大掃除
第777小図書館、受付の部屋。
見える物は、扉が2つと小さな机とイス。そして、ゴミとホコリの山・・・。
2人がほうきを持って掃除をしているようだ・・・。
「そろそろまた袋たまってきたなぁ。
ゴミ入った袋はアイテムボックスに回収しとくわ。
そんで、また新しい袋を一束おいとくな。」
「ありがとうございます。
袋こんなに使うとは思ってなかったから、持ってきてもらえて助かりました。」
「いや、お礼言うのはこっちやで。
袋の代金、みんなマリアさんが払ってくれとるんやし。
しかもあんなぼったくり価格で。」
「あら、実際の値段より高かったんですか。」
「こっちも商売人やからな。仕入れ値と同じ値段では売らんことにしとる。そーしないとスキル上がらんしな。
とはいっても、今この街で買おうとした場合うちが言った値段よりかなり高くなるはずやから、損はさせてないはずやで。
まあ袋の代金全部払わせとる時点でどうかと思うけど、マリアさん自分で払うって言いだしたんやしな。
でもあんなこと言わんかったら割り勘かうちが払うことになってたで?良かったんか?」
「ええ。その点は問題ありません。
原因になったのが私ですから、もともと私一人でやらなくちゃいけないようなことですし。この掃除自体。」
「それはちゃうと思うで。
自分から言い出したわけなんやから、自分で言ったことはやるのが当然や。
別に最初っからやりたくなければやる言わなければいいだけやで。
それに、まだ昼前ってことは、言いだしたのはマリアさんではないってことなんやろ?この掃除。
ってことは、あと一人は最低限くるわけやね。」
「はい、そのはずですね。
最初の書き込みの人と、あともう一人、お昼すぎにくるはずでした。掲示板書き込みからすると。」
「そーいえばそんな書き込みもあったか。
ってことは4人は最低そろう予定か。
突発なわりに、けっこー良い感じにそろったんでないかな?」
「そうですね。
この町にいた人、けっこう多かったんですねぇ。」
「この町は、食えないほどまずい物出す店は少ないし、宿が高いって言われてるのも大部屋雑魚寝の宿がないから言われてるだけで相場自体はけっこう安めやからなぁ。
まあ日本にいた人で野宿やら大部屋に耐えられる人はそんなに多くないだろーし。予算がそこそこあるなら良い町やで。
金稼ぐ方法があんまりないのだけが欠点やね。物価安いってことは高くは売れんってことやし。安全だからカジノなんて商売やるんだろーから、戦いとかで稼ぐのはそれこそ無理やろうしな。
まあプレイヤーならそこそこ資金も残ってるだろーし、この町にいる人もある程度いるんでないかな?」
「なるほど、参考になります。」
「まあそんなわけで、ひょっとしたらたくさん来るかもしれんね。
とりあえず、昼まではのんびりやってこか。
こんなとこで喉やら肺やら痛めてもしゃーないし、適度な休憩入れんといかんよ。」
「はい。お言葉に甘えて、少し外に出てきます。」
「ごゆっくりー。」
・・・
「5人集まったわね。」
「とりあえず、予定のメンバーはそろった、かな?」
「せっかく集まったわけだし、自己紹介してみない?
