幸運の町4
早朝。帝国中央図書館、仮眠室。
アイテムボックスから出した食料で、朝食を食べている・・・。
「ちょっとだけ味が濃いけど、おいしいわね。」
「あ、この串焼きもおいしい。
このレベルの食べ物が2~3チップくらいだっていうんだから、カジノの町はすごいなぁ。」
「そのぶん、やどとか、こーつーひとか、おさけとか、たかいらしい。
わたしはかんけーないけど。」
「ああ、魔法陣移動だもんね~。
宿も交通費も関係ないか。」
「らー。
つかうのはまりょくと、とびらあけるときのたいりょくだけ。
たいりょくはけっこーつかう。」
「魔法陣の扉って、けっこー軽かったと思うけど?」
「わたしのちからがよわいだけ、だね。
もーちょっととびらがおもかったら、とおれなかったとおもう。ほかのひとにおしてもらうわけにはいかないみたいだし。」
「ああ、二人目にとってはただの壁になっちゃうんだよね。」
「らー。
だれかにあけてもらっていっしょにはいる、とかはできないみたい、だね。」
「そーいえばさ。
前回みたいに帰った後寝ちゃうことがあるんだったら、もらったほーの図書館に出口作ったほうが良いんじゃないかな?作れるんだったら。
あんなとこで寝たら、踏まれそうで怖いと思う。」
「良いかもしれないわね。
あっちの図書館なら、疲れた時のためにあらかじめふとん敷いておくことだってできるし。」
「にゃー。それはいいかも。
わたし、ねむくなったら、すぐねちゃうからなぁ。
こんど、おふとん、かってこないと。
でぐちのまほうじんはもともとあっちのとしょかんにもあるから、かえるときにそっちにつながるよーにまほうじんつくればいいかんじ、かな。
とりあえず、てんいもんさくせいー。」
空中に魔力で文字を描き、魔法陣を描き、扉を描く。
空中に描かれた扉に手をかけ、ゆっくりと押し開けていく。
「それじゃ、いてきまーす。」
「いってらっしゃい。」
「いってらっしゃーい。
・・・それじゃあたしたちも仕事行きましょか。」
「そうね。行きましょう。」
・・・・
扉を通り、カジノの街の図書館受付まで移動した。
ハンカチで口を押さえながら、ホコリを吸わないように、急いで外に出る。
「むー。
あのへやのごみ、もーちょっとなんとかならないかなー。」
建物から出て、広場で深呼吸する。
「シロちゃん、おはようございます。」
広場の端から、小人族の青年が走ってくる。
「み?
こびっとさん、おはよー。」
「もしおヒマだったら、少し質問してもいいですか?」
「ひまじゃない。
でも、いりぐちまであるいてるあいだだったら、きいてもいいよ。こたえるかはわからないけど。」
「ありがとうございます。
それじゃ、歩きながら質問させていただきます。」
「らー。どうぞー。」
二人ならんでゆっくり歩き出す・・・。
「もしかしてだけど、シロちゃんは『プレイヤー』ですか?」
「み?
きいたことないことば。
はつおんちかいことばだと、「いのる、ひと」?
しゅーきょーよーごとかかな?」
「それじゃ、『東京』『日本』『スキルポイント』『ロストスピーシーオンライン』。
この4つでわかる言葉ってありますか?」
「ぜんぶわからない。
はつおんにてることばなら、
ひとつめは、「ひだり、おおきい」?
みっつめは「はやい」?
ほかのは、にてることばもおもいつかない。」
「僕たち『プレイヤー』は、『中央都市』に行く方法を探しています。
心当たりはありませんか?」
「み?
ぼくたちってことは、「ぷりあやー」は、なにかのだんたいのなまえだったのかな?
「ちゅにげらま」ってどこだろう。けんとうつかない。」
「え?プリアヤー?チュニゲラマ?」
「み?
わたしには、そうきこえたけど。ちがうの?」
「えっと、全然違う、はずです。
・・・翻訳機能に、なにかの細工がくわえられているのかな?」
「そーいうこともあるかも。
すきるがたりないものは、つたわらない、とか。ありそう。」
「誰に聞いても見つからないわけですね・・・。
えっと。
できれば今度お時間があるとき、相談に乗っていただけるとありがたいのですが。」
「ひまなとき、ないなぁ。
あそんだりするけど、それはそれでいそがしーんだよ。
ぐーぜんあったら、いまみたいにあるくあいだだけならそうだんのれるかもだけど。」
「ありがとうございます。
『掲示板』で『プレイヤー』の仲間に、「あの種族」の方と会えた、と伝えてもいいでしょうか?」
「み?
でんごんばんみたいなものかな?
つたえてもいーですよ、もともと、そーいうのけんとうつくひとなら、ひとめでわかるていどのかっこーしてるし。
あ、でも、わたしのなまえは、おしえないでね。
めのまえでへんなはつおんでよばれるのは、そのばではつおんへんだっていえばいいけど、べつのところでへんなはつおんでつたわったら、しゅーせーしようがないから。」
「ありがとうございます。
会った場所についての情報と、名前は出さないようにします。」
「いりぐちついた。
それじゃ、あそんできます。」
「え?
入り口、ありますか?」
「み?
ここにあるけど。」
「壁、ですよね?」
「むー。
とくていのひとにしか、みえないようになってるのかな?
とりあえず、いってきます。」
扉を開き、建物の中に入る。
「壁、だよなぁ。」
壁を押したりたたいたりしているが、感触も見た目も、間違いなく普通の壁である・・・。