表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふわふわ。  作者: 水無月
33/40

好きな子にしかしない

学年準備室。ここは普段使わない部屋で、今日みたいに先生や生徒達が授業で使う物を準備する部屋。

担任は「会議があるから。」って、間仲と2人で作業をしている。お互いなにも喋らないで黙々とやっているから、すごーく気まずい。胃が痛くなってきた。


「水原さんは聖夜祭はまた実行委員やるの?」


うわっ。びっくりした。急に話しかけてくるなよ。気まずいよりはいいけど。


「なに?聖夜祭って。」


なんだかくすぐったい名前のお祭りだなぁ。


「俺たちが今束ねてるプリント。クリスマスにやるから聖夜なんだろうね。」


渡されたのをよく見ると、12月25日のお昼からって書いてある。でも冬休みだよね?わざわざ学校に来て、何やらされるんだろう?


「文化祭みたいなかんじ?」


プリントを返す。


「そうだろうね。でもコレは部活ごとで食べもんの屋台が中心で、クラスじゃやらないっぽいよ。部活やってないなら行かなくていいみたいだし。」


冬休みかぁ・・。ゆっくりしたいけど、奈緒美が行きたいって言うんだろうな。クリスマスは毎年蒼佳がケーキ作って3人でやってたけど、今年はどうなんだろう。薫と奈緒美はどうするんだろう。


「間仲は委員やらないの?あっでもだれかとクリスマスは一緒にいるのか・・。」


自分で言っといて後悔した。これだと私が気にしてるみたいじゃん。


「水原さんみたいに器用じゃないから。あーでもクリスマスに野郎だけでいるのも切なすぎだよね。」


ハハッと笑って伸びをした。

器用じゃないって・・文化祭のとき普通に器用だったじゃん。それなら私のほうが不器用だ。

それに野郎だけって・・。彼女いないのかぁ。でも好きな子はいるんだよね?・・・告白しないのかな。モテるのに。

胸がキュウってなって、お互いなにも喋らなくなった。


最後のプリントをやり終わって外を見ると、夕焼け空になっていた。間仲は担任に終わった事を言いに行ってくれている。

疲れたなぁ。机に突っ伏して目を閉じる。モヤモヤしている。

心は間仲となにを話してたんだろ。普通に聞いちゃえばいいのかもしれないけど、答えを聞くのが怖い。心は間仲が好きなの?間仲も心が好きなの?間仲は優しくていいヤツだから、心が好きになるのも分かる気がする。・・・でも泣いてたのはなんで?両思いでうれし泣きとか!?私に気を使って言えないとか・・?

やっぱりどんなに想っていても追いかけても、届かないんだな・・・。


ゆっくり目を開けると、目の前の間仲と目があった。


「なにしてんの!!?」


飛び起きる。顔がすごく近くてなんかもうヤバかった。ちょっと動いたらくっつきそうで、心臓とび出たかと思うぐらいびっくりした。


「いや・・。呼んでも起きないから寝てんかと思って、マネしてた。」


なにその理由。訳分かんない。それより心臓の音ヤバイ。はずかしくて死にそう。


「あのさぁ、こういうの好きな子以外にやっちゃダメだよ?誤解されるよ!?」


カバンを持ってドアに手をかける。まだドキドキしてる。本当ヤダ。


「知ってるよ。」


フワリと息が耳をかすめて、体温をかんじる。間仲の髪が私の頬をくすぐった。一瞬なんなのか分からなかった。


後ろから抱きしめられていた。ビクンとこころの奥がはねる。


「知ってる。だから水原さんにしかしてない。」


ジワジワと伝わる体温。耳元でしゃべる声。間仲の心臓の音を背中で感じる。


「な・・にこれ?」


なんで?だって間仲は好きな子いるんでしょ?心が好きなんじゃないの?なんで?なんで?これ・・どうしよう・・・。心臓がバクハツするかも。


「なにって、ちゃんと好きな子にしかしてないって事。」


するりと手をほどいて離れた。・・・好きな子。


「また明日。水原さん。」


ガラガラとドアを開けて行ってしまった。

背中で感じた間仲の心臓の音が、まだ残ってる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