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珍しい出会いと静かな別れ

極限強化奥義『餓狼』自動発動。

「いただきます。」


(ごりゅ。)


えーっと。

なんだかわからんが。

熊に噛みついてる猫耳娘がいるんだが。

熊もこっちを攻撃する余裕なくなったみたいだし、とりあえず今のうちに盾拾って回復しとくか・・・。


(がりがり、ごりごり。)


(ごくごく)

「ふぅ、相変わらずまずいなこのポーションは。

って、あの子、噛みつきだけで倒しちまいそうな勢いだな。」


「あ、あれ?人がいる。

 もしかしてまたやっちゃった!?」


「ん?」


「あの、もしかして、この熊、あなたの獲物でしたかっ!?

 ご、ごめんなさい、あまりの空腹に、無意識のうちに噛みついてしまって。

 えっと、これ以上邪魔はしないように避けてますので、続きをどうぞっ。

 ほんとにごめんなさいー!!」

 

「あー、逆だな。

 熊に獲物認定されて死にかけてたところだ。」


「えっ?

 ・・・つまり、この熊、私が食べてもいいということですか?」


「・・・倒せるならお好きにどうぞ。」


「ありがとうございます~。

 久しぶりの食べ物、逃がすなんてドジはしません。

 残さず食べちゃいますよ~。」


「獣戦士闘技『神砕き』発動!」

(ごりっ。がりがり。ずどん。

ざくっ、ぼきっ、ぐちゃっ。)


「これでよしっと。」


「喉への噛みつきからその傷口への打撃でとどめ。か。

 こんなに一方的に勝てるものなのか・・・。」


「このへんでは一番おいしくて倒しやすい獲物ですからね。

 何度も戦って慣れていますから、あれくらいのことはできます。

 これくらいの量食べれば少しはお腹が膨れますし。」


「これくらいの量、って、この巨大熊で『少しは』なのか・・・。

 すごいものだな。いろんな意味で。

 あ、ところでだが。

 腹が減ってるなら、助けてもらったお礼ってことでアイテムボックスにある食料、少ししかないが渡すよ。

 数日かけて移動する予定でもって来てたが仲間が逃げちまってこれ以上進めなそうだしな。」


「おお、なんていい人なんでしょう!

 獲物を譲ってくれたばかりか、さらに食料をくれるなんて!

 あ、でも、獲物横取りした上に食料までいただくわけには・・・」


「いや、あのままだったら間違いなく死んでたし、食料もこの距離で帰るだけならいらないから受け取ってくれ。

 まあ量は10人前くらいしかないから、腹の足しにはならないかもしれないけどな。」


「おお~!

 久々の調理された食料・・・。

 ありがとうございます、ありがとうございます。」


「え、料理とかしないの?

 まあ俺もできないけど。」


「絶望的なまでに才能無いようで、何をやっても炭にしかならないんです・・・。

 この熊くらいの大物なら、調理しなくてもそれなりにおいしいんですけど。

 でもたまには生肉以外のものも食べたいな、とか贅沢なことを考えちゃってました、ごめんなさい~。」


「そりゃ大変だな・・・。

 別に贅沢なことでもないと思うし。

 よし、今度どこかで会うことがあったら、その時食料に余裕があったら提供するよ。

 俺は人間だから保存食に生肉持ち歩くことはないし、生肉以外のなにかを持ってることが多いと思う。」


「おお、ありがとうございます~。

 えっと、それじゃ・・・

 この熊の皮とか爪って、人間の方って何かに使ったりするんですよね?

 私には使えないので、よかったらもっていってください。今さばくので。」


「え、いいのか?

 たぶんだけど、こんな大物の素材持っていけば、相当な量の食料買えるくらいの金になると思うぞ。」


「えっと、このへんの町や村はだいたい出入り禁止になってるので・・・。」


「出入り禁止ってなんでまた・・・。

 あ、空腹のあまり、ってやつか。」


「ご察しの通りです・・。」


「それじゃ、丸一日くらい待てるなら、俺が売ってきて食料に替えてこれるが?

 あ、俺一人で夜動くと死ぬだろうから夜は動けない。それ考えたうえで丸一日かかるってこと。」


「お気持ちはありがたいんですが、丸一日も経ったら空腹で手当たり次第噛みつく状態になってると思います・・・。

 大きい獲物を優先するので普段は心配無いんですが、ここだと人間族の方にも噛みついてしまうかもしれません。」


「あら、それは残念だな。

 ・・・この量で一日もたないのか?」


「一日は無理ですが、これだけ食べれば半日くらいは飢餓状態にならないですよ?

 あ、剥ぎ取り終わりました。皮と爪どうぞ。」


「(半日!?トン単位の肉で!?)

 ・・・ありがとう。

 それじゃ。暗くなる前に帰ることにするよ。

 さっきの熊みたいな大物、このへんに他にいたりしないよな?」


「いないと思います、残念ながら・・・。」


「残念なのか・・・。

 本当に、『食べ物』あつかいなんだなぁ。あの熊。」


「おいしいんですよ?生でも。

 少し味見していきますか?」


「いや、人間族は熊を生で食べたりはしないんだ、残念だけど。」


「そうなんですか。不便ですねぇ。」


「それじゃな。助かったよ。」


「お気をつけて。

 私はこれ食べ終わったら食料探しに移動することにします。

 お弁当ありがとうございました~。」


 ・・・今度から出かけるときは食料は多めに持っていくことにするか。

その前に新しい仲間を探さないといけないな・・・。

いや、まずは無事に帰ることか。

せっかく助けてもらったのに、こんなところで死んではいられないしな。さっさと帰ろう。



・・・


無事帰ってこれたが、例の2人組は姿を見かけなかった。

まあ顔を合わせづらいのはわかるけどな。


もらった皮と爪を防具屋に見てもらったら、「咆哮熊」という災害級モンスターだそうだ・・・。

「出会ってしまった時点で、災害で死んだと思え」っていうレベル。だそうな。


・・・あの子、一人で倒してたんだよなぁ。しかも肉目当てで。

 合わせる顔がない。

 それは精神的な意味でしょうか?

 それとも・・・?

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