特訓中
地下3階、多目的室。
足元には、巨大な魔法陣が残っている・・・。
今日はその部屋に、イスが3つと、スケッチブックを立て掛けるための台がおかれている。
台にスケッチブックを置き、ペンを持ち、ペンを動かし始める・・・。
『それでは、魔力認識の訓練を始めます。
まず、魔力認識の基礎についての勉強を始めましょう。
準備は良いですか?』
「ええ。いつでも。」
「準備おっけーだよ。
筆談?めずらしいね。
最近はかなり普通にしゃべれてるのに。
あ、七詩センパイの時は筆談だったか。」
『今回は、これのほうが便利なんです。
あとで読み返すこともできますし。』
「なるほど。
たしかに1回で覚えるのは難しいからね。」
「そうね。
何度も説明してもらうって言うのも申し訳ないし、紙に残るなら安心だわ。」
『では、始めましょう。
言葉を間違っていることもあるかもしれません。
嘘を書くこともあるかもしれません。
もっといい方法があるかもしれません。
ですから、途中で気になったことがあったら、どんどん発言してくださいね。』
「りょーかい。」
「ええ。わかったわ。」
『まず、魔力認識とは何か。魔力を認識することです。』
「うん、そりゃそうだよね。」
「そのままよね。」
『はい。そのままです。
では、認識のしかた。魔力の感じ方について。
どんな感じで認識するんでしょうか?
いろいろな方法を考えてみてください。
思いつくまま適当に、で大丈夫です。』
「んーと。
小説とか漫画だと、「これは、魔力の気配だ」、とか言う人出てくるの多い気がする。
だから、気配を感じる、ってのが一つめかな?」
「目で見る、っていう方法もありそうね。」
「あと、においとか感触で分かる人も、いるのかな?」
「どうかしら。
あんまり聞いたことはないけど。」
『はい、そこまで。
さて。今出た感じ方のうちだと、今回身につけるべきなのはどういう感じ方でしょう。』
「んーと。
今回の場合、魔法陣を『見る』のが目的なわけだから、目で見る、だよね。」
「気配で内容まで読めるなら、気配もアリかもしれないわね。
でも、一番間違いなさそうのが、目で見る、ね。」
『そうですね。
今回の目的が、「逆魔法陣」なので、目で見るのがいちばん簡単だと考えられます。
気配で感じるのは難しいと思います。
かなり上達すれば可能かもしれませんが。』
『次に、魔力を目で見えるようにすることによるメリットとデメリットについて考えていきましょう。』
「んーっと。
目で見るわけだから、背後に魔力の気配が!とかはできないよね?」
「魔力が強いときとかだと、普通のものが見えにくくなってしまうかもしれないわね。」
『そうですね、背後の魔力は当然見えないでしょうし、普通のものより優先して見えるようでは困るかもしれないですね。
他に何か思いつきますか?』
「うーんと・・・」
・・・
(しばらく経過)
「あれ、ペンのインクなくなったのかな?
白ちゃんの書いてる文字がものすごく薄くなってきてるんだけど。」
「そう?言われてみれば、薄い、かしら?」
「いや、めちゃくちゃ薄いでしょこれ。」
「ほとんど違わないように見え・・・。
あ。」
「み?」
「この文字が、魔力で書かれている、ということね。」
「にゃー。」
『気付きましたか。速いですね。
正解です。
最初は視認しやすい魔力で文字を作り、魔力の波長を少しずつ変えて、だんだん普通の視力で見えにくい色に変えていったんです。
魔力自体の量は変えていないので、魔力認識が完全にできているなら、同じような濃さで見える、かもしれません。』
「ちなみに、ペンを使ってた意味は?」
『ありません。
ペンのふた開けていませんし。』
「あら、言われてみれば、ペン閉じてる。」
『手の動きも、文字とは関係ない方向に動いてました。
さて。
気付いてしまったところで、本格的な訓練に移りましょうか。
今度は、一つの波長ごとに、だんだん魔力量を減らして薄くなっていくように文を書いていきます。
それぞれがどの波長を見るのが得意なのか調べて、得意なものを中心に訓練していきましょう。』
「りょーかい。」
「了解。」
肉眼で見やすい波長、と言っても、『とてつもなく濃い魔力で書かれていれば読める』、程度です。