10日目
「み?
はーたん、いた。
おいしいもの、あった?」
「うん、あのテーブルの肉、かなりおいしかったよー。」
「にゃー。
それなら、こんどそれたべる。
でも、いま、わたし、よぱらい。
だから、うごく、したくない。
あとで、とり、いく。」
「そのくらいなら取ってくるよー。」
・・・
「おまたせー。」
「あいあとー。」
(ぱくぱく)
「・・・ふつーに、おいしい。」
「普通、かぁ。
白ちゃんにしては、わりとビミョーな評価?
いっつも、何食べてもすごくおいしいって感じの反応なのに。」
「さっき、しょちょーに、くすりもられた。
こんかいは、くすりははいってなさそう、ふつうに、おいしい。」
「薬盛られた!?
あの所長何考えてるの!?」
「みんなをまもるためーとか、かんがえてたとおもう?
たぶん、まりょく、むだにでてきえちゃうくすり?
だから、まりょく、よわくなったり、しゅーちゅーしにくかったり、そんなかんじ。かも。
そっこうせいのどくとかもらなかったから、やさしい?」
「いや、それやさしいとは言わない。
飲み会して薬盛るとか、外道のやることだから。」
「まあなれるとおいしかった、だからだいじょぶ。」
「なれると、って、気づいてて飲んでたってこと?」
「らー。
せっかくだから、ぜんぶのんだ。」
「なんでまた。
薬盛られたって気づいた時点で瓶で殴って良いレベルだよ。」
「りゆうのそうぞうはつくから。
むかえがこなかったばあい、ぱにっくになってまほうぼうそう、とかしたばあいの、ひがいけいげん?
むかえのよていだって、わたしがいってるだけだから、わたしがだまされてるとかかんちがいしてるとかのかのうせいをひていしない、いいはんだん。
だから、のんでこまることもなさそうだし、のんでみた。」
「飲んで困ることなさそうってのは・・・。」
「りょうほうのいみだよ。
つかうよていがないから、よわくなってもだいじょぶ、でもあるし、
このくらいよわくなってもあんまりかわらない、でもある。」
「やっぱりそんな感じなのね。
って、あたし質問最後まで言わなかったのに、なんでわかるの!?」
「なんとなく。」
「・・・白ちゃん。今のうちに約束しとくよ。
誰が敵にまわっても、なにがあっても、あたしは白ちゃんの「すとっぷ。」
「それいじょういったらだめ。
すきかきらいか、みかたかてきか。じょうきょうによって、ちがってくるのがあたりまえ。
そのぜんていをむししたちかいは、ろくなことにならないよ。
むかえがこなかったときのことしんぱいしてるんだとおもうけど、
たぶん、みんなのかんがえてることと、ちがうかんじ?」
「・・・りょーかい。
それじゃ、またいつか、ってあいさつはおかしいかな?」
「だいじょぶとおもう。
またあしたになるかもだけど、またいつか。」
「みーたん、みつけたー。」
「あら、白ちゃん、見つかっちゃったわね。」
「み?
かくれんぼ?」
「いえ、そうじゃないの。
ちょっと心の準備して、良い顔できるようにって考えてたのよ。」
「み?
