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ふわふわ。  作者: 水無月
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気づいた思い

中学生のある日、心は男子から呼び出しをうけて美術室に行っていた。心は本当に可愛くて学年のアイドル的な存在だった。だから呼び出しなんて普通のことだった。

いつもならすぐに戻ってくるのに、その日は少し遅かった。不安になって教室からぬけだし、美術室に小走りで向かう。ドアを開けると油絵の具のニオイがあふれてきた。が、誰もいない。この不安な気持ちは気のせいかとホッとして教室から出ようかと思ったとき、教卓あたりで何かが動いた。ビビりながらそっと近づき思いきりつかんだ。

息をのんだ。心だ。心が上半身下着でふるえている。乱れた髪。涙の跡。腕のあたりが赤くはれていた。

「あ・・おい」

そう言うと私の胸にとびこんできて壊れたみたいに泣きだした。心と相手の男の間で何がおきたかは分からなかったけど、何をされたのかは分かった。

やるせない思いがこみ上げてきた。相手の男には十分腹が立つけど、一番腹が立つのは自分に対してだった。・・・一人で行かせるんじゃなかった・・。心臓をえぐられたみたいに体が熱くなって、胸の中で泣きじゃくってる心が、急に愛しくて愛しくてどうしようもなくなった。ふるえが止まるまで力いっぱい抱きしめた。

どのくらい時間が経ったんだろう。心のふるえもおさまっていた。私のブレザーを肩にかけ、立たせた。とりあえず保健室に行こうと歩き出そうとした時、心が引っぱってきたから転びそうになった。見ると私の顔をじっと見て何か言おうとしている。でも言葉にできないんだろう。沈黙が続いた。その姿がツラくなってきて私はまた、抱きしめた。

「大丈夫。私がいるから。」

精一杯だった。その後の心の表情は、あえて見ない事にした。

その日はずっと体が熱かった。心の事が愛しくて、私が守らないと消えてしまいそうな女の子に思えた。理不尽にも、このとき私は心に心(こころ)を奪われてしまったのだ。

心の髪も指も放つニオイも言葉も、全てが私のものになればいいのに。そう思わずにいられなかった。

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