恋の再生
夏は
あつい
青春は
あまずっぱい・・・
なんて
ウソだ
果林さん・・・すごい綺麗だった。
あたしって、一体なんなんだろう?
好きな人に「好き」っていえなくて
自分に自身がなくて
なんにもできなくて。
悔しいよ
嫌い
大っ嫌い
こんな自分・・・!
翔太・・・!
あたしは一人で泣いていた。
今、果林さんの家でなにがおこっているのかも知らずに。
「・・・・は?翔ちゃん今なんて言ったの?」
「だから・・・。俺はもう 、果林のいいなりに動くのは嫌なんだ・・・!」
「誰にむかってそんな口聞いてるの!?ねぇ」
パサッ
果林は一枚脱いだ。
不覚ながらも翔太はそこに目がいった。
「翔ちゃんはこの傷のこと忘れたの!?」
激しく指をさされた果林の胸のちょうど真下には紫色のあざができていた。
「忘れたわけじゃ・・・」
そう。忘れたわけじゃない。
翔太のあたまに、苦い過去が蘇った。
翔太と果林は幼なじみだった。
親が親友同士だったせいか、いつも一緒に遊んでいた。
ある日の事だった
熱々の紅茶を運んでいた翔太は、散らかっている果林の部屋を片付けてくれと頼んだ。
「ええ~?面倒くさーい。」
わがままだった果林は決していう事を聞くことはなかった。
仕方なく紅茶を運んだ翔太はー・・・
こぼしてしまった。
果林のお腹に。
「あっつい・・・!いたいよぉ!翔ちゃん助けてぇ!」
「あ・・・ごめん。」
謝ったが痛い、痛いといいずっと泣いていた。
翔太は大げさに思ったが、火傷は結構深く跡が残ってしまった。
果林の両親にものすごい怒られた。
「女の子の体に跡をつけるなんて・・・!どうしてくれるの!?責任をとりなさいよ!」
どう責任をとるのか、それは果林が決めることになった。
果林はそれをいいことに、とんでもないことを言い出した。
「じゃあ翔ちゃん、あたしの下僕になって。一生あたしのいう事を聞いて。あたしより大切な人を作っちゃやよ。」
火傷を負わせた翔太は反論できるわけもなく、その契約を認めた。
認めるしかなかった。
契約を認めたのは小学一年生、六歳のとき。
そのときから中学三年、十五歳の今まで一回も反論しなかった。
自分を責め、果林のいいなりになり、自分をださなかった。
そんな翔太が素をだすのは、学校にいるときだけだった。
幸い果林は私立の学校に進んだので、学校では「下僕」という存在を忘れることができた。
そんな翔太にとって天国といっても過言ではない学校で見つけた、女の子。
翔太にとって愛しい、宝物のようなその子。
葵木夏架だった。
一緒にいて楽しくて 。
ちょっと素直じゃない夏架は
翔太にとって
一筋の柔らかい光で
癒しで
世界の全てだった。
そんな大切な夏架を修学旅行のとき傷つけてしまった。
「好き」って言われて嬉しかったのに
その気持ちに応えたかったのに、傷つけてしまったのだ。
夏架を泣かせてしまった翔太は、自分を悔やみ、夏架を避けるようになった。
でも
でも、あきらめたくない。
夏架を
好きな人を
笑顔にしたい。
自分をだしたい。
「果林のいいなりにもうならない。」
この決断は翔太のそんな思いからだった。
宣言され、しばらく怒りで震えていた果林は突然優しい笑みをこぼした。
「そう・・・もう下僕じゃなくなるのね。
ふーん・・・。わかった。もういいわ。何をしたって。」
翔太は目を見張った。昔からあんなに色々命令されていたのに、いきなりこんなことを言われて驚いた。
「・・・ホントにいいのか?俺・・・」
「いいのよ、もう。あたしもそろそろ翔ちゃん離れしなきゃだもんね☆」
「果林・・・。」
「ほら、今からでも何かしたいならいってきなよ?」
「うん・・・分かった。ありがとう!」
時刻は七時
この時間だったら夏架はもう家にいるだろう。
翔太は駆け出した。
伝えなきゃいけないー・・・
翔太の背中が見えなくなるまで見ていた果林は、不気味なくらい楽しそうだった。
「ふふふ・・・。やーっぱりあの夏架って子のところにいくのね・・・。」
服の裾を強く握った。
「ふふふ・・・夏架・・・・・・!」
ビリッ
裾が破けた。
口は笑っていて、目は死んでいる。
「絶対に・・・絶対許さない!あたしの・・・あたしの翔太を・・・!」
「絶対に殺す・・・!」
密かに殺人を決意した。
同時刻ー
翔太は夏架の自宅の前にいた。
修学旅行の日
伝えた想い。
応えられなかった気持ち。
再び二人の恋が今
再生する。
まだ泣いていた夏架はちょうど窓から翔太が見えた。
立ち上がった。
あの日からずっとずっと泣いていた。
彼氏彼女の関係になりたかった。
「俺も好きだよ」って抱きしめてほしかった。
毎日が翔太で埋まっていたんだ。
ガチャ
あいたかった。
翔太・・・!
抱き合う。
「翔太っ・・・!ゴメンねぇ!でもあたし・・・あたし、本当に・・・」
「うん・・・分かってるよ・・・。」
愛しそうな目で翔太は夏架を見つめる。
「・・・ずっといえなくてゴメン。俺は・・・夏架のコト大切に思っている。夏架が・・・好きだよ。」
真っ暗だった夏架の世界が色づきはじめた。
「好きだよ」
翔太に一番言って欲しかった言葉。
なんて暖かいんだろう。
あんなにいっぱい泣いたのに、まだ涙がでるよ。
嬉し泣きってこういう事をいうんだ。
この涙はあの悩んで苦しみ、切なかった日々があったからこそなんだよね。
あきらめなくてよかった。
あつい。すごいあついよ。
夏は暑い。私も熱い。
そしてこの胸の感じ-・・・
甘酸っぱい・・・
これをくれたのはあなた。
大好きな翔太。
翔太
好きって言ってくれてありがとう。
気持ちをつなげてくれて・・・
ありがとうー・・・。
これからは
今までの悲しみや苦しみを少しずつ
ちょっとずつでもいいから
癒すように
埋めるように
二人で
新しい恋を作っていこう
ときには感情をぶつけあったり
悩みを打ち明けたりして
気持ちを全開に
私は私らしく
翔太は翔太らしく
不器用でも
わかりにくても
伝えあっていこう
これからつづっていく
未来へのページ
なにが書かれていくのかな
不安になるよ?
でもきっと大丈夫
隣には
翔太 あなたがいるからー・・・
幸せの絶頂に見えた二人だったが
それを妬むものがいた。
「葵木夏架・・・!」
怒り狂ったその黒い瞳には
二人が映っていたー
「・・・面白くなったわ。」
クスっ
「せいぜい楽しませてもらうわ」
「まずは葵木夏架・・・
お前をつぶす・・・!」




