涙
逆行で表情はよくわからなかったけど、うなずいてくれたように見えた。なんか照れくさいけど、私の気持ちはちゃんと伝わっただろうか。そうだったらいいな。友達・・新しい私の友達。
「あのさ水原さん、俺・・」
間仲が言おうとした時、教室のドアがガラッと勢いよく開いた。心が帰ってきた。足音に気づかなかった。
「遅くなってごめんね。先生なかなかOKしてくれなくてさー。でも、ちゃんと最後にはしぶしぶ了承してくれたけどね。」
フフフっとうれしそうに笑って私の顔をのぞきこむ。
「どうしたの?顔赤いよ?二人とも。」
どうしたの?・・どうしよう。なんて説明すればいいんだろう。最初から言ったらいいのか?間仲とは過去に告白したりされたりした仲で、約束をしていて、髪にふれられて、体が熱くなって、友達になってほしいと言って、それから・・。
ちらっと間仲を見る。ほんとだ。よく見ると少し赤い。もしかして私と同じで照れてるのかな?まさか。
「私たちしゃべったら意外と気が合っちゃってね。ほら、クラス委員同士なのに話す機会なかったし、あれだよ、あれ。仲間ってかんじ?これからクラスを盛り上げようとしてる同志みたいな?」
口をポカンと開けてる心。なんかあせってしゃべるほど、おかしな方向に進んでる気がする。同志って・・。とりあえず出よう。このままいても変なこと言いそうだし。
「じゃあ間仲、そういう事でまた明日。」
心をつかんで教室を出た。そういえば、さっき間仲がなにか言おうとしてたけど何だったんだろう。
帰り道、心はなにもしゃべらない。あんなにおしゃべりな子なのにどうしちゃったんだ?おそるおそる覗きこむと、すっごい怖い顔してブツブツ言っている。どうしちゃったの?
「あの、心さん?どうしたの?なんか怒ってる?」
そう言うとキッとこっちを強い目で見て、ずずいとせまってきた。怖い!!
「間仲くんと何があったの?気が合ったってどういう事?あたし達、親友だよね?あたしの事どっかおいて行かないよね?・・」
目から涙がポロポロこぼれてる。心・・
「一人にしないで。」
怒ってるんじゃなっかた。不安にさせてたんだ。私たちはとても近い存在で、ずっとずっと2人一緒にいて、それがあたり前だった。今までと違う私を見て不安にさせてたんだ。私が急にあんな事言うから。一番大スキな人を、こんな不安にさせてるのに気づかなかったなんて・・胸がギュッとなる。間仲にドキッとしたりして、どうしっちゃってたんだろう。
「ごめんね。泣かないで、心。」
抱きしめる。小さくて、守ってあげないと消えてしまいそうな心。私がそばにいないと。
「大丈夫だから。どこにも行かないから。」
その日、間仲と友達になったとは言えなかった。