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幸運の町1

「たらいー。

もらったとしょかんのまほーじん、なおしてきたー。」


「おかえりなさい。」


「おかえりー。

 ちなみに、どんな感じの魔法陣にしたの?」


「えっと。」

『2つの扉には「魔法陣隠蔽」「破壊防止」「施錠」など、本には「盗難防止」「自動修復」など、床には「快眠」「疲労軽減」「魔力供給」などです。

以前設置されていた「召喚」「魔力吸収」「監禁」「蠱毒」「斬首」などは再現していません。』

「これで、すこし、まもれる?

 まあぜったいにこわれないってわけじゃないけど。

 まほーはどうしてもあるていどのじゃくてんがある。」


「へー、そうなんだ。

 不思議な力で何でも解決、ってわけにはいかないのか。」


「えーっと。

 たとえば、にんげんをつよくするまほうがあったとして、いちじてきにだれかのちからをつよくしたい、とかなら、すごくつよくなるまほーがつくれるけど、

 ちからもつよく、あしもはやく、からだもがんじょーに、とかよくばっちゃうと、ちょっぴりしかつよくならないかんじ?

 だから、たてものとかのぼうぎょまほうも、「かぎあなのこじあけにはすごくつよいけど、はんまーでたたくとふつうにこわれる」、っていうふうに、ひとつだけのぼうぎょにぜんりょくつかうか、「ぜんたいてきにすこしだけがんじょう」にするかにわかれるかんじ?」


「そう考えると、防御側がすごく不利なんだね。そーいう泥棒防止とかで言うと。」


「らー。

 だから、いちばんきょーりょくなわざをつかって、「なにかしてきたばあいはなんとかをつかってはんげきする」みたいなしかけにしておくのがいちばんかんたんかも?

 そのほうほうなら、じぶんのとくいわざがあいてにつうようするれべるならそれなりにはこうかがあるんだから、わるくないとおもう。

 わたしのばあいはとくいわざとかないからむりだけどね。」


「なんかいろいろなの使ってた気がするけど、その中のどれかが得意、ってわけじゃないの?」


「らー。

 なんとなくつかってるだけだし、どれがつよい、とか、ぜんぜんわかってない。」


「ということは、今回しかけたのは「全体的にすこしだけ頑丈」って感じの防御、ってこと?」


「そんなかんじ。

 まあよみおわるまでもってくれればいいわけだし、いいんじゃないかなー。」


「あら、読み終わるまで、だけでいいの?」


「らー。

 ほん、こっちのとしょかんにもいっぱいあるからよむほんがなくなるってこともなさそうだし、よみかえすひつようがあるほんってあんまりなさそう。

 だから、よみおわったほんは、しょちょーにかいとりしてもらうけいやくにしてある。

 ほんがすくないほうが、まほーじんのまりょくしょうひもへるしね。」


「なるほどー。

 読まない本おいてても仕方ないか。」


「らー。おきゃくもたぶんこないし。」


「そーいえば、あたしたちは今日普通に仕事なわけだけど、白ちゃんは昼間何する予定?」


「きょうは、かじののまちまで、いってくる。

 とびらで、かじののまちにつながってるのあったから。」


「カジノの町?

