酒場で作戦会議
カジノ内に設置してある「トレーニングマシーン」。
カジノの客が実戦の勘を取り戻すために、何台か設置してある。
その中の一台で仮想空間内での短剣のトレーニングを終え、小人がコクピットから外に出る。
目の前に、ドワーフの女性が立っていた・・・。
「よう、コビットさん、お疲れさん。
この時間ならここにいると思ってたで。」
「あ、タヌキさんでしたか?
よくこんなところにいることわかりましたね。」
「商人の習性でな、誰がどこに行ったかはなんとなく見てしまうんや。
まあ他人にタダで話したりはせんから安心してええで。」
「タダじゃなかったら話すんですね。まあ話されて困ることでもありませんけど。」
「ちょっと話あるから、ヒマやったら来てもらってええか?」
「あ、はい、大丈夫です。」
カジノを出て、近くの酒場に入り、一番奥の個室を選ぶ。
「ここは音漏れしにくい場所やから、けっこー評判良いんやで。
酒は少し高めやけどな。半分場所代って感じや。
ねーちゃん、とりあえずエール2杯とおつまみ軽いのもってきて~。」
・・・
「さて。
掲示板ではいつも通りの感じになりつつあるわけやけど。
実際どうなん?伏兵とかの対策はできてるんか?」
「スキルポイントを使って「看破」と「発見」を強化したので、あとは当日まで毎日探りに行こうと思っています。
当日だけ行くというやり方では逆に日付を特定されてしまって危険なことになりそうですし。
あと当日は消耗品のアイテムで一時的にかばえるようにするつもりです。なにかあったら。」
「あー。なるほどな。ええと思うで。
周りに障害物少ない状況では「潜伏」や「隠密」の成功率は極端に下がるし、発見持ちをごまかすのは不可能に近いやろうな。
でも念のため、長いひも準備しといて二人で部屋の端から探って歩くといいかもしれん。
潜伏は動くと効力なくなるから、隠れてる場合動かないと引っかかるような感じでひも動かすとよさそうやね。
何もない部屋の真ん中に隠れられるほど潜伏高いやつも少ないだろーけど、まあひも一本なんて安いもんやし、試す価値はある。
隠密はふつーに発見で充分見つけられるはずや。動いてもいい分潜伏より効果低いし。」
「なるほど、それではひもも準備しておくことにします。」
「そーいうときにはうちのロープはどーや?
頑丈やから他の目的にも使えるし。10チップでええで。」
「や、安いですね。」
「いろいろと安売りの物は買いだめしてあるんや。
せっかくのアイテムボックス、使わんともったいないしな。」
「それじゃ10チップで買います。」
「まいどー。
んで、「彼女」との実際の交渉はどーするんや?」
「えっと、とりあえず、今回来るのは確定してるので、当然100%守る必要があります。
無事会えた後は、「ワープの出現位置の変更ができるか」「変装ができるかどうか」などを聞いて、できないようなら交渉決裂ということにしておいたほうがいいかなと。」
「そーやね。交渉決裂した、ってことにした方が平和かもしれんなぁ。
どー考えても、このままの状態続けるのはリスクとメリットが釣り合ってないと思う。
「彼女」からしたら、もしこっちが有り金全部渡したとしても「タダ働き同然」ってくらいにしかならんと思うし。
それ以前に「彼女」から見たらこっちが誘拐犯やし。逆になんで今回来てくれるって話になったのかがわからん、っていうレベルやろ。
逆にこっちから見た時でも、こっちは「彼女」にかすり傷でも負わせたら全員即死って感じな状態やしな。まあ自業自得ともいえるけど。そのへんは。」
「僕が軽い気持ちで情報書き込んでしまったからですよね・・・。」
「まー大ざっぱに言ってしまえばそーやけど、今更気にしても始まらんし、これからどうするかを考えたほうが良いんでないか?
まず今回守る、これが第一。
次に、今広まってる情報を一個ずつ潰していく。」
「潰す、というと、情報と違う状況にするわけですね。」
「そーやね。
前回ので完全に場所は特定されたということになるから、まず最低限「カジノがある町に現れる」、これを潰す。これは絶対やらんといかんな。
またアホが襲撃してきた場合、狭い室内ならあらかじめ伏兵探しとかしとけば防げるだろうけど、広い場所だとどうしても難しくなるしな。
それに、現時点では例の4人がいるわけだから、あの部屋で話せば全部聞こえてしまうし。」
「そうなんですよね・・・。
複数人数の護衛だして、一人が背後に立って守る、というやり方も、現時点の全く信用無い状態では逆効果ですから。」
「守りやすい立ち位置ってのは、裏を返せば襲いやすい立ち位置やからねぇ。
正直、変質者に襲われた後にその変質者の仲間が、「僕が後ろに立って守ります」なんて言って来たら何寝言言ってる、って思うで。」
「この町に「彼女」が来ないようにする、もしくは来なくなったと見せかける。
そうすれば「カジノがある町に現れる」っていう情報は潰せますね。」
「そーやね。
あとは「幼女」と「足が遅いかもしれない」と「魔力が高い」だったか。」
「それと「図書館で本を読んでいるらしい」ですね。」
「んー、まあ図書館は趣味で通ってるんやったらどうにもならんかもやけど、姿に関しては変装してもらうとかやろか。
魔力は、使わなければわからんか?」
「人物鑑定スキルを持っている人の場合、ある程度低い数値なら強さが大ざっぱにわかります。
逆に、強さがわからない場合はある程度以上強い、ということが分かってしまいますね。
僕の鑑定能力だと能力値まで見れるのは「全体的にかなり弱い人」だけなので実用性はありませんが、鑑定レベルが高い人なら見破れるかもしれません。
実際、「彼女」は僕の能力を簡単に解析した、らしいです。」
「鑑定レベル低いみたいなセリフやけど、その鑑定で種族名出たっていってたやろ?
それなら魔力隠しても仕方ないと思うで。
まず鑑定もち以外には見破られないようにする、鑑定もちには鑑定される状況自体を避けることやね。
見た感じでエルフだってわからん程度の変装できればかなりのところは防げるんでないかな?」
「あ、そうかもしれませんね。
僕のレベルだと、一人を見るのに何秒かはかかりますし、手当たり次第に使えるほど気力消費が少ないわけでもありませんし。」
「まあそのへんは本人に聞いてからの話になりそうやけどな。
「人間ごときのまねをするなど~。」って言う感じの種族な可能性も否定はできんし。」
「なるほど、変装できるかの前に変装することに問題がないかを聞かないといけないわけですね。」
「そんな感じやと思うわー。
あ、これが本題やったわ。忘れてた。
手土産持ってくなら、植物は避けたほうが良いんでないかなと思う。個人的な意見やから無視してもええけどな。」
「エルフって植物が好きだと思ってましたけど、違うんですか?」
「いや、植物好きな所まではあってると思うんやけど、どういう意味で大切にしてるかって言うのが現時点ではわかってないんや。
もし家族として、とか、守り神として、とかだったら、植物類プレゼントってのは地雷にしかならんと思う。
現状、そんなギャンブルできるほど余裕ある状態でもないやろ?」
「そ、そうですね。
植物は避けることにします。」
「あと、マリアさんの種族名はタダでは話さんから安心してええで。
口止め料ならいつでも受け取るけどな~。」
「・・・え!?」
「ははは、冗談や、それじゃな~。」
タヌキさんは「話術」スキルが高いので、情報を聞き出す成功率が異常に高いです・・・。