「銀のナイフ」はなまくらです。
ただし、成分を考えると、このナイフに使われている銀の量は約450グラムです。これは銀貨100枚に使われている銀の量に相当します。
まあ単なる銀塊の価値と銀貨の価値を比べれば、銀貨が高いのは言うまでもないことでしょう。
しかし、ここで使われている「銀貨」の銀の純度がどれも90%以上であることから考えると、銀貨の価値は銀の価値によって担保されているとの推測ができます。
よって、銀貨の加工に携わっている国もしくは組織の利益を考えたとしても、銀貨100枚分の銀は銀貨数十枚には相当すると私は推測します。
それをふまえて、いくらで買い取っていただけますか?」
「・・・銀としてなら、銀貨30枚だな。」
「いえ、銀のナイフとして、です。80枚。」
「そんななまくら、武器としての価値はねぇな。40枚。」
「武器としての価値は無くても「武器として売るんです」、70枚。」
「・・・45だ。」
「65。」
「50だ。これで充分だろ?」
「いえ、充分ではありません。
大銀貨5枚と銀貨10枚。」
「・・・気づいたか。」
「ここまでヒントもらえれば気付きますよ。
あなたは何度も買い取りに来て、兄貴たちの「魔剣」を買い取りもしてましたが、その時でも銀貨しか使ってませんでした。
つまり、大銀貨は、銀貨10枚あつめて交換するものではなく、あなたに認めてもらうことではじめて手にはいる物ということですね。」
「・・・今すぐこの集落を出るなら、『大銀貨5枚と銀貨8枚』だ。
一度出たら戻れねぇし、ここに残るやつとの連絡も取れねぇからな、よく考えて決めろよ。
残るなら銀貨58枚。」
「大銀貨5枚と銀貨8枚でお願いします。」
「人間の言葉を知らない状態で外に出て、やっていけると思うのか?」
「やっていける程度に能力が付かないと、『大銀貨』は手に入らない、でしょう?
それと、『今話している言葉が、人間にも通じる』と予測しましたが、間違ってますか?」
「間違ってはいないな。
会話が通じない、ってのは、駆け引きとか建前とかめんどくせぇことを人間どもはいつもやってるってだけだから。
使っている言語は同じだ。今どき共通語使ってねぇ種族なんてエルフくらいのもんだろうよ。
交渉もお前なら大丈夫そうだな。」
「安心しました。
それでは、この大銀貨5枚をお支払いして、私はこの集落を出ます。」
「おう、行ってきな。
その前に、今までのぶんの買取り金額の残りを持っていきな。
今回の大銀貨5枚の買取りが、銀貨50枚。
なまくらは全部で銀貨50枚、大銅貨50枚、銅貨100枚ってところか。これは交渉は受け付けねぇぜ。今の俺は商人じゃねぇ、ただのドワーフだからな。」
「充分です。ありがたく受け取っていきます。」
「おう、気をつけてな。」
ドワーフの集落から脱出が認められるまでの手順
1、武器を自作し、鑑定してもらう(最初に言われる鑑定結果は、基本的にどんな武器でも石貨1~5枚です。)
2、鑑定金額を聞いた後に交渉し、「銀貨50枚以上」の評価にさせる(交渉できるかを見てるだけなので、交渉できれば評価はかなり甘くなります。)
3、「大銀貨」に変えてもらう(1と2の条件を満たさないと大銀貨への両替はしてもらえない)
4、ドワーフの使っている言葉が共通語だということを説明される。スキルの「ドワーフ語」が「共通語」に変化する。(実際はもともと共通語を話していたたということを知る)。
ちなみに、スタート地点が人間が住んでいる町(村)だったドワーフは、スキルに「共通語」が最初からあります。