子供冒険者協会
「こどもぼーけんしゃ、に、なる。」
「子供冒険者?
えーっと、冒険者って言ったら、賞金稼ぎとか護衛とかやる人たちのことだよね?」
「そのほか、掃除の手伝いとかいろいろやる人たちね。
ランクが高い人たちになると、「毒大蛇」とか「咆哮熊」とかを倒す依頼とか受ける、らしいわね。噂では。」
「それは無理じゃないかな~。
まあ世の中どこかには倒せる人たちもいるのかもだけど。
あ、「子供冒険者」の話だったね。
ふつーの冒険者と違うの?」
「こどもぼーけんしゃだから、こども、だよ?」
「うん、それはわかるんだけどね。
冒険者協会に登録した子供、なのか、子供冒険者協会に登録した子供なのか、ってところかしら?」
「こどもぼーけんしゃきょーかい、の、ほう。」
「ほほう。そんなのあったんだ。
知らなかったよ。」
「それじゃ、行ってみましょうか。」
「らー。あっちのほうに、あるらしい。」
街の大通りにある駄菓子屋。
じっくり観察すれば、店の大きさに対して異常に子供の出入りが多いことがわかる。
そう、その駄菓子屋の地下に、秘密の組織「子供冒険者協会」が隠されているのだ・・・。
駄菓子屋から、3人の少年、いや、子供冒険者が話をしながら出てくる・・・。
「一枚でこれしか買えなくなったのか・・・。」
「もうちょっと良い依頼受けないと稼げないな」
「冒険者ランク上げないとなー。」
「・・・ここが、ひみつそしき「こどもぼーけんしゃきょうかい」のかりのすがたなのです。」
「うん、さっきの子たちの会話でわかったよ。」
「み?ひみつそしきなのに、もうみやぶられてた。」
「でも、あらかじめ聞いてなかったら冒険者ごっこだと思いそうだから、意外に気付かないかもしれないわね。」
「それなら、あんしん、かも。」
「それじゃ行ってみよか。」
「らー。」
「子供冒険者協会にようこそ~。」
地下室に下りると、地上の店よりも広い広間に出た。
正面には受付カウンター、左右の壁には依頼書のメモが大量に貼り付けられている。
「こどもぼーけんしゃ、なりたい、です。」
「はい、受付しますね。
お二人は付き添いですか?登録希望ですか?」
「あ、私たちは付き添いです。」
「はい。了解です。登録はおひとりだけですね。
では。
こどもぼうけんしゃになるときには、やくそくをしてもらわなくちゃいけないことがあるんだけど、やくそくできるかな?」
「むー。
ないように、よります。
あと、わたし、しゃべりはこんなのですが、ふつうにしゃべって、だいじょぶ、です。」
「えっと。
失礼しました。
この協会は、『子供冒険者』として登録した子供たちに、依頼、つまりお手伝いをしてもらう場所になります。
左右の壁に貼ってある依頼書に、依頼内容、成功条件、報酬などが書いてあるので、やりたい依頼があったらこのカウンターで仕事を受ける手続きをしてください。
報酬は、お菓子、現金などがある場合があります。
ただし、報酬を受け取る場合は、その扱いは自己責任になります。家族に怪しまれたりしないように、言い訳は自分で考えること。
また、依頼成功時には登録証のスタンプカード部分にハンコが押されていき、ハンコがいっぱいになると登録証のランクが上がっていきます。
ここまではいいですか?」
「らー。だいじょぶです、つづきおねがいします。」
「登録するとき約束してもらうことは、
・秘密の組織なので、なるべく他言しない。
・報酬でお菓子をもらった時、他人に見られたらまずい場合は協会内で食べる。
・報酬でお金をもらった時、持ち歩きたくない場合は協会に預ける。
・依頼成功、失敗にかかわらず、終わったらここで報告する。
といったところです。」
「りょーかいです。
とうろくおねがいします。」
「では、ここにお名前を。」
「らー。かきます。」
「それでは、登録完了です。
今日からあなたも子供冒険者よ。がんばってね。」
「がんばる、です。」
(きょろきょろ)
「これ、うける、です。」
「はい。
これは、常時依頼の草むしりね。
ここの裏庭の草むしりが仕事で、報酬は出せないけど、ある程度がんばったらハンコは押すわ。」
「わたし、たいりょくないので、あんまりできないとおもうですが、だいじょぶですか?」
「ええ。少しでも大丈夫よ。
期限もないから、とりあえず受けててもらって気が向いたときにいくつか抜いてもらうだけでも助かるわ。」
「あと、ぬいたくさって、もらっていいですか?」
「え、えーっと。
別に問題はないけれど、あそこに生えてるのって、雑草ばっかりよ?