 カジノって、子供でも遊べたかしら?」


「無理なんじゃないかなー。

 行ったことないからわからないけど。」


「ぼーけんしゃだからだいじょぶ、かも?」


「いや、それ子供冒険者の登録票だし。

 子どもあつかいされるのは変わらないんじゃないかな?」


「むー。

 やっぱりそーかな。」


「あ、でも、遊べなくても、カジノある町って食事はすごい安いらしいからご飯食べに行くにはいいかも。

 旅費かからないしねー。魔法陣移動だと。

 それに、カジノある町は、ふつーの町よりよっぽど安全なはず。ちゃんと巡回とかいるしね。」


「にゃー。ごはんやすいのはいいこと、だね。

 それじゃ、まわりみながらごはんたべてくる。」


「はじめて行く町なら、ポーションと保存食と、あと銅貨を少しは持って行った方がいいわよ。

 カジノがある町はすごく安全なはずだけど、食べ物買うのに銀貨出すと少し目立つから。」


「らー。

 おつりでもらったどうか、けっこーたまってるから、それもっていってみる。」


「いってらっしゃい。

 私たちはいつも通り仕事行ってくるわね。」


「らー。

 いってらっしゃい。」




第一書庫の柱の前に立った。

魔法陣が、目立たないように魔力文字で描かれている。


「えっと。

 このまほーじんでいいはず。」


「まず、つうこうきょかしょをだして、と。」


魔法陣が形を変え、扉の形を描く。

扉の上には「第777辺境図書館」と、やはり見えにくいように書かれている。


「あとはおすだけ。

 むー。やっぱりおもいな。」


扉を開け、扉の向こうの部屋に入ってみる。


「むー、かなりほこりっぽい。

 そーじ、してないな。

 けほっ、のどわるくなりそ、

 さいてーげんしらべたら、そとにでたほうがよさそう、かも。」


ハンカチで口を押さえてホコリを防ぎながら、周りを見渡す。


壁には落書き、床にはゴミとホコリが大量にある。


小さな机とイスが1つずつあり、机の上にはノートを乱暴にちぎったような紙が1枚、小石を文鎮代わりにして置いてある。


「み?

 なんか、かきおきかな?」


『カジノに行ってきます。

 御用のある方は、探してください。カジノのどこかにいます。

 図書館に入りたいだけなら、許可書の用紙と書き方のメモ置いておくので、許可書を自分で書いて、テキトーに入ってください。そんなことで呼ぶな。

 第777小図書館館長より。』


「なんかげつまえのめもなんだろ、これ。

 かえるきないな、このしょちょーさん。

 このめものしたのほーが、きょかしょのかきかたのめもになってるのね。

 でも、きょかしょのようし、って、みあたらないな。つかいきったのかな?

 かじののどこか、って、さがしよーがないようなきがする。

 さすがにせーふくのままかじのではあそばないだろーし。」


「とりあえず、このままだと、たおれそーだから、はやくそとにでないと・・・

 けほっ。」



扉を開けて外に出ると、きらびやかな装飾がされた店が目につく。

カジノ、バー、ホテルまで、ほとんどの建物が派手な外見になっている。


「にゃー。

 いきができるのって、いいことだなー。」


「あら?

 こんな小さな子が一人でいるなんて、ご家族は何してるのかしら?」


「カジノで遊んでるんじゃないか?

 子供は門ではじかれるようになってるからな。」


声のほうに振り向いてみると、ウサギのような耳が生えた女性と、狼のような耳が生えた男性が立っていた。


「み?

 こんにちはー。

 うさぎみみのひと、はじめてみたです。」


「あら、そう?

 けっこう多いはずなんだけどね~。

 こんにちは。」


「いぬみみかな、おおかみみみかな、どっちかわからないけど、おにーさんのみみも、はじめてみたです。こんにちはー。」


「これは犬耳だぜ。

 狼とよく間違えられるが、全然違う種族だからな。

 まあ決めつけられなかったのは久しぶりだ、ありがとな。

 こんにちは。」


「えっと、ご両親、おとうさんとおかあさんとは、はぐれちゃったのかな?」


「りょーしん、あったことないかも?かおしらない。

 このまちに、ひとりで、あそびにきた。

 なんだかたのしいまちって、ほんにかいてあったんだけど、たのしいですか?」


「あ、ごめんなさい、つらいこと聞いちゃったわね。」


「み?

 しらないひとのことだし、べつにつらくもないよ?」


「そ、そうなの?

 えっと、この街が楽しい町かどうか、だったわね。

 カジノとかが多くて楽しい町、なはずなんだけど、カジノは子供だと入れないと思うわ…。

 子供でも入れる店って、何かあったかしら?」


「子どもでも遊べるところ、だったら、ゲームセンターがどこかにあったはずだ。

 まあ昔のゲームばっかりだろうけど、それなりに楽しめるんじゃないか?

