8日目夜食
職員用のセルフサービス式の食堂。
食堂は広く、テーブルと椅子の数も、数えるのが嫌になる程度にある。
4人用の大きな白いテーブル、そのほかに2人用、1人用のテーブルがある。
そのテーブルは、イスの数に対してかなり大きい、という印象を持つかもしれない。
職員たち、当然のごとく本好きが集まっている彼ら、彼女らが本を読み始めてしまうことが多いために、
料理とぶつかって本が汚れないように、テーブルを大きく改修したらしい。
座るものの快適さは大きく向上したが、その分席が空きにくくなったのは言うまでもない・・・。
4人席の一つに座っている3人組。
その中の一人は、職員とは思えない小さな体で、制服も着ていない。
実際職員ではないから当然だが。
「今回は先輩たちからの情報を参考に、クッション持ち込みしてみたんだけど。
白ちゃん、座りごこちはどう?食べやすそう?」
「むー。
とどく、けど、ゆれる。」
「あら、ちょっとクッション厚すぎたかしら。」
「柔らかすぎたのかもね。
もうちょっと固くて形が変わらないようなもののほうが良かったか。」
「うーん、さすがに本をお尻に敷くわけにもいかないしね。
今回はこれでなんとか我慢してもらうしかない、かな。」
「・・・すこし、なれた。
これは、これで、たのしい。
ゆれるゆれる。」
「ゆれるのは良いけど、倒れないように気を付けてね。」
「らー。」
「そんな、わけで、たべほーだい。
のみものは、べつ。
そのぶん、しょっけん、もらった。」
「そんなわけで、までの説明を大胆に省略された気がするけど。
まあ簡単に言うとタダメシばんざい、ということだね。」
「らー。だいたい、あってる。
せつめい、ななし、まほーじん、これ。」
「なるほど。
今日作った魔法陣の報酬として、この食券と食べ放題券をもらったということかしら。」
「らー。あってる。」
「これって、例の高いメニューも頼めちゃうのかな?」
「たのむ、できる。
たのむ、しばらく、たのめない。」
「能力値が強化される料理は、効果時間中は次のを注文できないようになってるらしいわね。
2個食べても効果は増えないらしいから、食堂側の親切心じゃないかしら。」
「なるほどー。
たしかに、能力値アップの価値も込みでの値段なんだろうからね~。
2つ食べれば効果2倍、とかにならないなら、注文できない方が親切か。」
「まあ私たちくらいだと、一時的に少し能力値上げたところで意味もないし、普通のにしましょうか。」
「そーだね。」
・・・
(もぐもぐ)
「ところでさ。
明日の仕事の指示が、「護衛訓練」になってるんだけど、なんだろこれ。
みやっち、わかる?」
「わからないわ。
そういえば私の予定も「護衛訓練」に変わってたわね。」
(ぱくぱく)
「ふたり、あした、やすみ、いってた。」
「休みって意味でいいの?」
「らー。
やすみふやす、きゅーりょー、へる。
だから、しごと、だけど、やすみ、おなじ。」
「ほほう。
仕事なのに休み。それはすごくお得だね。」
「でも、しゅっきんは、しないと、だめ、だよ?
あいさつ、だいじ。」
「出勤のあいさつをして、それから自由行動ってこと?」
「らー。
あした、せーしき、しじ、ある?」
「なるほど、確かに正式な指示が無かったら困っちゃうわね。」
「ごちそう、さま。」
「あら、おなかいっぱいになっちゃった?」
「らー。もう、むり。」
「それじゃ、私たちも早めに食べましょうか。」
「そだね。急いで食べよう。」
「ゆっくり、で、いい。
ゆれる、まつ。」