隠し事
もし心が私と間仲が2人でいる所を見たら、なんて思うんだろう?友達、クラスメイト、クラス委員と副委員?
私だったら?心が男の子と一緒にいるのを見たら、きっと耐えられないだろうな。加えて2人共楽しそうに笑いあってるとかなってたら、嫉妬に狂ってなにをするか分からないだろう。
心は私の事やっぱり友達としか思ってないんだろうな。私が今みたいに男の子と歩いていても何も思わないだろうし、デートしても「よかったね!」とか言われちゃうんだろうな。なんか寂しくなる。
となりを歩いてる間仲をちらっと見る。なにを考えているのか分からない。デートに誘ってきたくせに、なにも感じてないのだろうか。・・もしかして・・そんなの冗談で、私の事をからかっていたのか!?それならこんなに悩んでるのって、なんかバカみたい。急に悲しくなってきた。
私だけいろいろ意識してバカみたい・・・。
下を向いて歩いていたら、手の中が軽くなった。
「悪い。ずっと持たせてて。後は自分でやるから。」
間仲が全部持ってくれた。最初からそうしてくれれば良かったのに、なんで持たせたんだよ。
スタスタと前を歩いて行ってしまった。
本当に何も思ってないんだなぁ。背中にむかって、舌を出してやった。
「あっそうだ。」
くるりとこっちを向いてきた。慌てて舌をひっこめる。バレたかな?
「な、なに?」
やっぱり重いから持ってとか言ってきたら、イヤだって言おう。
「きのう言ったアレなんだけどさ、本当に大丈夫なの?返事、ちゃんと聞いてなかったからさ。」
『アレ』って、きっとあの事だよね。「デート」の事だよね。冗談ではなかったんだ。そっか。
体がフワッと軽くなった気がした。
・・・・いやいや。なにホッとしてるんだ。私には心がいるんだし、行く気なんて・・無かったし。
「ごめん。行けない。」
私、悪くないよね?でも何だかモヤモヤする。気分が悪い。
「ほら、やっぱりおわびがデートだなんて、なんていうか・・その・・アレじゃん?変っていうか。それ以外でならやるからさ。」
間仲が『なにソレ?』って顔で私を見ている。自分でもなにを言っているのか分からない。
「おわびで・・か。そっか。分かった。困らせて悪かったね。」
やさしく笑って、ため息をついた。
モヤモヤが大きくなってきて苦しい。なんで笑ってるの。やっぱりからかってたの?胸をギュッとつかまれたみたいに苦しい。
間仲がなにを考えているのか分からない。私って、間仲にとってなんなの?
バカだ。なんでこんなに泣きたくなってるんだろう・・・。
「水原さん、俺さ・・」
気づいたら、すごく近くに来て私の顔をのぞきこんできた。グッと泣きそうになるのを我慢して、間仲からはなれる。
私、きっと今すごく変な顔してる。
なんでこんな気持ちぐしゃぐしゃになってるんだろう。最近の私は変だって思う。みんなはなにも変わらないのに、私だけおかしい。なんで間仲といると、こんなに混乱してしまうんだろう。
「葵。こんな所にいたんだ。」
心がパタパタかけよって来た。教室に行ってたんじゃないのか?
「待ってたのに全然来ないから探しちゃったよ。早く行こう。薫も奈緒美も来てるし。」
腕をグイグイ引っぱられて急かされた。
「じゃあね。間仲くん。」
間仲の横を通りすぎる。
しばらく歩いたところで、急に心が止まった。
「どうしたの?」
顔をのぞきこむと、眉間にシワをよせて険しい表情になっていた。ギョッとして少しはなれる。
「間仲くんとなにを話してたの?」
顔をあげて、キッと強い目で見てきた。
「なにって・・。なんでもないよ。大した事じゃない。」
ハハッと笑ってはぐらかす。デートを断ってたなんて言えない。言いたくない。
心の頭をポンポンと軽くたたく。
「薫と奈緒美もう来てるんでしょ?行こう。」
心の顔を見ないで歩き出す。
ごめん・・。ごめんね。言えるわけないよ。心にまた隠し事をしてしまった。