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ふわふわ。  作者: 水無月
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変わらない

教室に心と奈緒美が帰ってきた。なんだか2人共すごく死にそうな顔してる。授業が終わって心の席に行く。


「担任なんだって?」


心が顔を上げた。疲れた表情でだまっている。


「補習。冬休みにやるんだって。しかもクリスマスに。ひどくない!?」


奈緒美がいつもより小さい声で教えてくれた。元が大きいから、そんなに小さな声に聞こえない。

クリスマスに補習って・・。先生たちのイヤガラセにしか思えない。


「ごめんね、葵。私からクリスマス誘ってたのに、こっちの都合でダメになって・・・。本当にごめんね。」


小さな心の体が、もっと小さくなっていってるような気がした。

ポンポンと頭をなでる。


「大丈夫だよ。補習が終わってからでも会えるだろうし。」


ずっと一緒に過ごせないのは残念だけど、会えないわけじゃないと思うし。

うん、うんと小さくうなずいて、手をにぎってきた。


「そうだよ!だってその日は聖夜祭じゃん?ずっと朝から晩まで補習じゃないと思うから、終わったら4人で聖夜祭見て回ろうよ。ね?そうしよう?」


奈緒美が薫を揺さぶって説得してる。一瞬、薫が見てきたような気がして唇をかんだ。


「・・・いいんじゃないかな?どうせ私たちは学校にいるんだし。葵はどう?薫は用事あるなら、私と奈緒美で行ってもいいし・・。」


ニコッと心が笑った。薫は「別にいいけど」って顔でうなずいた。


「うん。行こう。」


蒼佳も呼ばないと機嫌わるくなるかな?


校門で心と奈緒美を待っている。薫はなにもしゃべらないでケータイをいじってる。ちょっと気まずい。


『間仲のこと好きなの?』


分からない。自分がなにを思ってるのか分からないのに、薫はなにをどこまで知っているんだろう。

パコンッとケータイを閉じる音がした。ちらっと見ると目が合った。


「ねぇ、朝の分からないってどういう事?」


やっぱり聞いてきた。薫に背を向ける。外は聖夜祭の準備で忙しそうだ。


「だから分からないんだって。好きじゃないと思うけど、はっきりそうだって感じじゃない。」


自分でもなにを言ってるのか分からない。だって心が好きなんだから、他の人は嫌いなんじゃないの?

でも薫も奈緒美も嫌いじゃない。友達だから。間仲も友達だけど、2人とはちょっと違う気がする。近くにいると狂うっていうか、いつもの自分じゃなくなる。なんか心に近い。だからよく分からない。


「じゃあ、心のことは好きじゃないの?」


胸がギュッてなる。好きに決まってる。ずっと好きでここまで追いかけてきたんだから。


「前にも言ったけど、そうだとしても薫には言わないよ。」


私は言わない。他の人になんて。分かるわけないよこんな気持ち。ずっと好きでいても伝えることができないこの気持ちが、誰かに分かるわけない。

なんで薫はこんなにグイグイくるんだろう。


「好きならよそ見しないでその人だけ見なよ。・・それに気持ち変わったって誰もあんたを責めないし・・。」


なんで・・・なにを言ってるの?私が他の人を気にしてるって事?よそ見ってなに?

私が好きなのは心だよ。心しか見てないよ・・。

他に気持ち変わるって間仲にって事?ありえないよ。こんな簡単に好きになったりしない。もしそうだとしたら、私が心を好きだった時間ってなんだったの?そんな簡単に変わっちゃうほど軽い想いだったの?

キッと強く薫を見る。


「変わったりしない。」


私は心が好き。恋愛感情で。変わる事なんてできない。間仲は初めての男友達で、それだけで他の人とは違う。それだけ。


「遅くなってごめんね。2人共。」


パタパタと心が走ってくる。分かってるよ。私は幼なじみで友達で、心がそれ以上の気持ちを持つなんて事ない。分かってる。でも・・でもやっぱり好きだよ。一緒にいると、他の人には感じられない安心感とか愛しさとかを感じる。

心が走ってくる。それだけでこんなに嬉しくて切なくなってくる。


「薫、私は変わらないよ。あいつは・・間仲は友達。なんか、ごめん。」


薫が首を横にふった。


私は変わらない。

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