幸運の町3
カジノの裏の「ゲームセンター」から出て、図書館の方向へ歩いていく・・・。
「あれ、もしかして、きみ、エルフ族!?」
「み?」
振り向くと、かなり小柄な男性が、驚いたような顔で立っている。
「・・・すこしちいさいひと。
わたしよりはかなりおおきい。
こんにちはー。」
「あ、こんにちは。
ごめんね、驚いたもんだから、急に変なこと聞いちゃって。」
「みわけつくひと、おどろくかも。それはしかたない。
エルフだけど、エルフじゃない。」
「え?同じに聞こえるけど。
どっちもエルフだよね?」
「はつおん、ぜんぜんちがう。エルフにとっては。
いみも、にんげんにたとえると、「にんげん」と「へんなかおしたさる」くらいちがう。」
「あれ、そんなに違った意味になっちゃってるんだ。
失礼なことを言って申し訳ありませんでした。」
男性は深く頭を下げた。
「たぶんにんげんにはわからないちがい?きにする、いらない。
でも、ほかのエルフなら、おこるかも。
わたしもにんげんのことば、まちがいおおい。おしえてもらえるとうれしい。」
「そうですね。僕には二つの発音の区別が全然つかなかったので、これからは使わない方がよさそうです。
でも、あなたの『人間語』の発音は、普通の発音に聞こえます。」
「きをつかう、わかるけど、ぜんぜんはつおんちがってる、わかってる。
にんげんのことば、むずかしい。」
「あ、僕は翻訳されたの聞いてるので、その時に発音も修正されたうえで翻訳されてるのかもしれません。」
「・・・ああ、ほんやくの、なにかつかってる?
ちいさいにんげんとおもってた、けど、こびとぞく?」
「あ、はい。
小人族の「コビット」です。」
「『こびとぞくの、こびっとさん』。
あってる?」
「はい。問題なく伝わっています。」
「私、名前、「フォルス」。
にんげんのことばで、「しろ」?」
「シロさん、で、発音間違っていませんか?」
「むー。
しろ、のぶぶんは、まちがってない。
あとについたなにか?
それがなんかねちゃっとしたかんじ?すごくいやなかんじにきこえる。」
「それじゃ、シロちゃん、シロ君、シロ様、いやな感じしない呼び名この中にありますか?」
「さいしょのかな。ふたつめはねとっとしてて、みっつめはぐにゃっとしてるかんじ。」
「それじゃ、シロちゃん、と呼んでいいですか?」
「らー。それでいいです。
ねむくなってきた、かえります。
あしたかあさってに、たぶんまたくるかも?」
「あ、ちょっとまって!」
「み?
わるいけど。いま、ものすごくねむい。
がまんしてかえらなくちゃいけない、つらいの、すごくつらいの。
むー。だめだ。とびらまでもたない。つくる。」
『開け。』
『詠唱省略・転移門』
「それじゃ、
たぶんさわるとしぬから、はなれたほーがいいよ。
さよならー。」
見えない扉を開けるような動きをした後、その扉を通って姿を消した…。
・・・・
帝国中央図書館、第一書庫。
床に、エルフが横になって熟睡している。
「あら?
白ちゃん、こんな所で寝ちゃってるわね。」
「くぅ。」
「そだね。
白ちゃん、ただいま、こんなところでねたらかぜひくよ~。」
「むにゅ、もーたべれない・・・。」
やっと白ちゃんがプレイヤーと初遭遇しました・・・。