9日目(2)
「ただいま、っと。」
「たらいー。」
「んじゃ、あたしたちは出勤して今日のぶんの正式な指示受けてくるね。」
「そうしましょうか。それじゃ行ってくるわね。」
「らー。」
第一書庫に到着。
見覚えのある筋骨隆々なドワーフが、椅子に座って本を読んでいる・・・。
「お、みやとはやてじゃないか。早いな。」
「おはようございます、所長。」
「おはよーです、しょちょー。」
「今日の予定が「護衛訓練」になっていたので、詳しい説明と指示をいただけませんか。」
「おお。
そーいえば指示してなかったか。
ちょっと待っとけ。今書く、指示書。」
『今日の任務を護衛訓練とする。
任務中、護衛対象者と共に行動すること。
経費が必要な場合は、訓練開始前に受け取っていくこと。
現場での細かな判断は任せる。
終了後は、報告なしで現地解散でよし。』
「簡単に言うと、
今日の昼までフォルスちゃんと一緒に行動すること。
それ以外は自由。てきとーに遊んでてよし。
資金が足りんときは先に言っとけ。
以上だ。」
「りょーかいです。
資金は前にもらった銀貨がそのまま残ってるのでだいじょぶです。」
「了解です。
同じく、資金はまだ使ってないので問題ありません。」
「そうか?欲がないな。
べつに、「やる気を出すために追加資金が必要です」くらい言ってもいいんだぞ?」
「いえ、白ちゃんといられる最後の一日になるかもしれないんですから、お金がもらえないとやる気が出ないなんて言えません。
もちろん全力で護衛します。そして遊びます。」
「同じく。こーいう時くらいかっこつけないとね、って感じです。」
「そうか。
夜になったら、もう一度顔出しに来い。
明日のことについて計画立てないといかんからな。」
「了解です。」
「りょーかいです。」
・・・
「白ちゃん、ただいま。」
「ただいまー。」
「みーたん、はーたん、おかぁい~。」
「白ちゃんが言ってた通り、休みだったよー。」
「にゃー。」
「それじゃ、髪の毛とか整えた後、遊びに行こうか。」
「そうね。
まず白ちゃんの髪から整えましょう。
白ちゃん、ちょっと後ろ向いててね。」
「らー。」
「んじゃその間にあたしがみやっちの髪を整えませう。
こう、くしで、さーっと。
それにしても、なんなの、このストレートっぷりは。
とかさなくても充分きれいな気がしてきたよ。」
「こまめにとかしておかないと、絡まって大変なことになるのよ。この髪。
はやてちゃんの髪のほうが、手入れは簡単だと思うわよ。」
「まあもともとへろへろ曲がってるしね~。
多少ほっといても寝癖かなって思われるだけさ~。」
「・・・寝癖かなって思われた時点でダメな気がするのは気のせいかしら?
はい、白ちゃん、きれいにできたわよ。」
「あいあとー。」
「白ちゃんは耳を隠さなくちゃいけないっていう制限があるから、髪型は変えにくそうね。」
「そだねー。
いろいろ試してみたい髪型はあるけど、だいたい耳って出ちゃうんだよね。
ほい、みやっちの髪もおっけー。」
「それじゃ、最後はあたしの髪か。
・・・白ちゃん、お願いしていいかな?」
「み?」
「このくしであたしの髪を、上から下にとかしてもらえるかな?」
「らー。」
「あの、白ちゃんには悪いけど、私がやった方が安全なんじゃないかな、って思うんだけど・・。」
「だいじょーぶだいじょーぶ。
多少面白いことになったところで問題ないでしょ。今日休みだし。」
(ぽき)
「あ、くしが真っ二つに・・・。」
「予想外の方向で面白いことになっちゃったねこれは。」
「みっ!?」
「いや、普通に安いくしだったから、限界来て壊れただけだと思うよ。
問題なし、問題なし。」
「まあそんなわけで。
買い物行きましょか。」
「そうね。
せっかくだから良いくし買うのもいいかもね。」