 あと、酒場以外の飲食店なら入れると思うが、それはほかの町にも普通はあるだろうしな。」


「おー。げーむせんたー、きいたことある。」


「お、わかるのか、話が早いな。

 あ、カジノほどじゃないと思うが、遊ぶにはお金が必要だからな。」


「らー。だいじょぶ、もってる。

 よみおわったほんうったから、おかねもち、なのです。」


「お、そうなのか。それなら大丈夫だな。

 この町で言うのも変かもしれないが、腹減った時に食べ物買うお金と、家まで帰るお金は残しておかなくちゃいけないぜ。」


「らー。ありがとう。のこしておく。」


「よし。

 ああ、ゲームの話だったな。

 たしか、そこの道をまっすぐつきあたりまで行ったところのホットドッグ屋の店長が何か知ってたような気がするぜ。

 熊みたいな外見してるやつだからすぐわかる。」


「ありがとー。いってみるー。」


・・・


「読み終わった本売ったからお金持ち、か。

 俺も小さい頃は読み終わった本売って次の買う資金の足しにしてたなぁ。」


「今は買ってないわね。」


「この町は飯と酒がうまいからな~。

 うっかりなくなっちまうんだよな。これが。」


「あなたの場合、カジノで使ってる金額のほうが多いでしょ。

 カジノの客引きが、カジノの売り上げに協力してどうするの。」


「いつか大当たりを出してホテル・ジャックポットに泊まる。

 それが男の夢ってやつだろう。」


「その夢を追う人からの売り上げで私たちが生活してるのよね。

 さっきの子の金銭感覚見習った方がいいんじゃないかしら?」



・・・


「子供でも遊べる店か?それなら、あっちのクレープ屋のやつが何か知ってたはずだな。」


「それなら、この道を行って2つ目の交差点で右に行ったところにある串焼きの店の人がなにか知ってたと思うわ。」


「向かいの店のやつがそーいう店見つけたようなこと言ってたな。」


「いや、見つけたのは俺じゃないよ。なんか派手な看板のラーメン屋に行った時だったかな、誰かが言ってた。」


「ラーメン屋?見かけたことないなぁ。」


・・・・


「・・・げーむせんたーおしえてもらうまで、すごーく、じかんかかった。つかれた。おなかいっぱい。もーたべれない。

 たべもののみせばっかりだったから、うっかりかいぐい、しすぎた。

 まあかったもののほとんどはあいてむぼっくすにしゅうのうしてあるけど、たべるのになんにちかかるかな、これ。」


「そして、げーむせんたー、さいしょのかじののうらだった・・。

 まあこのとびらがはいっていいものってわかるの、おしえてもらったひとだけだろうけど。

 どうみてもじゅうぎょういんようのつうようぐちにしかみえないしなぁ。これ。」


「とりあえず、はいってみよう。」


ゆっくりと扉を開けて、『ゲームセンター』に入る。


ブラックジャックの台にディーラーがいる。

ルーレットの台にもディーラーがいる。

そのほか、いろいろなゲームのテーブルがあるようだが、それぞれの台にディーラーが1人ずつ立っている。

しかし、ディーラーと勝負している客は一人もいない・・・



「み?

 てんいんさん、すごくいっぱいいる。

 これ、たぶんふつーのかじのよりおおいよーなきがするけど?」


「そりゃそうさ。

 ここはディーラー、つまり「店員さん」の墓場だからね。」


スロットの台の陰から、腰が曲がった老婆が現れた。


「み?

 こんにちはー。

 てんいんさんのはかば、ですか?」


「そうだよ。

 よく見りゃわかるが、その「店員」はゴーレム、つまりからくり人形だ。

 そのゴーレムは、作った者の指示に従うように作られていたらしいんだが、その作った者ってのが今どこにいるのかわからなくてね。

 それでもゴーレムはちゃんと動いて、店員としてギャンブルをしてくれるわけだが、そのギャンブルが誰も勝てないようなバランスだったもの、誰も遊んでくれないようなルールだったものなどが、ここに連れてこられているわけさ。」


「むー。

 つまり、ここのげーむはすごくむずかしい?」


「すごく難しいか、勝っても儲からないようなルールかだね。ほとんどは。

 1000回やっても誰も勝てなかったカード当てとか、『攻略するのは不可能じゃないか?』っていうものも多い。

 正直ぶっ壊した方が儲かるくらいなんだが、普通に壊そうとしても壊れない頑丈さでね。

 しかもカジノから出せない制約付きだから、敷地の端を使ってこんな場所を作ってるわけさ。」


「ふつーにこわせない、ふつー、じゃなければ、こわせるってこと?」


「壊す方法がわかっているわけじゃないが、ゴーレムに刻まれている番号が、いくつか欠けているらしい。

 一番から順に作られたとするなら、何かの原因で壊れたか、ほかの場所に運ばれたかってことになるんじゃないか?」


「なるほどー。

 あそぶのは、いまでもできる?」


「どれでも1チップから遊べるようになってるよ。ゲーム内容についての苦情は受け付けないけどね。」


「にゃー。

 いちちっぷ、たくさん、もってきた。

 いろいろ、ためしてみる。

 ありがとー。」


「ああ。

 グッドラック、まあ運が良くても勝てないだろうけどね。ここでは。」


「・・・さて、どんなげーむがあるかなー。」

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