9日目(1)
いつも通り、夜明け前に目を覚ます。
暗闇の中、枕元のランプを手探りで・・・
「おあよー。」
「きゃっ!」
「み?」
「あ、白ちゃんか、びっくりしたわ。
おはよう。
どうしたの、こんな暗い部屋のすみっこで明かりもつけずに。
あ、そういえば明かりの付け方教えてなかったっけ。
ごめんね。すぐ付けるから。」
「み?そんなに、くらい?」
「暗いわよ?かなり。」
「そーなんだ。」
「・・・そこから、この本のタイトル読める?」
「『おいしいけーき、つくりかた、まなぶまえ、きそくんれん』。」
「読めてる、みたいね。
手に持ってる私が読めないのに・・・。
とりあえず、ランプ付けるわね。」
ランプに火をともすと、部屋が明かりで満たされた。
二人分のふとん、枕元のランプ。
そのほかは、隅に置かれた3人分の手荷物くらいしか物はなく、がらんとしている。
「あかるい、なった。」
「そうね。ランプだから付ければ明るくなるわ。あたりまえだけど。」
「・・・このばあい、あかるさがなんとかじゃなくて、あかるくしたというきごうてきなこうかがある、とかんがえる?
らんぷのひかりとどかないところまであかるくなってる。
っていうことは、くらさのぱらめーたよりうえのこうげんがあれば、じどうてきにへやぜんたいあかるくなる、ってこと?」
「あの~、白ちゃん?
このランプがなにかおかしいことでもあったの?」
「いや、らんぷ、ちがう。
さっき、くらい、でも、みえた。
すんでた、くに、よる、くらい。
あかり、ない、なにも、みえない。」
「そんなに暗かったの?」
「らー。よる、くらい。」
「普通にあると思うよ~。そういうことも。
人間が住んでる町は、結界が張ってるとかなんとかで。
暗いとこでも、それなりに物が見えるようになってるみたい。
だから、町の外で夜明かしするなら明かりを用意するか、動かなくていいようにキャンプするかが必要とかなんとか。
エルフは暗視能力が高いのかもね。
そして、エルフの国は夜はすごく暗くて暗視能力使っても見れないと。
そんなわけでおはよう~。」
「おあよー。」
「おはよう。
・・・いつから起きてたの?」
「きゃっ☆のあたりから。」
「最初ね。
声かけてくれればよかったのに。」
「ねたふりしとけば誰かが明かり付けてくれるんじゃないかな、って考えたうえで、潜伏してたわけですよ。
作戦成功。」
「いや、明かり付けるくらいなら、別に寝たふりされなくてもちゃんとつけるわよ?」
「さて、朝ごはん行こうかと思うけど。
その前に、なんか、少し白ちゃんの荷物が増えてる気がするね。」
「しょちょー、くれた。」
「そーなんだ。
青ゼライム型リュックか。
下手にどっかに置いたら踏まれそうなデザインだね。かわいいけど。」
「なか、こわれる、ない。
けど、りゅっくは、どうだろう?」
「どうだろうねぇ。」
「まあ背負ったものまで攻撃はされないでしょうし、背負ったまま行けるなら行きましょうか?」
「らー。」
・・・
食堂の4人席に移動。
まだ夜間帯と言える時間のため、席はかなり空いている・・・。
「あっさごはーん。」
「にゃー。」
「たべほーだい、って言われても、早朝だしそんな大物挑戦する気分にはならないねぇ。」
「そうね。
食後のデザートを注文してみようかしら、とは思うけれど。」
「お、いいねぇ。そうしよう。
白ちゃんはどうする?」
「・・・むー。」
「ん?どーしたの?」
「りゅっく、おもい。」
「空いてる席に置いちゃっていいと思うよ。」
「らー。そうする。
かるい、なった。」
「それは良かった。
で、何頼む?」
「むー。
みにけーきと、なぽたん?」
「ナポリタン、のことかな?」
「らー。なぽたん。」