あ、もちろん話しても問題ない範囲でね。
私は寝る狐と書いてネコ。見てのとおり獣人族。
掲示板で昼過ぎから参加しますって書き込んだのが私よ。」
「キツネなのか猫なのかわからん名前やね。
見た感じは猫耳っぽいけど。」
「猫に見える?キツネが化けてるかもしれないわよ?」
「そういわれると、きつねかたぬき持ってこんとわからんよーになるな。
難しい問題やね。」
「その発言、関西人の気配を感じるわね。」
「当然や。こちとらちゃきちゃきの偽関西人やで。」
「代々偽物なの!?」
「そーやで。
あいきゃんすぱーくぶろーくんかんさいべーん。」
「英語部分もブロークンね。」
「そりゃそうや、偽関西人にしゃべれる外国語は日本語だけって決まってるやろ。
って、ちょっと調子に乗りすぎたか。他の3人が話に混ざれてないな。
ツッコミとボケがそろうと話長くなるのが世界の常識とはいえ、今は無駄話するときでもないわな。
うちの名前は、とりあえず「タヌキ」にでもしとこか。せっかくだし。
うちのキャラ名ちょっと恥ずかしいしなぁ。
短時間の遊びならロールプレイするけど、24時間あの名前呼ばれるのはつらいんや。
ちなみに種族はドワーフ女。
ドワーフやけど戦闘は期待せんといて。弱いから。
スキル的には職人と商売人の半々って感じやね。
そんじゃ次の人どーぞ。」
「僕は「ケンジ」、人間で男、忍者、です。
掲示板の掃除しようって書き込みした、しました。」
「日本人な名前やね~。
リアルネーム入れてるんやったら、今度からはやめといたほうが良いかもしれんよー。
まあ次があればやけどね。
あと、敬語とかは面倒なら普通にしゃべって大丈夫やで。」
「ありがとう、それじゃ、普通にしゃべるね。
掲示板ならていねいな言葉に直してからしゃべれるんだけど、すぐにはでてこない。」
「うんうん、声質がコビットさんと似てるから、どっちも丁寧にしゃべられるとわかりにくいしなぁ。」
「そーいう理由なんだ・・・。」
「まあお互い楽ってことでええやん、細かいこと気にしてるとアレになるで。」
「あれって何?なんか怖いよ。」
「特に意味もない軽口やからスルーしといて―。
んじゃ次の人どーぞー。」
「えっと、私はキャラ名「マリア」、掲示板の「医者募集の人」です。」
「僕はキャラ名「コビット」、掲示板の「情報提供者」になるのかな。
エルフさんと出会った情報書いたものです。」
「いやー、二人が来てくれたから、安心して動けるなぁ。
苦労して掃除して、全然違う街だった~なんてオチはあんまり笑えんし。」
「そうですね。
ここの掃除、ものすごく大変そうですしね・・・。
いったいどうやったら、ここまでゴミがたまるんでしょうか・・・?」
「テレビでときどきやってるゴミ屋敷、みたいな感じですよね。
散らかす人もいないはずなのに、こんなにたまるのはおかしいような気がするんですが・・・。」
「自動で散らかる、とかあるかもしれませんね。」
「そりゃ怖いなぁ。
まあとりあえず、大ざっぱな自己紹介も終わったところで、そーじ続けよか。
5人いるんやから、一人が袋を開けて構える。一人がほうきでゴミ入れる、一人が縛って、一人がかたす。そんでうちが後ろで応援する。完璧やね。」
「違うでしょ。
タヌキさんがゴミを袋に入れて縛るところまで。そして4人でタヌキさんを次のゴミのところまで運ぶ。これこそ完璧よ。」
「くっ、ちょっとええかなとか一瞬考えてしまった自分が怖い。
って、こんな話してる場合やないんやね。
真面目に言うと、アイテムボックスあるわけやから、普通に持ち上げられるようなゴミはそのままアイテムボックスに。
ほこりなんかの、持てなそうなもんだけ袋に入れて袋ごとアイテムボックス、でいいんでないかな?」
「それがよさそうね。」
「そうですね。」
「了解です。」
「わかった。」
・・・
「はい、この袋もいっぱいになったから置いておくわね。」
「ほい、次の空ゴミ袋を出しとくな。」
「ねぇ、ちょっと気になったことがあるんだけどさ。」
「ん?ケンちゃん、どーしたん?」