びじんだとおもうよ?」
「ふふっ、ありがとう。
でも、ちょっと違うの。表情のことね。
さっきまで、わたし、すごく暗い表情してたと思う。
でも、所長に言われちゃったんだ。
『もし会えなくなった時に、景気悪い顔だけ覚えられてるのは損だ』ってね。
だから、最後くらい、笑顔で見送ろうと、心の準備をしようと、思ってたの・・・
でも、難しいなぁ。」
「むー。
わらいたくないときに、わらうのも、むずかしい、よね。
こんなかんじのわらいかたなら、いくらでもできるけど。」
(にっこり)
「うわ。」
「ひどい、でしょ?」
「うん。かなり。
こう、笑いたくない、というか、あなたとはかかわりたくないですよ、っていう感じの笑い方ね。」
「らー。
そんなきもちを、あいてにとどける、そんなわらいかた、なのです。
これにくらべたら、ふつーのかおのほーが、すごく、いいよね?」
「・・・そうね。
うん、無理してもしかたないか。
・・・正直言っちゃうと、言っちゃいけない言葉が出ちゃいそうだから、言葉だけは、少し無理しないといけないかもだけど。」
「らー。
むりは、よくない、かも。」
「・・・幸運の女神よ。
彼女と出会えた幸運に感謝を。
そして叶うならば、彼女が帰還を果たしたその後に、今一度幸運なる出会いがあらんことを。」
『酒と宴の神よ。
いつか、彼女と再び出会い、楽しい飲み会ができますように。』
「・・・エルフなのに酒と宴の神なのね。祈る相手。」
「なんか、しゅくふくもらっちゃってるから。
・・・にんげんなのに、こううんのめがみなのね?」
「今回の場合は、努力とか正義とかより幸運が必要そうな気がしたから。」
「そーかも。
それじゃ、そろそろ、げんかいにねむいから、ねるね。
くぅ。」
「・・・おやすみなさい。」
「そろそろね。」
「そーだね。これから1刻(2時間)の間に、迎えが来る予定、と。」
「白ちゃんは寝ちゃってるけど。」
「寝顔でも見ておくことにしようか。
・・・交代制にはしないでいいよね?」
「もちろん。
あと1刻、目を離すつもりはないわ。」
「あたしも。
・・・出会ってから、まだ9日たってなかったんだよね~。」
「そうね。
いろいろあったなぁ。」
「そうだね~。
本をとんでもない速さで読んだり。」
「いきなり魔法陣作っちゃったりもしたわね。」
「そして先輩を借金生活にしちゃったり。」
「本当にいろいろあったわよね~。」
・・・
「・・・もうすぐ、夜明けね。」
「そうだね。
ちょーど夜明けに来る、って可能性もあるから、まだどっちとも言えない感じかな。
でも、どっちのパターンの覚悟もしとかないとね。」
「そうね。」
・・・
「夜、明けたね。」
「来なかったみたいね…。」
「ちょっとほっとした、気もする。
本人には絶対言えないけど。」
「そうね。
私も少し思っちゃってるけど、言えないわね。
とりあえず、目を覚ますの待ちましょうか。」
「りょーかい。」
・・・・
「にゅ~。
みーたん、はーたん、おあよー。」
「おはよう。」
「白ちゃん、おはよー。」
「み?ふたりとおはようしてるってことは。
むかえ、こなかったかな。」
「そうみたいね・・・。」
「あの、白ちゃん、大丈夫、ちょっと遅く迎えが来る、って可能性だってあるよ、たぶん!」
「しんぱい、いらない。
こーいうぱたーんも、そーてーずみ。
アレがやることにしては、いままでがゆるすぎたとおもうし。」
「アレがやること?
アレ、って、悪の魔導士とかなんとか?」
「だいたい、あってる。
いちばんせいかくがわるくて、じゃあくで、おぞましいイキモノをそうぞうして、それをばいにすると、だいたいアレにちかいものになるとおもう。」
「・・・なんかわからないけど、かなりな存在なのは想像できた。
その『アレ』のせいでこっちに来ることになった感じ?」
「そう。
・・・ものすごく、いやだけど、いちおう、アレがわたしのあに、というかんけい。
えんがきれるものなら、ぜんりょくできるんだけど。」
「・・・そこまで言うんだ。
かなりな感じだねぇ。」
「うん、かなりなかんじ。
はてしなくめいわくな、じんたいじっけんを、かってにけいかくする。
で、それにさんかすれば、すごいひがいをうける。
さけようとすると、もっとすごいひがいをうける。
とちゅうでやめようとすると、やっぱりものすごいひがいをうける。」
「うわぁ。それはひどい。」
「じぶんからじっけんだいにしがんするのが、いちばんひがいをうけないというわな。
まあそういうはんだんをするようにちょうせいしたけっかかもしれないけど。
どっちにしろ、げんざいのところはんげきのほうほうはみつかってない。」
「なんだか、相当にひどい人、じゃない、エルフか。みたいね。
いったい、何が目的なのかしら・・・?」
「むー。
たぶん、ひまつぶし?」
「身内の情とか、ないのかなぁ。」
「ないとおもうー。
じっけんたいのなかでは、しぶとくてべんりだなー、くらいのあつかいだとおもう。」
「えっと、とりあえずだけど。
今、その実験に巻き込まれてる状態ってことだよね。
ってことは、その『アレ』が実験やめる、ってなるまで、こっちにいるってことになるのかな?」
「たぶん、そーなるとおもう。
だっしゅつしようとすると、どーせひどいことになるぱたーんだし。
やどとかきめないとだね。」
「これからもよろしく、でいいんじゃないかな?
宿はしょちょーに言えばなんとかしてくれる、っていうかさせるし。」
「そうね。
白ちゃん、これからもよろしく。」
「らー。よろしくー。」




