理科準備室
「水原さんが好きです。」
やっぱり。そうくるんじゃないかと思った。あんまり人が来ない理科準備室とかに連れてこられたから、まさかと思ったら・・。やっぱりベタにこういう事になるんだ。
でも誰?
「あ・・文化祭の実行委員で、となりのクラスだったんですけど。」
そうだったんだ。気にしてなかったからなぁ。となりのクラスなんて。
「実行委員で一緒になって、なんかいいなぁって思って・・。俺のこと知ってました?」
緊張してるみたいで、声が震えてる。目を合わせようとしてこない。なんだか私までドキドキしてきた。
「ごめんなさい。ちょっと分からないです。」
見るからにガッカリってかんじで、ため息をついた。重たい空気が流れる。
「じゃあ、ためしに付き合ってみるとかはナシ?」
胸がギュッてなる。そうしたとしても、私は絶対に好きになんてなれない。
「今は彼氏とか、付き合うとか考えられないから。だから、ごめんなさい。」
考えられない。私が心じゃない人を好きになる?無理だよ。
「そっか・・・。ならしょうがないか。」
私の横を、少し足早に通り過ぎて行った。ガラガラとドアの音がして、遠くなっていく足音。
心が私を好きになる事ってあるのかな?万が一、億が一なったとしても、それっていつ?・・・・ダメだ。こんな事考えるなんて。覚悟してたじゃないか・・。
ドアがガラガラと開く音がした。まさか、さっきの人が戻って来たとかないよね!?
ふり返ると、間仲が立っていた。
「な・・なに!?」
顔が急に熱くなる。まさか・・さっきまでの聞いてたとかないよね?なんでここにいるの?
「だって日直だし、一時間目理科でなんか持ってくのがあるからって、日直来いって言われたし。」
しれっと、いつも通りの様子で私を見てきた。・・そうだったんだ。
「じゃぁ教室で!!」
ツカツカと間仲の横を通る。ドキドキする。
昨日あいつに・・・デート・・に誘われたけど、何を考えてるんだろう?こんなに私が気にしてるのに、間仲がいつも通りってなんだ!?
急に腕をグッとつかまれた。痛い!!
見ると間仲が少し怒った顔で、じっと見てきた。なに?私なんか怒らせる事した?
「さっき、あいつに・・。」
つづきを聞こうとしたとき、勢いよくドアが開いた。
「日直来てるかー?」
先生が来た。間仲は、とっさにつかんでいた腕を放して、少しはなれた。
びっくりした。すごい心臓がバクバクしてる。間仲は・・間仲は何を言おうとしたんだろう。『さっき、あいつに』・・なんだろう?あいつって、さっきのとなりのクラスの人?
「今日は日直2人なの?まぁなんでもいいけど。はい、これ持って。」
私も荷物を持たされた。だまって部屋を出る。
まだ心臓がバクバク音がしてる。
なんなんだよこれ・・・。なんで間仲といるとき、私はおかしくなっちゃうんだ・・。
となりを歩いている間仲に、バクバクしてるのが聞こえたらどうしようか・・。そればかり気になっていた。