交渉後の情報整理と糸作り
帝国中央図書館、仮眠室。
エルフが、毛布に丸まって寝ている・・・。
「むにゅ?
むー。もうあさか・・・。
ちがうな、ねたのがひるまえだから、いまがひるすぎくらいかな?」
毛布をたたんでアイテムボックスに片づけ、床に座って目をつむる。
エルフ語を、思い出すかのように、つぶやき始める・・・。
「とっさに人間語のほうが出る程度にはこの世界の言葉に慣れてはきているようだが、時々はエルフ語、×××のほうも思い出さなくては、あちらに戻った時に社会復帰できなくなってしまいそうだな。
リハビリついでに、今回の交渉の情報を整理してみることにしよう。
まず、交渉前にあった例の4人組はまだ鎖を解けていない。あの様子では床の魔法陣の存在自体に気付いていないようだな。
魔力が見えなくても、床をじっくり見れば散らかりかたに偏りがあることに気付ける程度の変化はあるはずだし、魔力を探って魔法陣に気付くとかしてもよさそうなものだが。
あのペースだとあと10日前後で魔法陣が解けるから、その後は鎖の耐久度も落ちやすくなるはずだし、脱出までは長くて12日かな。
魔法陣に気付けなかったとしても、いろいろ解く方法はあるんだから5日もあれば解けているかと思ったんだが、意外に長くかかっているものだなぁ。」
「そしてコビットさんのほうだが。
そろそろ私が眠くなるまでの時間が短いということは理解しているだろうから、次回があるとしたら手早く聞いてくる可能性が高い。
そして、報酬を指定したことで、ある程度案を絞ってから来る可能性が高い、と。
まああの程度の金額なら、気にしないで手当たり次第に聞いてくる可能性も高いとは思うが、それはそれで情報を探れるしな。
目の前で悩まれても時間の無駄だから、今度は質問一覧でも作ってから来ることを期待しようか。
まあどういう対応をしてくるか、結果は次回会ってみないとわからんな。」
ゆっくりと目を開ける。
「例の4人組みたいなのに関しては、とりあえず、私を狙ってくるなら、今のところ問題なさそうな感じか。
この体の耐久力から考えると、近所の子供がぶつかってくるとかでも即死の危険があるわけだし。
こちらから攻撃しても問題ないという点だけでも、まだ敵として襲ってくる方が対処しやすい。
まずその程度の危険で行動を決めるならアイテムボックスの中に入って過ごさなくてはいけないくらいだしな。
・・・アイテムボックスの中に入ることはできるんだろうか?
まあ試してみるのも危険だからやめておくか。部位ごとに解体されて保存される、とかでも困るし。」
アイテムボックスに手を入れ、銀色の糸のようなものを取り出す。
「このミスリル糸のミサンガ、だったものをもとに、ミスリルからミスリル糸の作成方法を見つけて、最終的には何か装備を作れるようにしておきたいな。変なのの対策に。
まあ今でも糸だけなら再現はできそう、か。」
以前買っておいたミスリル鉱石に、魔力を一定のペースで強弱をつけながら注ぎ込む…
柔らかくなったところで、端を少しつまみ引っ張ると糸状になっていく。
糸状になったミスリルを、アイテムボックスの中から出した糸巻きに巻きつけていく・・・。
「ふむ。太さにやや誤差があるようだが、まあこんなものか。
しょせん手作業で素人が作るものだしな。
だが。やはり力押しでは作れないだろうな、この糸は。
現物を見ればすぐ再現できる程度の物だから、あるところにはあるんだろうが、逆に「見れば真似して作れる」という程度だからこそこれに関する情報は重要だな。
ランダムなチケットであのミサンガが出たのはかなり運が良かったのだろうな。そんなに簡単に出るなら、みんなミスリル以上の装備をしているとかいうことになりそうだし。
とりあえず、この糸を量産しておいて、今度つくる製品の材料にすることにしよう。」
「あとはポーションの改良もすすめておかないとなぁ。そろそろ。
いざというときに良いポーションがあれば助かるかもしれないわけだし、Aランクが安定して作れる程度までは訓練して困ることもないだろう。
まあA自体まだ完成してないんだがな。」