図書館牢獄2
「ふぁ~。今日もヒマですね~。寝ててもいいですか?」
「呪われて強制されてるとはいえ、一応給料もらってる仕事なんだから、寝るのはダメじゃないかしら。」
「やっぱそーですよね~。
しかたない、気合入れて目を開けとくか~。きあい~。」
「気合入ってるようには聞こえないわね~。
まあ気合入るような仕事内容でもないけど。
・・・あれ? なんだか、変な気配感じない?」
「なんか感じました?
わたしは何も感じませんけど。」
「あ、あれ見て!
壁の魔法陣。あれから魔力の気配が!」
魔法陣はその色を白から赤に変え、だんだん色が濃くなっていく。
それとともに、魔力の気配が強くなっていく・・・
「魔力の気配、っていうのはさっぱりわかりませんが、魔法陣の色が変わったのはわかります!」
魔法陣は形を変え、扉の形を描き出す。
その扉が、ゆっくりと開いていく。
絵に描かれた扉が開くような光景は、異常さを感じさせる。
「扉が、開いてる・・・?」
「だ、誰かでてくるみたいね。」
「よい、しょ。
にゃー。
やっとあいた。」
現れたのは、幼い少女。
その肌は色白という表現でも全く足りないほどに白く、その華奢な体形は壊れやすい陶器を連想させた。
しかし、強大な魔力の気配が、その印象をすべて吹き飛ばしている・・・。
「み?
ひと、いた。
ゆー。こんにちは。」(ぺこり)
「あ、こんにちはー。いらっしゃい。
久々のお客さんでうれしいよ~。」
「し、失礼いたしました!
わたくし、辺境図書館職員、サトであります!
コレは同じく辺境図書館職員のサラであります!
150年ぶりのご降臨、我々一同歓迎いたします!」
「先輩、コレって呼び方はひどいですよー。
あ、紹介受けた通り、サラですよろしくー。」
「しろ、です、よろしくー。
しょくいんさんがふたりいるってことは、ここ、としょかん、だよね?
としょかんにはみえないけど。」
「重ね重ね失礼いたしました。
ここは図書館で間違いありません。第127辺境図書館であります。
図書館で大声を出すのは間違っている、それもおっしゃるとおりであります。」
「・・・み?」
「はい。
この図書館に残された業務記録によると、今からちょうど150年前、中央図書館からの使者がこの図書館に降臨されました。
飛んで帰るのが面倒だと仰せられまして、この魔法陣を残してお帰りになりました。」
「にゃー。」
「はい、喜ばしいことであります。」
「み?」
「え、あの、喜ぶところではありませんでしたか?」
「らー。みーみみみー。」
・・・・
「あれ?
二人とも急に黙っちゃ(ごすっ)
いたーっ!?」(ぐりぐり)
「ぴ!?」
「シロ様がせっかく説明してくださっていたのを遮るなんて、何を考えているの!
そこでしばらく転がっていなさい!」
「にゅー。」
「も、申し訳ありません。」
「み?」
「にゅおおお、いーたーいーぞー。」(ごろごろ)
「いったんかえる。またくる。それじゃ。」
「あ、お待ちくだ・・・!」
「あー、よーやく痛みおさまってきた・・・
行っちゃいましたね。」
「サラさん、ごめんなさいね。
私の勘違いで踏んでしまって。」
「カン違い、ですか。
カン違いであんなにぐりぐり踏まれたわけですか。
・・・寝ててもいいですか?
傷ついた心と体を癒すには休息が必要だと思うんですが。」
「ええ。もちろん。
ほんとにごめんなさい。ゆっくり休んでね。」
「それじゃ失礼して。部屋のすみっこでごろーんと。
ふおー。なんだこの床。ものすごい寝心地良い。石床なのに。
・・・・zzz。」
帝国中央図書館、第一書庫の柱の前。
心配そうに待っている2人の前で、柱に描かれた扉から、少女が戻ってきた。
「みーたん、はーたん、たらいー。」
「あ、白ちゃんおかえり~。どーだった?」
「おかえりなさい。無事でよかったわ。
私たちもさっき追いかけて通ろうとしたけど、なぜか通れなかったのよ。」
「それは、あっちでおさえてたから。
いっかいしめないと、つぎのひとがはいれないみたい。
だから、こわれたとかではないよ。」
「あら。
それじゃ、予定外の何かが起きて、行かない方がいい感じだったの?」
「らー。
あっちに、どくしんじゅつつかいがいる。」
「どくしんじゅつ?
読唇術?読心術かな?」
「心を読む方じゃないかしら?
しゃべったこと読み取るだけなら、特に問題はないと思うから。」
「りょーほーかな。
どくしんじゅつなどくしんじゅつ。
しゃべるのきかれる、か、みられる、か、どっちかわからないけど、そーすると、そのときかんがえてることがよまれる、みたい。
しゃべらなければ、もんだいはない、はず。」
「ほほー。
読唇術な読心術。
ものすごい能力持った人もいるんだね~。
ババ抜きとかしたら無敵なんじゃないかな?
まあ相手が能力知ってたら無駄だけど。」
「おー、ばばぬき、あるんだねー。」
「あるよー。
今度やってみようか~。」
「にゅー。
やってもたぶん、ぜんぶまけるとおもう。
かおにでるしなぁ。」