幸運の町7
ゴーレムの残骸と硬貨の山は『回収』によって姿を消し、ゲームの本体部分は何十年も放置された機械のようにボロボロになっていく・・・。
「み?
ふるくなった。
ほんとはもともとこのくらいふるかったんだろうなぁ。
ごーれむがこわれるまで、こわせないようになってた?」
「・・・驚いたね。
まさか、あのからくり人形が本当に壊せるものだとは思わなかったよ。」
スロットの台の陰から、腰が曲がった老婆が現れた。
「み?
こんにちはー。」
「こんにちは。
いや、挨拶なんかどうでもいいんだよ。こいつらの壊し方、わかったのかい?」
「たぶん、たいきゅうりょくをぜろにすれば、こわれるよ?」
「そりゃからくりなんだから耐久ゼロになれば壊れるだろうけどね。
どんな攻撃してもゼロにできなかったんだよ。こいつは。
固いだけならともかく、傷つけてもすぐに直っちまうんだ。」
「さっきののばあい、げーむないようのじてんで、ごーれむのたいりょくをへらせるようになってた。
ぜんりょくしょうぶで、かてば、ちょーどこわれるよーになってるのかも。」
「あれにゲームで勝ったのかい!?どうやって?」
「げーむのこたえは、じぶんでさがすほうがたのしいって、くろがいってた。
だから、ひみつ。」
「秘密かい。まあしかたないね。これ以上詮索したりはしないよ。
もしほかの人形も壊す方法がわかるなら、できれば壊してもらえるとうれしいんだけどね。」
「むー。
あとなんこかは、こわせる、かも?
でも、きょうはそろそろかえる。こんどきたとき、どれかためしてみるかも。
いつくるかはわからないけど。」
「ああ。いつでもおいで。
せっかく1台分場所が空くことだし、そのスペースにもう1台運ばせておくよ。」
「らー。
どんなのふえるか、すこし、たのしみ。
それじゃ、ばいばい。」
ゲームセンターから外に出て、周りを見渡す。
「きょうもだいじょうぶそうなかんじ。
それじゃ、さいしょのとしょかんまで。」
『転移門』
・・・・
「とーちゃく。
ふたりがかえってくるまで、かみんしつで、おひるねしてよーかな。
このからだになってから、ねむくなるとすぐいしきがなくなっちゃうよーになった。
せいしんがひくいから、なのかなー。やっぱり。」
「くぅ。」
・・・
「ただいまー。」
「白ちゃん、ただいま。」
「おかぁいー。」
「今日も本読んでたのかしら?」
「ほんはよんでない。おひるね、した。
あ、それと、かじののまちで、すこしあそんできた。」
「あ、今日もカジノ行ってたんだ。
なんかおもしろいのあった?」
「このまえやったげーむで、かってきた。
なんだかいろいろ、しょうひんでたみたい。」
「おお、すごいね~。
大儲け?」
「むー。どーだろう。
しらないこいんがいっぱい、よくわからない。
とりあえず、いちまいずつだしてみるね。
あいてむぼっくすー。」(じゃらじゃら)
「おお、なんかいろいろだね。
えーっと。まず、これは普通の銀貨、こっちは大銅貨、これが銅貨。
ここまでは普通にわかるね。」
「そして、この2種類はおそらく大銀貨ね。
どちらも1枚で普通の銀貨10枚分の価値なはずよ。」
「うわ、石貨がある。銅貨の10分の1だっけ?今は使われてないはず。
作る手間のほうが、価値より高かったってやつだね。」
「え、これ、ひょっとして金貨?
本当に存在したのね。金貨って。」
「うわぁ、金貨っていくらだったっけ。時価?
たぶん大銀貨よりは高いよね。」
「大銀貨よりは高いでしょうね。」
「つまり、今出した分だけで、すくなくとも銀貨31枚分はあるってことかな。大儲けだね~。
他にもよくわからないコインいっぱいあったし。」
「さんじゅういち。
けっこー、たかかったね。」
「あれ?
指輪があるわね。これも賞品かしら?」
「たぶん、ごーれむがつけてたのがおちた?
しょーひんあつかいでいいはず。」
「指輪とかだと、呪いの装備とかもありそうだし、付けてみる気にはならなそうだねぇ。」
「み?
みれば、まほーとかのろいかかってればわかるよね。」
「あ、そーいわれてみればそうだね。
魔力が見えればある程度わかるのか。思いつかなかった。」
「むー。
なにかのまほーがかかってるのはまちがいないとおもう。」
「それなら、とりあえず保留しておいた方がよさそうだね。
良い魔法かもしれないし。」
「らー。そうする。」