「できればケンちゃんはやめてほしいなぁ。ケンジだよ。
このゴミとホコリの山、さっきから減ってないよね。
なんだか補充されてるみたいに。」
「そーいわれてみればそんな気もするなぁ。
そろそろ大ざっぱなゴミ集めは終わってもいいくらいにあつめてるはずやしな。」
「たしかに、不自然に多いわね。ゴミ。
一袋いっぱいになるごとにアイテムボックスに片づけてるから見た感じはわからないけど、かなり集めてるはずなのに。」
「・・・念のため、それぞれ1袋ずつ、ゴミが入ってるほうのゴミ袋をアイテムボックスから出してみましょう。
集めたはずのゴミが、また部屋に自動で戻る仕掛けとかでも困りますし。」
「うわぁ、そんなんだったら大変やなぁ。
でも、早いうちに確かめといた方が安心やね。
台無しになった時でも、早めなら傷も浅いし。」
「それなら、一度ここで確認した後、この部屋を出て、さらにもう一度確認したほうが良いかもしれないわ。
この部屋に幻覚を見せる罠がある、とかいう可能性も無いとは言い切れないから。」
「うわ、それも怖いですね。
「もともと散らかっていないのに、散らかっているという幻覚を見ていた」とかだったら、今回の掃除計画根本的に無駄ですしね。」
「このホコリが幻覚だったら、って、重さもしっかりあるんだけど、こんな幻覚ってあるものなのかな?」
「スキルはある程度を越えるとかなりな効果持ってるらしいから、重さもある幻覚、くらいなら普通にありそうな気がします。
ファイヤーボールとか撃てる人がいる世界だし、幻覚に重さがある、くらいならまだまだ普通の領域じゃないかと思います。」
「ああ、言われてみれば、あれは普通に燃えるしね・・・。
幻覚とかいうレベルは超えてるか。」
「なんやかんや言ってても始まらんし、まずはゴミ確認しとこか。」
(ごそごそ)
「うん、うちのは入ってた。ゴミ。」
「私のゴミ袋にも入ってました。」
「僕のにも。」
「そんじゃ、いったん脱出してもう一度確認やね。ゴミ袋。
この部屋めっちゃ空気悪いから、ついでにちょっと深呼吸してくるわ。」
・・・
「うん、外に出てもゴミ袋の中のゴミはそのままね。」
「ということは、部屋を出た時点で一からやり直しってことは無くなったのかな?」
「いや、集めたもの自体が消えるパターンは回避できただけやね。
無限に補充される、とかいう恐ろしいパターンもまだないとは言い切れん。」
「あ、そういえば、コビットさんって、鑑定スキル持ってるはずですよね?
鑑定スキルでエルフ見つけたって言ってましたし。」
「あ、はい、持ってます。人物鑑定なら。」
「その鑑定で、さっきのゴミの山のあたりを調べてもらっていいですか?
もしかしたら、散らかり度とか、ごみの残量とかがステータスで出るかもしれません。」
「ゴミは人物じゃないんでないか?」
「いえ、人物鑑定は鑑定の上位スキルだから、物の鑑定もある程度はできるはずです。たぶんですけど。」
「おお、それならお願いしてええかな?」
「わかりました。ちょっと見てきますね。
・・・1645、でした。散らかり度。」
「多いのか少ないのかよくわからんなぁ。たぶん多いんだろーけど。
とりあえず、見てる間にどんどん増えてる、とか、そういうことはないってことでええかな?」
「あ、はい。
今のところそのままです。」
「それなら、またある程度集めてから確認してみましょうか。
どの程度集めれば終わりそうか、見当が付けばやる気も出てきそうですし。」
「やる気が出るくらいの量ならええけどなぁ。
あ、袋は山ほど仕入れてあるから、袋なくなる心配はとりあえずしないでも大丈夫やで。
あとはスポンサーさんの資金やけど。だいじょぶ?言ってくれれば半分出すからな?」
「ええ。まだまだ想定の範囲内です。どんどん続けましょう。」
今回の掃除のメンバー
「ネコ」獣人族(女)。猫耳ついてます。
「タヌキ」ドワーフ族(女)。商人+職人?
「ケンジ」人間(男)。忍者。かなりの高身長です。忍者なのに目立ちそうです。
「コビット」小人族(男)。感覚極振り。
「マリア」吸血鬼?(女)。今回種族は秘密にしてます。