おいしいらしいです
(ぱくぱく)
「あ、回復してるわね。」
「回復してるね。しすぎだね。
相当な小食だよこれ。
たぶんだけど、すごく体力低いと思う。
そしてやっぱりかわいい。小動物っぽい。」
「次言ったら喉に穴が開くわよ?」
「言ってない、飼いたいとか言ってない。
思ってるけど言わない。」
「思ってはいるのね・・・。」
「ときめく心は変えられないのよ。
銀髪青い目で華奢で小さい。その上エルフよエルフ。
抱きしめたいとかくらいならセーフだよね。」
「えっと、実際やらなければまだセーフかしら?」
「・・・とりあえず話変えて、この子に自己紹介でもしとこか。
言語が違っても、単純なことなら通じるかもだし。」
「あたしの名前ははやてだよ。
私、名前、はやて。」
「私の名前はみやです。
私、名前、みや。」
「・・・ふぉるす。」
「フォルス!?」
「え、はやて、何か知ってるの?」
「うん、読んだことがある。
『フォルス』、こっちの言葉で言うと白は、魔道書作成の基本単語。そして最も重要な単語よ。
よいこの入門書シリーズ、『よいこのまどうしょさくせいにゅうもん』
児童書の棚にあるやつで読んだわ!」
「そんなのあるの!?
しかも児童書!?」
「司書検定受けるための勉強にけっこー便利なのよ。よいこの入門書シリーズ。
全部読むのに1年くらいかかるのが難点だけど。」
「フォルスってのは「魔力の沈静化」に使われる言葉でね。
危険な魔道書、って危険じゃない魔道書なんかないけどさ。
魔道書の暴発を防ぐために空白部分全部フォルスの文字で埋めるのよ。魔法文字で。
魔道書は特定の規則的な単語のつながりで魔力を持っちゃうから、繋がりを断ち切るための単語を挟むことで暴発を避けるってこと。」
「こっちの言葉で言うと
雷が フォルスかフォルスみフォルスなフォルスりフォルス って感じになるかな?」
うわぁ、一文字のはずが長文に・・・。
「ただし、そのフォルスは発音が同じだけど表記方法が600以上あってね。
しかもあんまり同じ表記を使うとそれはそれで暴発しちゃうし、組み合わせの相性とかもあったりするしで。
かなりの解読能力がないと、『フォルス』なのか本来の呪文かすらわからないといわれてるの。
書くのは読むよりもっと難しいだろうね。」
「だから、名前が『フォルス』ってことは、
おそらくこの子の名付け親が魔道書作成の職人さんか、魔導師ね。
まあ魔道書作成の職人さんのことも魔導師っていうこともあるから、まとめて魔導師でいいかもだけど。
んで、重要単語『フォルス』を子供のうちから使い慣れさせるために名前にしちゃったと推定できる。」
「なるほど。
名前ひとつでそこまでわかるのね。
それにしても、よくそんなとこまで覚えてるわね。」
「まほーにはあこがれがあったのよね~。
才能が皆無だったからこういう仕事についてるけどさ。
まーそんなわけで、とりあえず白ちゃんと呼ぼう。白いし。」
「いや、たしかにものすごく白いけど。」
「まほー関連の話するとき、フォルスって何度も言うことになるから、かなり紛らわしいしね。
フォルスちゃんが良ければ白ちゃんって呼ばせてもらっていいかな?」
(ぽりぽり、ごっくん)
「あ、聞いてない。っていうか通じないよね。
お菓子おいしいかな?」
(にっこり)
「おいしいらしい。」
「通じてるような通じてないようなって感じね。」