もしかしたら、何本か珍しいのが生えてるのかもしれないけど・・・。」
「ざっそーも、ほしいから、だいじょぶ、です。」
「・・・うん。それなら、どんどん抜いてもっていって大丈夫。
散らからないから助かるわ。」
「にゃー。
ありがとです。よろしくです。」
「よろしくね。」
「あ、すこっぷ、ってうってますか?」
「小さいので良ければ上の店で売ってるわよ。
本格的なのだったらうちでは無理ね。
上の店では、登録証を見せて買うと少しだけ良いことがある、かもしれないわ。」
「ちっちゃいの、で、だいじょぶです、ありがとです。」
「がんばってね。」
「らー。がんばる、です。」
「それじゃ、うえの、おみせにいくー。」
「りょーかい。
駄菓子屋なんて久しぶりだなー。」
「ええ。行きましょう。」
「いらっしゃい。」
「すこっぷ、ちいさいの、ありますか?」
「小さいって言ってもいろいろあるけど。
あのへんに置いてるわね。」
「ありがとです、みてみます。」
「あった。
あれ、おおきいのもある。」
「大きいほうも子供用のだけど、足かけて使える形だし、けっこー本格的に掘れそうだね。」
「このざいしつってなんなんだろ、ぷらすちっくとかってあるのかな?
なんだかわからないけど、かなりかるい、つかえそうかも。」
「うわ、本当に軽いわね。
私子供のころこんなの無かったなぁ。」
「むー。
いれるばしょはあれがあるし・・・
えーっと。
これと、これ、かな。」
やや大きめの、足をかけて体重を使って掘れるタイプのスコップと、片手で持って使う小さなスコップを手に取った。
ちなみに、色はどちらもピンク。
「これふたつで、いくら、ですか?」
「えっと、それ少し高めなのよね。
大きいのが7枚で、小さいのが4枚、合わせて11枚、ぼーけんしゃ割引きで10枚になるわ。」
「じゅーまい、けっこーしますね。
それじゃ、これで。」(じゃらっ。)
「・・・えっとね。
うちで10枚って言ったら、銅貨10枚、のこと、なのよ?」
「み?
いがいと、やすかった?」
「ここで銀貨を使う人なんかほとんどいないからね。
危ないから早く隠した方がいいわ。
できれば下でお金を預けておいて登録証払いにしておいた方がいいかも。
あれなら手持ちの金額はわからないし、盗まれる心配も少ないから。」
「らー。
それなら、こんど、あずけて、きます。
とりあえずいまはふつーに、かいます。」
「はい、それじゃおつりは銅貨90枚、大銅貨なら9枚になるけど、どっちがいいかしら?」
「かるいほーで。」
「それなら大銅貨9枚ね。」
「ありがとです。」
「それじゃ、ほりにいってくる。」
「早速行くんだ。どのくらいかかりそう?」
「たぶん、にしょーこく?(約10分)くらいで、たいりょくなくなる、かな」
「無理はしないようにしないとだめよ。
けっこうまだ寒い季節だし。」
「らー、きをつけて、やってみるー。」