告白されて
カーテンの隙間からこぼれる光がまぶしい。通りすぎていく車の音や人の声を聞きながら、ベットの中でため息をつく。
いつもなら家を出てる時間だけれど、今日はなんだか行きたくない。蒼佳に『熱っぽい。』って理由をつけて学校に電話してもらった。熱なんて本当はないんだけれど、体がだるい気がしてとにかく行きたくなかった。
目を閉じる。行きたくない本当の理由なんて分かってる。
一体どんな顔して間仲に会えばいい?きのうあんなこと言われてどうすればいいの?絶対まともな対応できないと思う。
断らなきゃ。でも、なんて言えばいい?嫌いかと聞かれても、そういう訳じゃない。ほかの男の子と間仲は違う。でも、私は心のことが好きだから間仲は好きではないんだと思う。やっぱり友達・・なんだと思う。
なんかよく分からない。間仲に告白されたとき、認めたくないけどすごくドキドキして、感じたことない気持ちになった。でも、私は心が好きだから・・。断らなきゃダメなんだと思う。
ため息をつく。
こんなグシャグシャな気持ちのまま心に会えない。『どうしたの?今日なんか変だよ?』って言われて、そんなことになったら『いやー・・じつは間仲に告られてさー。』とか?・・・・無理!!無理でしょ。なにこのノリ。
ふとんの中でうずくまる。
コンコンとドアをノックする音がした。蒼佳かな?
「葵、私だけど・・。」
心だ。透きとおった声。ベッドから抜け出してそろりとドアの前に立つ。
「具合悪いって聞いたんだけど、ちょっとだけでも顔が見たくて。」
心の声を聞いただけで胸がキュンとなる。扉の向こうに心がいる。私の好きな人。
ドアノブに手をかける。ドアを開けて心を抱きしめたい。そうしたら、きっと困った顔して笑いながら『どうしたの?』って言うんだろうな。
手を下ろしてパジャマの裾をにぎる。
「ごめん。風邪かもしれないから。」
ごめん。これ以上不安にさせたり心配かけたくない。
「そっか・・。分かった。ちゃんと寝ててね。」
階段を下りていく音が小さくなっていく。ごめんね。心・・・。なんでこんなグシャグシャな気持ちなんだろう。私は心が好き。いつも通りに断ればいいのに、なんでこんな重たい気分になるんだろう。一度フッてるから?なにか違う気がする。・・こんなの初めてだ。
ズルズルとベッドの中に入る。考えすぎて頭が痛くなってきた。本当に風邪かも。
目を閉じて、うっすらとせまってくる眠気に集中する。
なんだかいいニオイがする。このニオイ知ってる。心の髪のニオイ。フワフワして花みたいで、心にぴったりだと思う。
ゆっくり目を開ける。今、何時ごろなんだろう?起き上がってギョッとした。目の前に心がいた。
「あっ。もう起きて大丈夫なの?」
雑誌を見ながらお茶を飲んでいる。いつからいたんだろう。
「あー・・うん。大丈夫だと思う。・・どうしたの?」
部屋で2人きりでソワソワする。窓の外を見ると、空が暗くなりかけていた。
「どうしたのじゃないよー!心配だったから蒼佳ちゃんにお願いして入れてもらったの!」
窓ガラスにうつった、心の少し怒った顔がかわいい。
「あと授業のノート持ってきた。月曜に持ってきてくれればいいよ。」
ふり返って受けとる。心のニオイが鼻をかすめる。
「ありがとう。」
会話が途切れた。どうしよう。2人きりで胸がいっぱいで、なにを話せばいいのか思いつかない。
心がとなりに座ってきた。肩がトンと当たった。
「ねぇ、葵。」
ぷっくりした唇に目がうばわれる。
「あの・・。間仲くんとなにかあったの?」
胸がザワついた。どういうこと?なんでそんなこと聞くの?もしかして告られたの知ってるの?まさかそんな・・。
「なんで?なにもないよ。」
気持ちを落ちつかせようとするけど、全然ダメだ。どうしよう。
心が不安そうな目でみている。ニコッと笑って頭をなでる。
「なにもないよ。大丈夫。」
自分に言い聞かせてるみたいだ。・・そうだよ大丈夫だよ。心じゃないヤツからの告白なんて、いつも通り断ればいい。そうだよ!なのに、なんで学校を休むほど悩んじゃってたんだろう。
胸はまだザワついてる。
「2人ともー!ご飯だよー!」
下から蒼佳の呼ぶ声がした。立ち上がってドアノブに手をかける。
「ご飯だってさ。行こう。心も家に電話したほうがいいんじゃない?」
助かった。
ドアを開けようとしたら、グイッとひっぱられた。心の指が少しふるえているように見えた。